入りやすい進学指導室
一般入試モード高まる
「今年卒業した中高一貫生の5期生が進学実績を出してくれました。早稲田・慶応に2人ずつ合格。GMARCHクラスでも合格者35人中15人が一貫生でした。しかも327人中、一貫生はたった62人だったのです」
そう話すのは進路指導部長の杉山晴彦先生。躍進の要因は大きく3つあると分析する。
まず、ひとつはノウハウの蓄積だ。1期生〜4期生を送り出した経験から、反省点・改善点を修正し、一貫生の指導方法がほぼ確立した時期と5期生の入学が重なった。さらに指導に当たった教師は熱心な20代の若手が多く、生徒と一緒に育ち、経験を積んできたことも実績を後押しした。
もうひとつは「進路指導室を拡充したことです」と杉山先生。関東地区で購入可能な大学の赤本(過去3年分)をほぼ揃えたほか、部屋のレイアウトも開放的に変更した。パソコンも4台ほど設置し、同校が導入する予備校のサテライト授業の試聴もできるようにした。その結果、生徒は進路指導室をよく訪れるようになり、自分の進路について意識する機会も増えた。
「進路指導を主に行うのは担任です。担任は親のような存在ですが、進路指導部のスタッフはいわゆる『親戚のおじさんおばさん』。斜めの関係として、気軽に相談できる場所にしたいですね」
昨年から学年ごとに主任・副主任を置くよう、組織改革を実施。その結果、「学年としての一体感も生まれてきました」と杉山先生は話す。
「大学受験は団体戦。学年全体が同じ方向を向くことによって、波及効果が生まれます。これまでAO入試希望者が多かった普通コースの生徒も、自力での受験を考えるようになってきました。今年の卒業生はそうした盛り上がりが年度途中から生まれ、結果を残すことができた。今年の高3生の間では、すでにそうした熱気が高まっています」
グループで協力し、発表
交流力・プレゼン力鍛える
同校では教科指導の他にも、アイデンティティープログラムとして「最先端学習」を取り入れている。これは生徒がグループに分かれ、研究・発表を行うもので、コミュニケーション力やプレゼンテーション能力等、社会に出てから必要とされる力を育成する目的がある。
グループ分けはクラスの枠が取り払われ、特進・進学クラスもシャッフルして行われる。今まで話したことのない生徒同士が同じグループになることもあるという。
「これを中学3年間続けると、お互い全く話したことのない生徒がいなくなります。最初は緊張しますが、中学生は柔軟性が高いので、すぐに打ち解けますよ。このグループ分けには、クラス内で友人関係がこじれてしまった場合でも、違うクラスに友人がいることで、生徒の行き詰まり感を緩和できるメリットもあります」
以前はこうした『社会人力』と呼ばれるコミュニケーション能力等の力は、社会に出てから学ぶことができた。しかし今は、学生時代に身に付けておくことが大前提になりつつある。
杉山先生は「勉強を一生懸命やるのはもちろんですが、部活動、生徒会、趣味でもいいので、学業と両立させた充実した生活を送り、社会人力を身に付けてほしいですね」と話している。 |
部活動と勉強
どちらも尊重する校風
同校の基本理念は「知・徳・体」。学力だけでなく、心と体の育成にも力を注いでいる。「徳」の部分では挨拶を徹底的に指導。お互いの顔を見て、きちんと話すことができるだけでなく、ハキハキとした挨拶と会話は、面接の場面にもおいても重要だと考えている。
さらに授業開始前の「起立・礼」の方法等を統一した「共栄スタンダード」も実施。
「中学・高校入学時には、さまざまな出身校から生徒がやってきますし、教師によってもいろいろな授業スタイルがある。そこで4年ほど前に『共栄スタンダード』を導入し、授業の前後にメリハリをつけるようにしました」と杉山先生。
今年の春の高校バレーで全国3位に輝いたバレーボール部をはじめ、バトン部も国際大会で優勝。少林寺拳法部も5年連続全国大会出場と、部活動が盛んな同校。
生徒が部活動と勉強を両立できる背景には、学校自体がバックアップするシステムがあることが大きい。バトン部は早期引退(高2の3学期)も可能で、顧問の教師の配慮により退部扱いにしない。また、春高バレーが1月開催になり、高3生も出場できるようになったが、一般受験をする部員は早目に引退することもできる。部活を頑張る生徒、勉強を頑張る生徒、どちらも尊重する校風ができている。
「特進コースの生徒は、普通コースに比べて1時間授業が長いので、部活動に遅れて参加します。でも、他の生徒はそれをよく理解をしていて、温かく迎えてくれます。早期引退を認めるなどの学校全体のシステムをあることも両立の下支えになっていると思います」と杉山先生は語る。
勉強も部活動も悔いのない学生生活が送れる生徒たち。その自信が将来への大きな力になっていくのだろう。
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