新校長が目指す
21世紀型スキルの育成
この春、長年広報や副校長を歴任してきた遠藤行巳先生が学校長に就任。「2020年の大学入試改革に向け、根本に立ち返りたいと考えています」と抱負を語る。
遠藤校長が根本に見据えるのは「21世紀型スキルの育成」だ。問題解決能力、コミュニケーション能力、コラボレーション能力など、これからの社会を生きるために必要とされる力を生徒に付けさせたいと考えている。
同校ではこれまでも企業から提示されたミッションに対し、チームで解決に取り組むインターンシップ体験型学習プログラム「クエストエデュケーション」に参加。9年連続でクエストカップ全国大会に出場するなど、探究力を磨いてきた。
今後はそうした取り組みに加え、日々の授業でも双方向型のアクティブ・ラーニングを活発に行おうと計画が進んでいる。そのための教員育成も進行中だ。2018年度からは日頃の授業を教員同士が見る「公開授業」を考えている。これまでは「研究授業」として、前もって期日を決め、準備をしてきたものを見てもらうスタイルだったが、通常の授業を見てもらうことで、ノウハウを持つベテラン教員が若い教員にアドバイスを与える機会を増やしていきたい考えだ。
「実学重視」「グローバル」
「大学進学」を改革の柱に
「実学実践学習の訓育を施し、付属高校生徒としての素養を身に付け、周囲の情勢におもねることなく常に中道を歩み、将来社会の要諦に応えうる質実にして有為な人材を育成する」を建学の精神として掲げてきた同校。
将来構想「HSCUC Vision75」でも、「実学重視」「国際化の促進」「大学等高等教育機関への進学率拡大」の3本柱に挙げている。普通科と商業科を持つ同校では、一部の普通科のコースで商業科目を選択でき、社会で役立つ実践的知識を早くから習得できることを一早く取り入れてきた。
「実学実践には実務的な知識も必要ですが、社会に出たときに通用する考え方や物事に対する捉え方、向き合い方を教科の中で指導していきたいですね」と遠藤校長は話す。
国際化の促進については「英語教育だけがグローバルだと考えていません」ときっぱり。
「グローバルとは異文化を認め、相手の立場を認めること。世界を舞台にするだけではなく、地域で活躍する人材にもそうした考え方が必要になってくる時代です」と語る。
大学進学実績においても年々実績が上がっている。国公立や難関大学に合格する生徒が増えており、上位大学にチャレンジする気運が高まってきている。普通科・商業科どちらも8割は大学に進学するなど、進学意欲は高い。
同校のコースは国公立・難関私大を目指す「特別進学クラス」、部活と両立しながら上位私立大学を目指す「選抜進学クラス」、千葉商科大学をはじめとする私立大合格を目指す「進学クラス」、大学進学と資格取得を目標にする「商業科」の4つ。
特別進学クラスは2年次に文系・理系に分かれ、3年次にはさらに国公立文系・理系、難関私大文系・理系の4つに分かれる。このクラスは平均25名ほどで、選択科目によっては10名前後という少人数できめ細かい指導が行われている。
選抜進学クラスと進学クラスは2年次にシャッフルし、「文コース」「理コース」「総合進学コース」の3つに分かれる。進学コースであっても1年のときにしっかり学力を身に付ければ、所属コースをアップできるのがポイントだ。
商業科は2、3年では「会計ビジネス型」「ITビジネス型」に分かれ、実践的なIT教育も行っているのが特徴だ。検定取得にも力を入れており、簿記検定の目標を1年次に全商簿記3級、2年次には全商2級と日商2級、3年次には全商1級と日商2級に設定。毎年多くの生徒が合格している。
|
ポートフォリオで
学習の振り返りを
同校が進めている教育改革の1つにポートフォリオの作成がある。今年は1年生の特別進学クラス(1クラス)と選抜進学クラス(2クラス)に、パソコンやタブレットを使って記録が残せるシステムを導入した。入学する全生徒への導入を視野に入れ、今年度・来年度で活用方法を検討し、決定する。このシステムでは日常の授業の記録の他、模試の結果などが残せる他、映像講座なども見ることができ、教員から生徒に課題を送信することも可能だ。
「ポートフォリオを導入した狙いは、学習の振り返りができるという点です。数年前から教育界では『リフレクション』(振り返り)という言葉がキーワードになっていると思いますが、それができることが大きいですね」と遠藤校長。
さらに、さまざまな学習過程や成果の記録等から学習状況を把握する「ポートフォリオ評価」は、大学入試改革後に評価対象になると考えられており、今から導入することで、ノウハウを蓄積したいと考えている。
遠藤校長は一番生徒に伝えたいことは「付加価値ナンバーワン」だと話す。
「我々はコミュニケーション能力などの知識以外に身に付けられる力を『付加価値』と呼んでいます。この付加価値を本校で身に付け、卒業し、社会に出て活躍してほしいと考えています。知識だけなら一人でも得ることができますが、高校時代に友と一緒に共同生活したからこそ掴める何かがあるはずです。何が付加価値となるかは生徒によって違うでしょう。今ははっきりとわからなくても、5年後10年後に千葉商科大付属だからこそ得られた何かを感じとってもらえたら嬉しいですね」
|