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2008/1 塾ジャーナルより一部抜粋

理科の楽しさ伝えたい… 大学名誉教授が指導する理科実験

  一橋大学大学院 名誉教授 中嶋 浩一氏 インタビュー  
  国立一橋大学定年退職後、3校の大学で教鞭を執りながら、塾で高校生を指導。さらにNPO法人が行っている『生き生きワクワク体験』でも小学生に理科実験を指導するという繁忙さだが、全学年どの生徒からも親しまれ、信頼されている中嶋浩一さん。天文学者でありながら、多くの生徒を育ててきた教育者でもある氏は「理科の楽しさを通じて、知識修得の満足感を伝えたい」と話す。  

 

 

小学生に理科実験を教える生き生きワクワク体験で指導

── 今回は大学の天文学教授、塾の非常勤講師、さらにNPO法人全国教育ボランティアの会と活動の場を広げておられる中嶋先生にお話を伺いたいと思います。早速ですが、まずボランティアの会とのかかわりから教えていただけますか。

中嶋 もう30年以上も前になりますが、東京都三鷹市にある東京天文台(現、国立天文台)に勤めていた頃、近くの調布市で大規模に塾を経営しておられた、調布学園の佐藤勇治先生にお会いしたのがそもそもの始まりです。塾では子どもたちが夜集まってくるので、望遠鏡で星を見せたらよいのではないか、というのがきっかけでした。東京天文台に就職する前の大学院生時代に、アルバイトで中学校の産休教員をやりましたが、その当時、公立の学校にはかなり立派な望遠鏡がそろっているのにほとんど使われていないということを知りました。それはそうですね、夜、それもよく晴れた夜に、天体観測のために子どもたちを集めるということはほとんど不可能ですからね。その点、塾はいつでも子どもたちが集まっているので、天体観測の指導には最適だと考えたわけです。ハレー彗星出現の年などは大活躍でした。私が子どもたちと接するようになったのはそのとき以来だと思います。そんなわけで、佐藤先生や田中敏勝先生が平成12年に『生き生きワクワク体験 親子の集い』を始められたときは、喜んでお手伝いさせていただくことにしました。ですから、佐藤先生との関係はもうずいぶんと長くなりますね。

── 生き生きワクワク体験では、どのようなことを指導されているのですか。

中嶋 ラムネやこんにゃく作りなどの体験とともに、工作や魔方陣などの数遊びをいろいろ試みました。工作では、厚木ゼミナールの西畑先生が、望遠鏡やプラネタリウムなどを立案してくださったので、私の出番もたくさんありました。そして、最後を「星の話」で締めくくるわけです。2006年には「冥王星」の話題もあり、皆、熱心に耳を傾けてくれたと思います。実際に望遠鏡を準備して、夜までがんばって天体観望をやったこともありました。

── 大学生を教える立場から、いきなり小学生の理科実験の指導を行うというのは、難しくありませんでしたか。

中嶋 それまでも塾などで小学生に接したことはたびたびありましたので、戸惑いはしませんでしたね。ただし塾の生徒は、ほとんどが中学受験の高学年でしたから、親子の集いで参加する小学1、2年生に話すのは気を遣いました。例えば、話のスピードや言葉遣い、また一方的に話すのではなく、常に対話が成り立つように、などです。これに関しては、小学校の先生をはじめ、その年齢に普段接している人々からは教えられることも多く、最近は指導にも自信がついてきました。

── 小学生の指導で感じたことや、希望することは何でしょう。

中嶋 実験や工作をやるとき、また星を見た後の感動は、小学校低学年でも社会人でも変わらないと思いましたね。参加した父母が、子どもと同じように感嘆の声を上げているのを見て、楽しんでくれていることがわかり、こちらもやりがいを感じます。家庭に戻ってからも、実験・工作でやったような親子の共同作業を続けていってほしいですね。最近のゆとり教育で削減された内容や実験をいろいろな機会に体験し、少しでも理科を好きになってほしいと思います。そして、科学技術を修得することの楽しさを覚えることで、学力低下にもストップがかかり、子どもたちの将来が幸せなものになるよう、体験教室での経験を役立ててくれれば嬉しいですね。もうひとつ、小学生は実験・工作には積極的に参加しており、それほど理科離れが進んでいるわけではないように見えます。むしろ高学年、高校生などの理科離れが問題だと思います。

著しい中高・大学生の理科離れ 深刻な状況を救う方法は

── 先ほど、中高生の理科離れのお話が出ましたが、現場ではかなり深刻なようですね。

中嶋 はい。定年退職後は、大学での非常勤講師の講義や生き生きワクワク体験の指導以外に、進学塾にお願いして、高校生を対象に理科の指導をさせていただいています。大学生になってから、それも文系の大学生になってからでは、計算を中心とする本格的な理科を学ぶのはもう手遅れなのではないかと思っています。塾での指導は、高校から理科をしっかり勉強してもらいたいという気持ちで始めました。そして、その経験から言うと、「高校における理科離れ」というのが大変深刻な状況なのではないかと思います。

── その原因はなんですか。

中嶋 高校では、文系科目に比べると、理系科目の学習が大変きつい、ということがあるのではないでしょうか。数学や物理の教科書を読むことと、国語や世界史の教科書を読むことを思い比べてみるとわかると思います。さらに今の高校では、文系の進学コースを選択すれば、きつい苦しい数学や物理からある程度逃れられる、ということが問題をさらに深刻にしているようです。初めは理系を志望した人でも、数学や物理の点数がどうしても上がらないというので、次々と文系へ転向したり、推薦入学を選んだりする、というのを目の当たりにしましたから。

── 生き生きワクワク体験では、感嘆の声を上げる小学生が、高校生になると理科離れをしてしまうのですか。

中嶋 理系の勉強や研究は、生き生きワクワク体験のように、にぎやかに仲間と一緒に実験をするというようなものではなく、一人で集中し、かつ、こつこつと地道に行う、というものです。あの体験が楽しかったから、大学進学時に理系を選択するということにはならないのではないかと思います。理科への関心度を調べたある統計データでは、小学校では、実験などの体験が楽しいということもあるのでしょうか、理科が好きという人が7割にも上るのですが、中学生ではこれが減少して6割くらい、さらに高校生になると、ほぼ半分以下というようになっています。大学生でもきつい苦しい体育会系の活動を避けて、楽しいサークル活動を選ぶ傾向が大きくなっているのも、同様な流れなのではないでしょうか。

── 対応策はあるのですか。

中嶋 理系学部進学生でも、推薦やAO入試で大学合格を決めた生徒は、数学や物理の応用力が十分に身に付いていないことがあります。そういった生徒への対応のために、大学によっては「リメディアル教育(高校や中学で習う知識を大学で学びなおすシステム)」を取り入れ、学力を補填しようと動いているところもあります。また、一般社会人の理系の知識の涵養(これを「科学リテラシー」と呼びます)について言えば、先の統計にもあったのですが、小学生程度の子どもを持つ親が子どもと一緒に科学を学ぶということなのでしょうか、再び関心度が上がるというのが観察されます。この『学びなおし』には期待が持てるので、「親子の集い」のような活動をその方向に向けても発展させられないか、と思います。一方、高校でも「スーパーサイエンスハイスクール」を文部科学省が認定し、少数ですが、レベルの高い優秀な生徒を育てて、日本の未来に活かしたいという取り組みも実践されています。この中で、指定を受けた高校の理科のレベルを全体的に上げることも重要ですが、少数の飛び抜けた生徒にかなり高度な学習をさせる、というようなことも必要ではないでしょうか。大学教育に関しては、文系・理系のどのような学部であっても、大学卒業時にある程度のレベルの基礎的科学知識を身に付けた卒業生を送り出せるように、一定の到達度基準のようなものを設定したらよいのではないかと考えています。

── いろいろと皆さん考えておられるのですね。

中嶋 そうですね。ただ、最も大切なことは、若い人たちがしっかりした使命感をもって学ぶようになる、ということだと思うのです。きつい苦しい勉強に取り組むことができるのも使命感があってこそだと思います。中国では『政治の中枢にある人々がほとんど理系出身』であったり、インドでは『最先端で成功している人々はソフト開発技術者が中心』などということがあって、理系に進むインセンティブ(動機)があるのですが、アメリカなどでは『理系・技術系は面白いし、収入もある』といって宣伝しても、例えば、金融関係で巨利を得る人が多いような状況では、なかなか動機づけにならないようです。日本はなおさら、理系に進む動機が少ないように思われます。社会全体が、いかに要領よく生き、うまくチャンスをつかんで稼ぐかに終始している状態では、何ともし難いのではないでしょうか。中にはもちろん、医師や弁護士、会計士などのように社会的には成功している人々が、使命感に燃えて、社会のため人のために身を粉にして働いている、という例もあります。このような人たちが、どのようにしてその使命感を持つに至ったか、それをよく調べ、その気持ちを次世代の生徒たちに伝えることが、現役で指導を行っている教育者として大切なことなのだと思います。

厳しい塾業界の中 生徒に学びの楽しさを教えて

── 現在は、塾での指導もされているということですが、その立場から、今後の塾はどのように推移していくと思われますか。

中嶋 現在の長引く不況や少子化による経営悪化という問題を抱えている塾は多いと思います。子どもたちのためにいろいろと工夫して、生徒指導に心を砕いている塾はありますが、そういった塾が活躍の場をなくしていくのではないかという懸念はありますね。しかし、科学実験を基軸とするなど、さまざまな方法で指導をされている塾もありますので、今後、塾業界全体がどのように発展していくのかは楽しみなところですね。

── 学校と塾との最も大きな違いとは、どのようなところでしょう。

中嶋 生徒には誰一人同じ子はいません。一人ひとり個性も習熟度もバラバラです。いくら文部科学省が少人数制を導入しても、全員を一律に指導しようとする学校では、完全に個別に子どもを見ることは無理があるでしょう。しかし、塾ではそれができるのではないでしょうか。個々の生徒の特性をよく見極め、それぞれに最適の教育を行い、社会のためになる人材を育成することができるのが塾なのではないでしょうか。私も大学受験というひとつの目標に向かって邁進する生徒に手助けができる今の塾の仕事には、やりがいを感じて日々工夫を続けています。

── トップクラスの成績の子を集めて実績を伸ばすにも、伸び切っている子はそれ以上には伸びないとも言いますしね。

中嶋 いえ、それはないと思いますよ。子どもたちは伸ばしてやれば、無限に伸びていくものです。トップクラスで伸びない子は、受験や試験で疲れているんですよ。少し休ませて、疲れが取れればモチベーションは上がり、まだまだ伸びていくでしょう。

── 最後に、今後の塾に一言をお願いします。

中嶋 実際の教育現場には、生徒個人個人に対し、能力を少しでも多く引き出そうと日夜努力されている講師がいます。また、勉強以外の話にも相談に乗り、いろいろな問題の解決に協力してあげる講師もいます。この先生方は決して、勉強は辛く苦しく我慢して努力するものだとは教えません。『希望の高校や大学に入ったことで、目標達成したと安心し、勉強から離れてしまうのではなく、学ぶことの楽しさを知り、社会に出てからも一生学び続ける姿勢を持っていて欲しい』ということを伝えるべく、日々研鑽努力しています。このような先生方と同じ思いを持って、塾運営を続けて行っていただきたいですね。

── 本日はありがとうございました。

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