1年中花が咲く広大な敷地
ポストモダン様式の校舎
東野高等学校でまず目を奪われるのは、美術館のような美しい建物だ。そして緑の木々と抜けるような高い空。校内には池があり、太鼓橋が掛かっている。アメリカの建築家クリストファー・アレキサンダー氏によるポストモダン様式の建築と、自然を生かした広大な敷地が見事に融合。他に類のない落ち着いた学びの環境を作り出している。
「学園の中では1年を通して必ずどこかに花が咲いています。教室を移動する時も、生徒は木々の中を通って行くんですよ。すべての教室には庭もあり、緑のカーテンや花壇をつくっています。圧巻は春の桜です。大小110本もの桜が咲き、それは見事です」。そう話すのは中川進校長だ。
今年3月に完成した新棟「Study House21」には、デジタル授業専用の最先端設備を導入したが、あえて平屋の木造建築にこだわった。地元・埼玉の木材をふんだんに使い、内装も木目を活かしたデザイン。爽やかな木の香りが漂う。
「木造にこだわったのは、学園の創設者である丸山鋭雄氏の精神を受け継ぎたいという思いがあったからです」と中川校長。
同校は1925年、現在の西東京市に丸山氏が自宅を教室にして小学生を教えたことから始まった。1985年に入間市に移転。2015年には学園創立90周年、高校開校30周年を迎える。
このメモリアルイヤーに向け、「盈進学園近未来プロジェクト」が2011年から始動。「温故創新」をスローガンに、さまざまな改革を行っている。温故知新ではなく創新にしたのは、古いものから新しいものを創っていきたいと考えているからだ。
掲げた教育ミッションは「Hearts and Minds」。Heartsは「誠意と熱い情熱」、Mindsは「冷静にものごとを捉える知力」を表している。「何に対しても情熱を持てる心と冷静な知性。それが創設者の目指した教育理念『人間教育と個性の尊重』につながると考えています」と中川校長は話している。
海外講師とパソコンで英会話
修学旅行はシンガポールへ
プロジェクトの大きな柱として力を入れているのが、国際化教育だ。社会人となったとき、抵抗なく海外に行ける言語能力や国際文化の知識、国際的な感覚を身に付けてもらいたいと考えている。
本物の英会話力を磨くためのプログラムが「SKY TALK」だ。スカイプを利用したオンライン英会話レッスンで、希望する生徒は放課後の40分間、リアルタイムでフィリピンの講師と会話をすることができる。
「うまく通じないこともあるようですが、生徒たちはみんな楽しいと言っています。講師の方々も親日的で頑張る生徒を応援してくれています。外国の方と抵抗なく会話できるようになってほしいですね」と中川校長。
他にも正門に60インチの大型モニターを設置。朝、昼、夕方の3回、英語のニュースや演説などを流している。加えて「職員室」や「校長室」など、校内のプレートはすべて英語と日本語で表記し、英語に触れる機会を増やしている。
学費に関しても、滞在費を全額支給する留学派遣制度がスタート。現在、高2の女子生徒がニュージーランドに長期留学中だ。
また、修学旅行も海外に行くことになった。シンガポール、マレーシアに2年生が行く。ユニークなのは、グループに分かれて行動するときに、シンガポールの現地大学生にガイドになってもらうこと。大学生との会話はもちろん英語。まったなしで英語を使わざるを得ないシーンをつくる予定だ。
こうした教育の成果は早くも表れている。以前は英検2級を目指す生徒はあまりいなかったが、現在は2級、準2級を合わせて50人と激増。英文科に進学希望の生徒も増えている。 |
99%の生徒が通塾せずに
大学進学実績を倍に
大学進学実績も昨年に比べて、飛躍的に伸びている。この春の卒業生の合格大学数は198校(同大学で学部が別の場合も1校として計算)になり、昨年の102校を倍近く上回った。東京理科大に合格者も初めて出るなど、学力向上が著しい。
同校は1学年10クラス。1年次では大学進学αコースが1クラス、大学進学βコースは2クラス、総合進学コースは7クラスの構成だ。しかし最近では、コース変更が可能になる2年次で上位コースに変更する生徒が増加。αコースが2クラス、βコースは4クラスまで増えるなど、大学進学志向が高まっている。
そうした生徒の希望を叶えるため、同校では朝の7時半から8時20分まで特別講習を行っている。さらに放課後も16時から19時まで講習を実施。αコースの生徒だけでなく、希望する生徒が受講している。1〜2年生は週4日、3年生は月曜から土曜まで受講。朝から夕方までしっかりと学習時間を確保している。
「本校は駅から離れていることもあり、授業が終わってから塾や予備校に行くのが難しい。ならば、朝と放課後も含めて全部学校で鍛えようと、3年前からこの講習を始めました」と中川校長。この99%の生徒が塾に通っていないにもかかわらず、学力を劇的にアップさせている。
中川校長は「生徒には、国際的な感覚を身に付けて、大学に進学してもらいたいですね。外国の方と会話するときは、お互いを尊敬し合いながらも自分の意見が言える。そんな心の大きさ、強さ、やさしさ、そして教養を身に付けられる学校にしていきたいと考えています」と語っている。
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