今回は,第154回実用数学技能検定「数検」6級〜8級に出題された問題から,正答率が低かった問題を選びました。どのような点でつまづいているかを見ていきたいと思います。
[1] ,[2] は6級の1次 計算技能検定に出題された問題です。
[1]は,前項と後項をそれぞれ10倍し,6.2:9.3=62:93としてから,さらに31で割って,2:3とします。第152回検定に出題された4.5:3.6の正答率は71.0%です。このことから,小数の比を簡単にすることは理解していることが分かります。しかし,6.2:9.3の場合は10倍したあと31で割れることに気付かなかったということです。分数の約分のときも同様ですが,このような場合,62は2で割れるので,62÷2=31と計算してみます。これは,62が31でも割れることを意味します。93は2では割れないので,31で割れるか確かめると93÷31=3となって31で割り切れるので,62:93=2:3と簡単にできます。
[2]も比の問題です。内項の積と外項の積が等しいことを活用すれば,×□=×6となって,□=×6÷=9となります。しかし,この方法を知らなくても,正解を得ることができます。まず比を簡単にして:=:=8:12=2:3とします。この後,2:3=6:□と考えれば,□=9と簡単に求められます。特別なテクニックは必要ないということです。第153回検定に出題された:=21:□の正答率も62.0%と低く,受検者はこのタイプの問題を苦手にしているようです。
[3],[4] は7級の1次 計算技能検定に出題された問題です。
[3]は,小数の割り算と四捨五入の融合問題です。73.4÷58=1.265…と計算しの位で四捨五入して,1.27とします。この問題と同時に出題された14.7÷3.5(=4.2 正答率86.4%),12÷4.8(=2.5 正答率73.8%)の正答率が高いことをみると,明らかに四捨五入のミスで正答率が低くなっていることが分かります。四捨五入していないもの,の位で四捨五入しているものなどが見られます。第152回検定に出題された94.6÷26の正答率は45.0%です。2次 数理技能検定でも,四捨五入して解答する問題はすべての階級で正答率が低くなっています。実際のデータをもとに計算する場合,四捨五入は必須ですので,身に付けてもらいたい技能です。
[4] は,計算の順序をミスした受検者が多いために正答率が低くなっています。かけ算の位置が割り算の問題の場合,計算の順序を間違えたとき,割り切れる場合正答率が低くなるという結果が出ています。これは割り切れなければ計算の順序の間違いに気づき,正しく計算し直すということを示しています。たとえば,37+63÷7のタイプの問題の正答率は80%〜94%ですが、68+32÷4のタイプの問題の正答率は75%程度になっています。この問題はかけ算であったために,計算順序の間違いに気付かなかったようです。第152回検定に出題された1.1+5.5×3.8の正答率も67.6%と低くなっています。
6級・7級の1次 計算技能検定の各問題の正答率が80%〜90%がほとんどであることを考えると,これらの問題の正答率は際立って低いといえます。
[5]は7級と8級の2次 数理技能検定に出題された問題です。和算を紹介するために,説明の部分が長くなっています。この長い文章から問題を解くうえで必要な情報を選び出さなければなりません。このような力は,高度情報化社会を迎えた昨今,とても重要です。<条件>に『その前の日の2倍の米をもらう』と書いてあるので,それにしたがうと1粒,2粒,4粒の次は8粒,16粒となりますが,2粒,4粒から6粒,8粒としてしまった解答が見られました。8級よりも7級のほうが正答率が高いことから,階級が上がるにしたがって学習が進んでいることが分かります。
7級・8級の2次 数理技能検定の正答率は70%以上のものがほとんどですので,この問題の正答率は低いといえます。検定という緊張した場面で長い文章を読み,理解することは難しいことでしょうが,社会生活でも文章の内容を即座に把握し,判断しなければならない状況はよくあることですので,このような力を身に付けてもらいたいと思います。 |