両輪の教育にみる
顕著な大学実績
純心を訪れて、約10年が経つ。その変わらない風景に安堵を覚える。JR八王子駅前からバスを利用するが、学園までの所要時間は「ひよどり山トンネル」ができたことで、約10分で到着する。朝夕の通学時間帯には、5〜7分間隔でバスが発車しているのが嬉しい。
敷地面積6万平方メートルのキャンパスには、緑豊かな自然と手入れのされた美しい庭が広がり、生徒たちや来訪者を癒してくれる。校内は隅々まで掃除が行き届き、磨き上げられた廊下を見ると、本校の教育が浸透していることが感じられる。
岩崎淳子校長は「今年は感謝です!」と大学実績が良かったことを話す。
2013年3月卒業生(129人+過年度生15人)の現状は、国公立、早慶上智、GMARCH、その他医歯薬看護医療系などへの進学率は62.5%と、昨年に比較して10.5ポイント上昇した。例えば、早稲田が2人から6人、慶應がゼロから3人、上智が3人から8人へと伸ばし、看護・医療・福祉系の大学に至っては14人から23人、管理栄養・生命科学系大学には5人から10人と飛躍した。
伸びた要因は二つあると校長はいう。ひとつは、「この学年は仲間意識が強く、お互いに励まし助け合い、みんなで頑張ろうという雰囲気がありました。これは大きいですね」。あまり目立たないが、やるべきことはキチンとやる。学校のイベントも手を抜かずやり抜いた学年だともいう。
おもしろいケースが5月のスポーツ大会にあった。高校3年最後ということで、賞取りに力が入った。「30人そろってのムカデ競争で、途中1回も転ばずに完走したんです。転ぶのが当たり前の競技ですから、あれは見事でしたね」。学年としてはスポーツマンというタイプではなかったので、周りの先生方も大はしゃぎだったという。
純心エデュケーショナル
デザインに効果的な工夫
2つ目は2010年から取り組んできた新カリキュラム「純心エデュケーショナルデザイン」の効果だ。
6年間を導入期(中1、2)・展開期(中3、高1)・完成期(高2、3)に分け、それぞれの指導目標を明確にしている。導入期では生活習慣・学習習慣の確立と英・数を柱とした基礎学力の伸長。転換期では英・数・国の基礎学力重視と自己の資質と適性の探究。完成期では進路を目指した選択制による効果的な学習に応用力・大学入試突破力の完成。
この流れは今年度も変わらない。ただし、主要教科では中身を工夫し、さらに効果的な学習になっているという。そのひとつが数学。今年度より中1は、中間テストまではクラス授業で始め、テストの結果でA・Bと2クラスに分ける。試験問題も共通問題のほかに到達度に応じた問題を提供する。
「クラス分けは生徒に納得してもらっています。伸びる生徒はさらに伸ばし、数学が苦手な生徒には手厚いフォローをしていきます」
英語はもともと、「英語の純心」と言われるだけに、ハイレベルな授業が2分割で行われてきた。今年度の方向性は低学年には文法よりも、音声面での指導・活動を重視したトレーニング型の授業から始めるということだ。「とにかく耳に訴える方式です。感覚で覚えて、後で整理をする。英語の回路の構築を目指します。そうすれば文法がわかりやすくなります」。古文も中3で習熟度別授業を予定している。
そして、高2の今年度のカリキュラムに「セレツィオナーレ(選択)制」が導入された。受験科目や興味・関心に沿ったものを選ぶ、所謂自身で時間割をカスタマイズする。
「HR単位の授業が少なくなり、かばんを持ってあっち行き、こっち行きの授業になります(笑)」
この選択制には7つのモデルプランがあり、国公立、私立の文系、国公立、私立の理系、準理系(看護・医療・管理栄養・保険など)。国公立、私立の芸術系に関しては、少数のニーズにも対応できるように新設された。大学実績が大きく飛躍した準理系を設置したことで、今後の実績が期待できる。 |
中3内部生の高校受験実施
高校制服のリニューアル
その他、純心オリジナルの探究型学習も他校からの見学が多くあり、注目だ。図書館司書教員と教科担当教員が協働して、テーマや授業の進行を決めていくもので、独自のプログラムを展開している。そして、土や植物に触れる体験学習や観察を通して、自然の豊かさを知る「労作」は純心ならではのものだ。今年からは選択制になり、中3生のみが週1回を授業として成立させている。その他の学年は年間4回程度としている。
さらに中3生は、高校に上がる段階で受験を実施することになった。
「中だるみを防ぐためにも、刺激を与え、現在の学力を肌で感じてもらいます」と、なぜか楽しそうに校長は話す。もちろん受験料はなしで、一般入試の生徒と同じ日に別の教室で実施するとのことだ。ただ、この成績いかんで高校入学が取り消されることはない。
一方で、来年、高校が創立50周年を迎える。これを機に高校の制服(中学は変わらず)がリニューアルされ、ボレロからブレザーに変わった。“マリア様のブルー”がアクセントになり、清楚でオシャレな制服だ。
創立時、シスター江角が自ら植樹したメタセコイヤ(アメリカスギ)が、本校のシンボルとしてそびえ立っていた。学校の歴史とともに歩んできたのである。根を張り、枝葉は空に向かっている。岩崎校長はそれを見ながら、「創立者の思いは普遍的です。創立者の意思が引き継がれていかなければ、学校の価値はありません。変えていいものと変えてはいけないものの見極めが大事です」と、今後の覚悟の思いを話した。
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