水戸市内の私立進学校として「SUITAN」の名称で親しまれてきた「水戸短期大学附属高等学校」。2012年度には「水戸啓明高等学校」へと校名を変え、大きく生まれ変わる。注目は、普通科に設置される「サイエンス・フロンティア(選抜特進理化コース)」(募集定員1クラス40名)だ。
「自然探究をはじめ、興味を持ったものを長時間かけて研究していくような教育をしていきたい」と、このコースの中核を担う藤原博之先生は語る。理系に特化し、医学系・難関理工系のトップレベルの大学進学を目指していく一方、「大学の研究室のように、教員も生徒と一緒に研究や開発に取り組めたらいいですね」と、豊かな人間性の育成も目指していく。
コース設置に先駆け、昨年「自然科学研究部」が発足。物理、地学、生物、化学の4つの分野に分かれ、生徒は自分たちでテーマを決めて、研究に取り組んでいる。
「小・中学校の頃から博物館や科学実験が好きだった生徒が集まっています。積極的に質問をしてくれるにぎやかな部ですよ」と藤原先生。最近では、地震や液状化現象について最先端の研究を行っている専門家をそれぞれ招き、メカニズム解明にチャレンジ。今年は研究成果をコンクールに出品することも予定しており、こうした部活動での取り組みをサイエンス・フロンティアでも生かしていきたい考えだ。
同コースでは「メディカル(またはサイエンス)・プロジェクト」として、医師や研究者を招いての講演を行っていく予定。部活動としては、今年度からスタートしており、ワイン作りの講師や科学マジックの講師を招いての講演等を開催している。
今年入学した1年生の中には、オープンスクールで、この自然科学研究部の体験学習に感激し、「藤原先生に教わりたい」と入学を決めた生徒もいた。今後もさまざまな形でこのコースの魅力を中学生にアピールしていきたい考えだ。
藤原先生は現在1年1組(特別大学進学SSコース)担任。「元気で明るい。そして運動に所属する生徒が多いクラスです」と藤原先生。以前は、部活動より勉強を優先するよう指導していたが、昨年、バスケット部の練習風景を見て、心が動かされた。
「普段授業では見せないようなイキイキとした生徒の表情。しかもとても頼もしく見えた。よく考えたら、自分も高校時代3年間部活動をやっていた。部活動があってこそ勉強に集中できる。このメリハリが大事だと気付きました」
そこで、部活動も頑張る生徒へのバックアップを決意。部活動で授業を欠席した場合、指導教科の理科以外でも質問を受け付けたり、朝学習では英語や数学のプリントを用意したりと手厚いフォローをしている。 |
さらに授業では、教卓の周りに机を3つほど置き、目を配りたい生徒を呼んで、間近で勉強を見るようにした。わからない部分を積み残さず、しっかり理解してもらうためだ。
「自主的に『この席に座っていいですか』と言ってくれる生徒もいて、クラス全体にいい影響が広がっています。それに生徒が『うちの学校はここまでしてくれるよ』と他校の生徒に自慢してくれるのも嬉しいですね」と藤原先生は話す。
藤原先生が中心となって、来年設置されるサイエンス・フロンティアコースは、英・数・理の3教科で受験できるのも大きな特徴。また「サイエンス・フロンティア」だけでなく、他のコース名も一新される。普通科では難関文系大・理系大を目指す「選抜特進文理コース」と国公立大・有名私学大合格を目指す「特進文理コース」を設置。商業科は「人間経済コース」と新しく命名し、将来の起業家育成にも力を入れていく。
新校名の「啓明」とは「明けの明星」である金星。「光をもたらす者」という意味もあり、「真の学問探究者」の育成に向けて、いま大胆な改革が進められている。
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