マナビネットオープンスクール2022 ●掲載:塾ジャーナル2022年7月号/取材:塾ジャーナル編集部

「やってみなはれ」の精神で臨む多彩な探究学習
一人ひとりのストーリーに寄り添った「進路実現」!

雲雀丘学園中学校・高等学校(兵庫県)

2021年に人工芝として整備され、生徒たちが上靴のままで自由に遊べるグラウンド


今年度で創立72年目を迎えた雲雀丘学園中学校・高等学校。サントリーの創業者で同校の初代理事長でもある鳥井信治郎氏が主張したのは、親孝行な人はどんなことも立派にできるという「孝道」と、自立型人間を目指す「やってみなはれ」の精神である。この2本柱を教育の礎に、探究の授業や探究プロジェクト、探究ゼミなどを通して、生徒がやりたいことを楽しみながら実践し、大きく成長できる教育を展開。その姿勢には、中井啓之学校長の「すべての生徒に居場所のある学校にしなければならない」という思いが込められている。


多彩な探究プログラムを展開
今春、キャリア教育優良学校文部科学大臣表彰を受賞

阪急雲雀丘花屋敷駅から徒歩約3分、学園専用改札口から一般道路を通らずに通学できるという絶好のロケーションをもつ同校。一歩入れば緑豊かな環境で、生徒たちは生き生きと学園生活を楽しんでいる。

同校の「やってみなはれ」の精神がより濃く表れているのが、多彩な探究学習の取り組みである。中高6年一貫は「一貫探究コース」に、高校3年間は「文理探究コース」と銘打ち、探究の授業や探究プロジェクト、探究ゼミを展開する。

例えば、調べ学習を中心とする探究の授業では、中学の生徒全員が修学旅行のプランを練る。そして各々が発表して投票し合い6コースを決定。去年は横浜や金沢、九州などあちこちへ生徒たちは旅立った。

希望制の探究プロジェクトでは、企業や大学と連携。アドベンチャーワールドのジャイアントパンダのバックヤードを見学してSDGsについて考察したり、サントリーフラワーズと連携し青いバラの開発研究者の話を聞いたりと多彩に実施。

また探究ゼミでは、教員が教科を越えたテーマを用意し、様々な学年の生徒が自由に参加できる。その一つに「広報ゼミ」がある。

「本校の入試広報物を生徒目線で考え、実際に制作してもらうというゼミです。自分の通う学校の良いところを見つけることで自己肯定感につながりますし、チームに分かれて制作するのでコミュニケーション力を養い、達成感も体験できます」と入試広報部の山内勉氏は語る。

注目すべきは、これら探究学習のプログラムが認められ、今春、キャリア教育優良学校文部科学大臣表彰を受賞したことだ。

とくに評価された取り組みは、3つ。1つ目は、NPO法人と協力し、模擬企業を設立して商品の企画・製造・販売・決算まで行なう企業体験。2つ目は、新聞記事や写真を自分の視点や感想とともにまとめるNIE教育。サントリーの社員に取材して新聞記事も作成した。そして3つ目は、同校が立て替え工事を実施していた「文化館〜道しるべ〜」の建設現場見学。建築工程をリアルタイムで体感できる、貴重なプログラムだった。


(左)電子版の新聞記事や写真を自分の視点や感想とともにトピックとしてまとめるNIE教育
(右)サントリーの社員インタビューや職場見学を通し、新聞記事として仕上げる取り組みも

大学入試にも圧倒的な結果
大阪大学推薦入試合格者数全国1位

探究学習のプログラムは生徒の成長に影響しているのはもちろん、大学の推薦入試でも生かされている。今年度、大阪大学に推薦入試で合格した生徒は、志望理由書に、自身が探究学習で経済のゼミに参加した際の活動について記入し、見事大学側から評価された。

「テーマは『商品開発』でした。とかく男性向けのイメージで販売される缶コーヒーについて、いかに女性にも買ってもらえるのかを考えるという内容です。ペットボトル、ボトル缶、缶コーヒーのグループに分かれ、彼はボトル缶のリーダーでした。最後に、サントリーから出向してきた副校長から講評をもらっていました」と入試広報部長の板倉宏明先生。このように探究学習を通し、生徒は多くの引き出しを持ち、大学の推薦入試に活用している。

結果、2022年度は大阪大学への推薦入試での合格者は8名で、これは全国1位を誇る。大阪大学を含めた国公立の推薦合格者数は24名。また244名の卒業生のうち、現役での国公立合格者数は111名、実に全体の45.5%である。

「大変喜ばしいことですが、本校ではあえて『進路実績』を使わずに『進路実現』という言葉を使うようにしています。というのも、受験には一人ひとりのストーリーがあります。エントリーシートの内容も違うし、泣いたり笑ったりという個々の受験があるのです。どんな進路を選ぶのか、生徒たちのストーリーを手伝うのが学校の役目だと考えます」と板倉先生は語る。


(左)企業体験を通し、「社会やモノづくり、働くとは何か」という答えのない問いに挑戦
(右)今年3月に竣工された「文化館〜道しるべ〜」内の図書館では、ビブリオバトルを開催

ゴールを決めない1コース体制
「誰にでも居場所のある学校」に

探究学習以外にも同校の特色であるのが、勉強に関してコースを分けず、生徒全員が5教科を学ぶ方針だ。

「生徒には無限の可能性があります。中1の生徒が6年後にはどうなっているのかわからない。だから、勉強ができるからこのコース、スポーツができるからあのコースとゴールを決めるのではなく、当校は1コースのみに設定しています」と板倉先生。

部活と両立しながら「進路実現」できることが支持され、2022年度の中学校への志願者数は1,066名と過去最多となった。3月から12月にかけてほぼ毎日開催される「エブリー説明会」が志望のきっかけになったこともあるという。

高校ヘの志願者数も1,035名と過去2番目に多く、専願者数も増え、こちらは大学の合格者数が評価された結果である。

今年3月には、「文化館〜道しるべ〜」が竣工。同校の小学校と中高の間に建つ建物で、橋渡し的な役割を目的としている。発表や話し合いができプロジェクターを備えるHibari ColLabや、人との交流や本との出合い、調べ学習にも使える2フロアの図書館を擁し、探究学習のさらなる発展へつなげることに期待できる。

「これをやりたいという生徒はもちろん、引っ込み思案でやりたいことが見つからない生徒にも来てほしいです。そういった生徒が成長していく学校にしたいと思います」と板倉先生。
 「誰にでも居場所のある学校」として、ますます期待が高まる同校の取材だった。

雲雀丘学園中学校・高等学校 https://hibari.jp


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