体験型英語プログラムで
生徒の国際意識が開花
2011年に阿部洋治校長(現副院長)が就任して以来、伝統を生かしつつ、新しい時代に即した学校へと脱皮すべく改革を行ってきた女子聖学院中学校高等学校。
特に強化したのは国際教育プログラムだ。当時、国際教育委員会委員長だった田部井校長は中高6年間を見据えたプログラムを構築。体験型プログラムを数多く導入し、英語でのコミュニケーション能力の育成に力を入れた。これらの改革により、同校の生徒の英語力は格段にアップ。その様子を「今まで眠っていた本校生徒の国際意識が、突然目覚めたようです」と阿部副院長は表現する。
その中の1つ、中1〜2の希望者対象の『国内ミニ留学体験プログラム』は8〜10人のグループに1人ずつネイティブの講師が付き、おやつづくりなど、さまざまなアクティビティを通して、3日間シャワーのように英語を浴びるプログラム。『International Fun Camp』は宿泊型のプログラムで、スピーキングの向上を目指す。今年から対象を中2〜高3まで拡大。学年ごとにテーマが設けられ、高2、3では英語でのディベートレベルまでを目指す。「たくさん会話をするうちに、自然と英語の舌になり、部屋に戻っても生徒同士が英語で会話する様子が見られます」と田部井校長は嬉しそうに話す。
さらに高2、3では『クリエイティブライティング』の授業も行っている。これは10段階評価で8以上の生徒が選択できるもので、専門のネイティブ講師から英語の小論文の書き方を2時間集中して学ぶ。この授業を導入した2012年度、生徒の多くは、慶應、上智、青山、立教などの外国語学部や国際教養学部、海外の大学などに進学を果たしている。
こうした流れの中、留学希望の生徒が増加。現在7人が長期留学しており、この夏はオーストラリアへのターム留学(2ヵ月半)には7人の参加が予定されている。同時に、海外の大学に指定校推薦で入学できる制度も整えた。オーストラリアやイギリス、アメリカ、カナダなど21校の国公立、州立大学へ推薦入学できるもので、今春は1人がオーストラリアの大学に進学する。
お茶しながらの説明会で
受験生を女子聖ファンに
田部井校長は国際教育プログラムの構築だけでなく、広報室長としても手腕をふるってきた。昨年は女子聖学院を第一志望とする「女子聖ファンを増やす」アイデアとして『JSGプレシャス説明会』を9月までに年8回開催した。この説明会は小5・6の生徒と保護者対象で、人数は各回50人限定。グループに分かれてテーブルクロスをかけた円卓を囲み、お茶をいただきながら、校長先生や管理職の先生方と気さくに話をする。「初めてお会いする方々ばかりなのですが、話が弾み、まるでPTAの集まりのようになりますね」と田部井校長。
さらに同校の特色ある英語教育を体験する『イングリッシュワークショップ』も開いた。また、昨年大好評だったオープンスクール『一日女子聖体験日』は今年7月5日に開催(参加にはHPから予約が必要)。各教科の体験授業やクラブ体験など、丸一日女子聖学院で過ごしてもらう「学びのテーマパーク」だ。小学校低学年でも楽しめる企画も多く、「本校の良さを感じていただくには、のびのびとした生徒の姿を見ていただくのが一番。ぜひ来ていただきたい」と田部井校長。
こうした取り組みが保護者や受験生から支持され、同校は受験者数を伸ばしている。また、経済状況や短期間で複数回受験する短期決戦になっている状況を踏まえ、来年度から「受験生が受けやすい試験」を第一に考えた入試改革も行っていく。 |
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教師と生徒との信頼関係
そこから生まれる「人の輪」
英語のコミュニケーション能力の高さだけでなく、大学進学実績もここ5年間で国公立等の難関大学への合格者が3倍近く増加している同校。『学習支援システム』により、生徒一人ひとりの個性に合わせた指導で成果を上げている。併せて「生徒の素晴らしさは別のところにある」と田部井校長は話す。
「運動会では、高校生は学年ごとに3色に分かれて競い合います。この時リーダーを決める選挙があるのですが、そんなとき、選挙で選ばれたリーダーは落ちてしまった生徒の顔も立て、みんなで盛り立ててやろうとするのです。人の輪をつくり、人とつながっていこうとする意識が強いのが、本校の生徒の特徴だと思います」
阿部副院長も「お互いの良いところを認め合うのが女子聖学院の文化。人と人とのかかわり方における倫理感が、自然に育まれていきます」と語る。
人にはそれぞれ与えられている『賜物』があり、それを最大限に磨き、社会のために生かすことを教育方針としている同校。「賜物を磨いた若者は、社会に出たときも、行く先々で自分を生かす方法を見つけることができる。それが女子聖学院の教育なのです」(阿部副院長)。そのように生徒を成長させるものは「生徒への教師の絶対的な信頼です」と田部井校長。
「本校では、教師が命令や指示を出して、生徒を動かすことはありません。生徒をまず信頼し、どう行動するか見守ります。すると生徒は、その期待に応えようと、大きな力を発揮してくれるのです」
教師との温かい信頼関係の中で過ごす6年間。そこで育まれる他者を認め、自分を認め、人とのつながりを大切にする人間力。これが英語力や学力だけではない、本当の女子聖学院の生徒の姿なのだろう。
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