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2014/1 塾ジャーナルより一部抜粋

公私立中学校長における
「学校と外部セクターとの連携協力」に関する意識と実態

     
 国立教育政策研究所(以後:国研)が、平成6年に引き続き、24年に実施した「学校と外部セクターとの連携協力」に関する意識調査は、塾業界にとって注目すべき結果が出た。学校の守備範囲の縮小を願っている校長は95%、そのために塾との共存が可能と答えているのは公立が50.2%、私立が72.6%と平成6年と比較して飛躍的に数字が上昇した。本項では国研の調査結果をもとに学校と塾との関係性や可能性を探る。

 平成25年全国の塾件数は、塾ジャーナル調べでは約42,000件。5年前の平成20年は約45,000件。過去最高で50,000件あるといわれた塾も淘汰され、40,000件台を推移している。一方で、通塾率を見ると、大手の教室展開やFCの教室開校、個人塾の新たな開塾など、引きも切らずあり、通塾率は大きく伸びている。

 文部科学省の全国学力テストから小学生の通塾率を計算したランキング【表1参照】を見ると、小6生の全国平均通塾率は49.7%で、最も高いのは東京都の59.4%。中3生の通塾率では、全国平均は60.4%で、最も高いのは奈良県の72.7%と、驚くほど高い数字となった。日本の子どもたちにとって、塾はなくてはならない存在となっていることがわかる。そんな子どもたちが通学する学校側は、塾に対してどのような意識を持っているのだろうか。

 これより国研が平成6年と平成24年に実施した、「学校と外部セクターとの連携協力」に関する意識調査を対比し、中学校長の塾への意識の変化を紹介する。

○調査全体の設計

調査期間:平成24年8月1日から8月末実施
調査対象:公立中学校長1,000人、私立中学校長381人
調査方法:郵送質問紙調査
回収率:全体64.8%、公立69.1%、私立53.5%

 平成6年は11月に実施。公立600人、私立300人を対象とした。回収率は全体で80.2%、公立では83.0%、私立では73.7%という結果であった。

 狙いは「開かれた学校づくり」において18年間の変化を知ることだが、調査依頼の内容を比較すると、文脈はかなり異なっている。平成6年では「個人の多様なニーズに対応して学校教育をいかに多様化し弾力化するか」という課題に対して、平成24年では「社会総がかりの教育を」という学校力の底上げに焦点が置かれている。しかし、共通する点は「学校と外部セクターとの関係を深め、学校社会の構造を組み替えようとする点」だと国研では指摘する。

公私立中学校長から見た
18年間の変化

 公立中学校長と私立中学校長の塾意識には差が出ているが、平成6年時の結果と比較して、24年の結果では塾意識がかなり高まっている【グラフ参照】。

 学校と塾との関係性は「学校教育にとって塾は無用」という見方が横行した時期もあったが、塾が子どもたちの放課後を引き受ける事態は弱まることなく、むしろ強まる傾向にある。

公私立中学校長の
塾意識の変化
質問の4項目を抜粋

学校と塾は
協同できる面が
あると思う

 平成6年(以下6年)の公立中学校長(以下公立)は「思う」が27.3%、「思わない」が71.7%。平成24年(以下24年)になると「思う」が50.2%、「思わない」が49.5%。私立中学校長(以下私立)の6年では「思う」が47.1%、「思わない」が52.0%。24年になると「思う」が72.6%、「思わない」が25.5%と大きな変化があった。

塾や予備校は
わが国の教育において
きわめて大きな役割を
果たしていると思う

 6年公立は「思う」が34.7%、「思わない」が64.7%。24年には「思う」が60.7%、「思わない」が39.0%。私立の6年では「思う」が56.6%、「思わない」が42.1%。24年には「思う」が78.4%、「思わない」が21.0%。公立の6割、私立の約8割の校長が塾、予備校の教育が大きな役割を果たしていると認めている。18年間の教育環境の変化は著しい。

場合によっては
塾や予備校の講師が
学校で教えることが
あっても良い

 6年の公立では「よい」が19.1%、「よくない」80.7%。24年には「よい」が46.3%、「よくない」が53.4%。私立の6年は「よい」が30.8%、「よくない」が68.3%。24年には「よい」が62.7%、「よくない」が36.3%。

進路指導にあたっては
塾の予備校の
進学・受験情報を
大いに活用するべきである

 6年の公立は「すべき」が13.1%、「すべきでない」が86.6%。24年には「すべき」が45.0%、「すべきでない」が54.6%。私立の6年は「すべき」が61.5%、「すべきでない」が37.1%。24年には「すべき」が81.8%、「すべきでない」18.1%。

 以上のように、特に大きな変化を示している項目をピックアップしたが、中学校長の塾意識の変化には、どのような背景が生じているのだろうか。国研では時間的スパンが大きすぎるため、詳細を分析するのは困難であるとし、印象的なところから何点か上げている。

 平成10年告示の学習指導要領において、いわゆる「ゆとり教育」路線が登場し、およそ10年間続いた。平成6年と24年の調査の間の文教政策としては、「ゆとり教育」路線が横たわる。中学校長が塾・予備校との共存意識を強めているのは、学校の守備範囲の縮小の流れの中で、かえって塾・予備校依存意識が強まった結果とも見える。その視点からすると、「ゆとり教育」は子どもたちの「ゆとり」に結実していないとも読める。

 人口減少が深まった地域での教職員数の減少を補う手法には、外部セクターの活用があることはさまざまな自治体での取り組みで明らかであるが、では、塾・予備校活用への中学校長の意識の変化の流れをどう判断したらよいのだろうか。

 このように国研は結んでいる。

 塾ジャーナルの過去の取材より、現状では塾と学校との共存共栄は一部地域では実践されているが、今後はさらに広がる可能性は高いと思われる。

 次に平成24年度のプロジェクト研究の代表として活動されていた葉養正明教授に調査結果を踏まえて独占インタビューをした。

研究代表者に聞く

葉養(はよう)正明氏
埼玉学園大学人間学部 子ども発達学科 教授
国立教育政策研究所 名誉所員

── 平成6年から18年間と期間が開いたが。

葉養 学芸大にいた頃、平成6年の国研の調査にも協同研究者として参加した。岡山の塾や学校にも視察に行った。いわゆる「教育の自由化路線」が動き出した頃で、実態を知る必要があった。その後、追跡調査の必要を感じていたが、6年前に国研に入り、今回の追跡調査が実った。

── 今回の結果では、校長の塾に対する評価が高い。

葉養 調査を踏まえて、公立小学校の校長に聞く機会があった。「塾の先生のほうが授業のレベルが高い。教員は塾に学ぶべきところがある」と話していた。校長は「今の時代、塾を目の敵にするだけでいいのかという状況がある」と、概ね塾に好意的だった。

── 社会環境や教育環境の大きな変化が影響しているのか。

葉養 背後に何があるかというと、生徒一人ひとりに目をかけるというのが基本であったとしても、公教育では中間的レベルを想定しなければならない。塾であれば、子どもの個性に視点をあてて、指導をしていかないとやっていけない部分がある。

── 現場の先生方の混乱があるのでは。

葉養 言えるのは、つまらない授業をすると、子どもや親からもクレームがつく。特に塾は閉塾に至ることもある。また、公立の教師の多忙化もある。「仕事量が増え、放課後に子どもと一緒に遊んだり、相談を受けたりするのが、昔だったらできたが、今は余裕がない」と。部活の土日出勤が当たり前のようで、悲鳴を上げたい前兆がある。

── 学校の機能を高めるために、校長の手腕が問われるのでは。

葉養 教育委員会と教員との間に挟まっている校長はどうするかというと、外部の力を借りるしかない。かといって、地域の人にお願いをするとなると仲介が難しい。

── 仲介が難しいとは。

葉養 子どもたちや親の多様化がある。PTAが成り立たない地域もあり、親の集団を統率することが難しくなった。

── 地域での交流も薄くなった。

葉養 昔だと町内会や自治会があって、誰か一人が中心になってまとめてくれた。校長としても話がスムーズであったが、今では校長が親の一人ひとりと対応する構造になってしまった地域も出ている。そういう意味でいうと、地域と学校をつなぐ中間集団のようなものを作るのが、アイデアかもしれない。
親じゃない地域の第三者がいい。親だと近すぎて利害が絡む。だが、そんなものは構造的に簡単にはできない。学力を高めるというニーズは相当あるので、そうなると組織的に受け止めるというと、塾しかない。

── 地域や学校に参入している塾もある。

葉養 ただ、注意しなければいけないのは、憲法第89条に「公の施設を私人に対して使用してはならない」という禁止規定がある。経済格差があるから、個人負担を一定レベル以下に抑えるなど、知恵を出さないといけない。親自身の教育への関心が低く、通塾にも熱心でないというような、親の間の格差もある。その点では、校地と学校施設は公設で、学校運営は民営でいこうとする「公設民営特区」のような制度設計で、そこに、塾を組み込むといった構想などのほうが良いかもしれない。国家戦略特区の中に、「公設民営特区」が位置づけられたので、その成り行きが注目される。

── 公設民営の今後の可能性は。

葉養 学習科学を基礎に、ICTの導入や民間セクターなどの参入を想定した「新しい学び」づくりへの提案もあり、今後の学校教育は知識基盤社会やグローバリゼーション、少子高齢化、市民社会の成熟などを背景に、構造的に大きく変化を迫られる可能性もある。学校の将来像は、塾やNPO等の参入も含んだ共同体としての学校コンプレックス(複合体)として考えており、その点で塾業界には大きな期待がある。

 また、特に過疎地での「新しい学び」の開発は困難で、ノウハウを持った塾業界には大きな期待がある。

●プロフィール

東京教育大学大学院博士課程単位取得単位終了
《職歴》
国立教育政策研究所教育政策・評価研究部部長、東京学芸大学教授、早稲田大学客員教授、放送大学客員教授、米国サンディエゴ州立大学客員研究員など

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