韓国の英語教材をアレンジし
日本の子どもたちに学ばせる
── Lepton(レプトン)と言えば象のマークが印象的な英語教室ですが、これを開発されたのが株式会社EVANなのですね。
北田 いえ、韓国ですでに開発・導入されていた英語教育システムです。私たちはもともと塾で使用されるシステムの開発を行っており、TOEIC®のe-ラーニングも手がけていました。その仕事の関係上で訪韓した際に、この英語システムに出合ったのが導入のきっかけです。
── なぜ、韓国のシステムを導入されたのですか。
北田 日本では中学から高校まで6年間の英語教育を受けながら、高校を卒業した生徒のほとんどが英語を話すことができない。現在、小学校からの英語授業導入や中・高で英会話授業を増やすなどを行っていますが、なかなか学校の英語教育だけでは会話するまでは難しいのが現実です。
また、日本の英会話教室の多くが会話重視で、読み書きはあまり薦めていません。一方、韓国は非常にレベルの高い英語教育を行って、多くの人が英語を使い、世界で活躍しています。遅れを取らないためにも、その韓国で成果を上げているシステムを取り入れ、日本人の英語レベルを上げたいと考えたのです。
── 展開はどのように進められたのですか。
北田 韓国のシステムを日本で合うように改良し、未就学児(幼稚園年長)〜小学低学年から始められるようなオリジナル教材として改良。その上で、高校受験を中心とした塾に小学生の部を作り、この英語教育『個別指導型 子ども英語教室 Lepton』を実践しないかと、塾にフランチャイズ展開を呼びかけました。個別のため、レベル分けの必要がないので、空きスペースや時間を利用でき、しかも教える先生のレベルで、生徒の成績が左右されない。さらに、そこで集めた生徒が中学進学時には塾生として他教科も学ぶ可能性が高く、今まで読み書きメインだった塾の英語教育も幅が広がる…というメリットを話していくことで、耳を傾けてくれる塾が出てきたのです。
── 今は全国で展開されています。
北田 はい、展開を始めたのが2010年ですが、6年で北海道から沖縄まで、全国にまたがって増加。今年春には1,100教室に達成する予定です。今年度だけで400教室開校、来年からも右肩上がりに導入教室は増えていく予定です。導入に際しては費用を安価に押さえてあるため、当初は個人塾の導入が目立ったのですが、京都の成基学園様を皮切りに、鴎州塾様、昴様、早稲田スクール様、ティエラコム様など大手も続々と参加されるようになり、成果を上げています。また、一部の私立小学校のアフタースクールでも導入が始まり、低学年から学んでいます。
現在、社員は20名の会社ですが、年商は右肩上がりに上がっております。
── 勢いがすごいですね。しかし、激戦区だと近隣塾での導入などが問題になりませんか。
北田 たとえ導入塾が隣り合っていても、さほど問題はないんですよ。それぞれの塾でマーケットが異なりますが、どのマーケットの生徒もLeptonは対応できますから。実際、受験塾としては競合していても、Leptonに関しては協力し、勉強会などで集まって互いの良いところを取り入れ合い、全体としてのレベルアップを図っております。
オリジナルのテキストで
個別にレベルアップできる教育を
── 実際、どのような形で授業は行われるのですか。
北田 一人ずつレベルに合わせたCDや教材を配布。ネイティブの音声を聞いて発音し、その単語を繰り返し書いて覚えます。さらにその覚えた単語を使って英文を読み、読んだ内容を理解しているか、英語で質問に答えて確認するといった、「聞く」「話す」「読む」「書く」を総合的に学習します。生徒たちは一人ひとりヘッドホンを付けて個別に学び、レベルごとに分けられている11シリーズ81冊の当社オリジナルテキストで学びます。子どもたちの状況は、授業時間内に教室内にいるチューターまで10〜15分間隔で成果を持ってこさせ、生徒がわかっているかどうかをチェックすることで習熟度状況を把握しています。低学年ですと長時間集中しての勉強には無理がありますから。
── そのチューターは大学生ですか。
北田 社員の場合もあります。英語力をつけるには10歳までに始めるのが最も適していると言われることもあり、低学年以下の生徒が多く通っているので、子どもたちがリラックスできるよう、少しでも子どもと年齢の近い、若い女性をはじめ、子育て経験を生かした主婦の方なども採用しています。
── 小さなお子さんのほうが、英語を覚えるのが早い。
北田 日本語と同時に英語を覚えていくためか、英語も母国語の一つとして習得するようです。年齢を重ねると、日本語を頭の中で英訳してから話しますよね。小さいときからLeptonで学んだ子どもは、毎回頭で英訳することなく、チャンネルが切り替わるように2つの言語で普通に会話でき、しかも発音も綺麗になるんです。
Leptonがもっと生徒を増やし、綺麗な英語を操る子が学校で増えれば、自然と学校の英語教諭も意識改革を行い、レベルアップしていくでしょう。塾は学校の補習や受験対策をする場所、と思われている方が多いでしょうが、こういった新しい英語教育を実践することで、「英語教育は塾のほうが生徒たちが伸びる」と考えていただける。学校も塾のやり方を見た上で、自らの教材や指導方法を見直して、生徒をより一層しっかりと導くようになれば、日本全体の教育の質も上がるんじゃないでしょうか。
── Leptonが新しい教育のきっかけになるということですか。
北田 そうですね。今までは英会話は経済的にゆとりのある家庭が子どもに習わせる『習い事』のひとつで、水泳やピアノと同じような扱いでしたが、これからは全国民が必要な学習になります。他の芸術系・運動系の習い事は、進路によっては成人すれば必要なくなってしまう場合もありますが、英語力は子どもたちの未来では必ず必要なアイテムになります。その知識やコミュニケーション力を身に付けないと、ビジネス社会で生きていけなくなるのです。
── では、Leptonの最終目標はTOEIC®の高得点ですか。
北田 もちろんTOEIC®は目標にしていますが、あれは社会で使う英語の実力に対するテストですから、小学生にはまだ早いでしょう。ですから、達成度を見るために、JET(Junior English Test)を受検するようにしています。
── それはどのようなテストですか。
北田 TOEIC®やTOEFL®に直結した小・中学生向けのコミュニケーション英語能力テストです。アメリカで開発され、各国で実施されている信頼性の高いテストですが、日本ではほとんど認知されていませんでした。そこで、私たちが別会社を立ち上げ、Lepton加盟校には必須受検してもらうようにして、認知を広げるよう努力しています。
現在、全国で1万5,000人くらいが受検しており、認知度も広がってきたので、EVANで統括して事業を行うように変更しました(事業部はLeptonとは別)。英検もTOEIC®も200万人を超える受検生がいるので、それと比較すればまだまだJETの受検者数は少ないですが、徐々に広がっている状況から見て、小学生の受検者で50万人を達成するのもそう遠くはないと思います。
── 今後の展開を教えてください。
北田 現在は英語のみですが、中国の急成長で日本人がビジネスとして中国人と接触する機会も増えています。また、相互の観光客の増加により、普段の生活の中でも中国語を耳にすることが増えました。そのため、日本人にも中国語のスキルが求められるようになっています。いずれは中国語のLeptonもつくり、学ぶ人を増やしていきたいですね。
また、海外への進出も考えています。韓国のLeptonを開発した企業のことも考えて、進出先を決めることになりますが、近く台湾へは市場を拡大するつもりです。
── スピード感のある展開ですね。
北田 社員にも、与えられたものをこなすだけではなく、自分で考えたことを実践するようにと勧めています。私を通さずに、自分で考えたことを実践し、成功させる人間も少なくありません。失敗してもそこから得るものがあるから、とにかくみんなで走りながら考えようというのが、今のモットーですね。
── これからのご活躍を期待しています。本日はありがとうございました。
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