マナビネットオープンスクール2022 ●掲載:塾ジャーナル2022年7月号/取材:塾ジャーナル編集部

高校3か年課程の成功で見えた輝く変化の兆し
自ら気づき学んでいく主体的な教育を

大谷中学校・高等学校(大阪府)

一世紀以上の歴史を持つ大谷中学校・高等学校は、「やさしく かしこく うつくしく」を教育方針に掲げ、報恩感謝の心を持って社会に貢献する女性を育て続けてきた。現在は充実した理科系実験設備や高校科学コンクールで優秀な成績を収めるなど、理系に強い「リケジョの大谷」として知られている。2019年からは新たに高校3か年課程をスタート。その1期生が今春卒業と同時に、国公立現役進学率45%という数字を叩き出した。わずか3年間で驚く結果を手に入れたその理由を、堀川義博校長に伺った。


「勉強は心でする」
高校3か年課程 現役進学率100%

同校は創立以来中高一貫で知られていたが、2019年度より高校入試をスタート。その第1期生が今春卒業し、3年間の学びの成果が出た。

プレミアム文理・アドバンス文理の両コースとも100%が現役進学、しかも前者は45%が国公立合格。ほかも関西学院大学などの有名私立大へ進学し、医療系をメインとする理系進学は実に75%を占めた。またアドバンス文理も60%が理系進学を果たすなど、「リケジョの大谷」の真の実力を知らしめた。

堀川義博校長は「女子の特性を生かした教育と宗教的情操教育がマッチした」と語る。

「勉強は心でするもの。生徒たちは入学してからの宗教的情操教育を受け入れ、心を清らかに、夢を持って一生懸命学んでくれた。加えて大谷が持つ女子の特性を生かした教育、従来の受験に関するノウハウも生かし、一人ひとりに非常にきめ細かな進路指導ができた。心と勉強がマッチすることで、今回の結果につながったのではないでしょうか」

大谷の考える女子の特性とは、何事も積み重ねて安心すると、どんどん前へ進んでいくが、不安に感じると諦めてしまうというもの。それを踏まえて、数学・理科については一歩一歩積み重ね、自信をなくさないようにフォローしていくことで、大学受験に十分に通じる総合力が身についていく。また、3か年課程は高校入試に時間を割くため、中高6か年課程に比べると勉強の進み方にどうしても遅れが出てしまう。その遅れをフォローしながら授業を進めていった。

堀川校長が伝えてきたことは、「皆、ご両親からいただいたすばらしい能力を持っているのだから、それを生かすも殺すも、最後はあなたがたの心のありよう。心を鍛えなければ、目標を達成することはできない」。その言葉に何かを感じ取り、学びの中で自らの特性に気づいていった生徒たちは、大学名にとらわれることなく、心から行きたいと感じる大学の学部や学科に進学した。

「教えること・教わることには限りがありますが、自分から学ぶことは無限。これからの教育には主体性が求められます。生徒たちはいち早くそれに気づき、クラス全員で助け合い、支え合いながら一生懸命夢に向かって頑張ったのです」

卒業後も、生徒たちはよく学校に遊びに来るという。「大谷を選び、大谷で夢をつかんだという前向きな気持ちが生徒たちの笑顔に溢れていました」と語る堀川校長もとても嬉しそうだ。


(左)プレミアム文理コース・アドバンス文理コースの進学先例。※SSは入学前の外部模試偏差値
(右)実験を積み重ね、納得して前へ進むのが大谷スタイル

自らの特性を更に深める究極の
S医志・S理系クラスが医進コースに新設!

同校が誇る6か年課程は3コース。最難関の国公立・私立大学の医系・理系学部を目指す「医進コース」。難関国公立・私立大学全学部を目指す「特進コース」。そしてグローバルマインドを備えた世界で活躍する女性を育てる「凛花コース」だ。

人気の高い医進コースに、高校1年からの選択クラスとしてS医志クラスとS理系クラスが新設される。S医志クラスは「医師になりたい」という強い意志を持った生徒だけが参加できるクラスであり、医学部合格のためのガイドラインが完成しつつある。過年度生の可能性も考え、予備校と連携を取り、合格までを手厚くフォローする体制を整えていくという。

「中学3年間で自分の特性に気づける教育環境を、今、整えています。まずはしっかり勉強し、その上で医療や薬科の大学や現場の方々を講師に招き、医師の心構えや責務などさまざまな講演を聞いてもらいます。なかには厳しい話もあるでしょう。それでも『私は医者になる!』と決めた子だけをS医志クラスに迎えたいのです」

一方、S理系クラスは薬学や看護など、医師以外の理系を目指すコース。高校一年間学んだ上で、特進コースのS文系クラスに編入も可能だ。中ぐらいの偏差値の生徒が、強い意志をもってコツコツ勉強し、医学部はじめ自分の本当に望む道に進む。そんな、心に火をつけることができる教育を目指していきたいと堀川校長は語る。


(左)科学部部員は70名を超す。英語でプレゼンする科学グランドコンテストでは、昨年にシュプリンガーネイチャー章を受賞した(2021年11月24日の読売新聞より)
(右)GEZは6学年がともに学べるコース制をとる。3級以下「elementary course」、準2級以上「intermediate course」、準1級以上「advanced course」

グローバルに活躍できる表現力を!
「Global English Zone」始動

社会のグローバル化がますます激化する中で、多国籍な人々との交流が増え、主体性・協働性・表現力が求められる昨今。さまざまな人たちと対等な立場で話せる表現力を磨くことを目指し、今年から課外活動「Global English Zone(以下GEZ)」が始まった。英検の取得級による初級・中級・上級の3コースが設定されており、ネイティブ講師の指導のもと、学年を超えた生徒たちがオールイングリッシュでアクティブラーニングを実践していく。

「今自分が持っているもので、いかに相手に想いを伝えるか。そういう部分が鍛えられていると感じます。特に中学生は語彙も少ない中、必死に伝えようと努力する。だから『今は文法も発音も気にしなくていい、まずは喋ろう』と応援しています。GEZで学んでどんどんスキルアップしていけば、自然と良い英語で話せるようになっていくのです」

GEZは同校がもつ留学システムの準備講座でもある。留学生は帰国後、再びGEZに戻り、インストラクターとして皆に経験を伝える役割を担う。学ぶ中で留学に興味を持ったり、上級コースを目指して英検にチャレンジしたりするなど、これを機会に生徒たちの世界がさらに広がっていくことを目指している。

新しい時代へ向けて、さらなる変化を辞さない大谷中学校・高等学校。実験で鍛えられる論理力と、GEZで磨かれる英語力で、グローバルに活躍する人材が巣立っていく。

大谷中学校・高等学校 https://www.osk-ohtani.ed.jp/


過去の記事もご覧になれます
https://manavinet.com/west/osk-ohtani/