地道な広報活動が大きな実を結ぶ
「午後受験を発表してから、ある程度の増加は予想していましたが、これほどまでとは思いませんでした」と、藤崎堅信高校教頭。
入試直前最後の学校説明会(12月20日)には1,600人が参加。新しいチャペルで、パイプオルガンを聞きながらの説明会は大好評だった。午後受験の会場は、校内と淵野辺駅前の桜美林大学の施設を用意。アクセスの良さも受験者数増加を後押しした。その結果、1日目だけでなく2日目、3日目もすべて前年より増加。偏差値も5ポイントほど上がった。174人の新入生を迎え、1クラス増えて、5クラス編成になる。
「実は今春、相模大野に県立相模原中等教育学校が開校し、影響が出るのではと心配していました」と話すのは杉本きみ子中学教頭。そのため、学校の認知度を上げるべく、広報担当が熱心に広報活動を展開。藤崎・杉本両教頭も多くの説明会に出かけていった。
「塾では実際に、お子さんが勉強している机や椅子に座り、お母さん方と話をしました」と藤崎教頭。膝を突き合わせ、率直に語り合うことで、志願者は続々と増えていった。ふたを開けてみたら、公立中高一貫校の影響はほとんどなく、受験者層の違いが明らかに。地道な広報活動はもちろん、伸び続けている進学実績、新チャペルの完成など、さまざまな要素が重なり、ビッグバンが起きたと、同校では分析している。
今年の新入生は落ち着きもあり、学習習慣が身に付いている生徒が多い。さらなる学力向上に、学校側も大いに期待している。
車椅子の生徒と共に
学校で「共生」を学ぶ
あまり知られていないが、同校では、現在2人の車椅子の生徒が学校生活を送っている。そして、これまでもハンディを持つ生徒を受け入れてきた。
「車椅子の生徒は、友達と一緒の学校生活を本当に楽しんでいます。意外に男子生徒がよく世話をしていますね。皆進んで介助をしてくれます」と杉本教頭は目を細める。藤崎教頭は「われわれがキリスト教の教えに基づき、『共生』を語るのと同時に、ハンディを持った友達の存在が、生徒たちの心には響いているようです」と語る。
ある車椅子の卒業生は大学に進み、「自分は恵まれている。もっと困っている人のために何かしたい」と、東南アジアに車椅子を送るための組織を立ち上げた。また、車椅子ながら、吹奏楽部で活躍していた生徒は、白血病の悪化で、高3の3学期から登校が不可能になった。そこで同級生や先生、吹奏楽部の仲間が集まり、ストレッチャーに乗った生徒を囲み、たった一人のための卒業式を行った。残念ながら、4ヵ月後にその生徒は亡くなってしまったが、今年から吹奏楽部の定期演奏会は、骨髄バンクチャリティーとして行うことに。桜美林には生きた心の教育があり、命を大切にする思いは脈々と受け継がれている。
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本当に希望する道へ
キャリアガイダンス
現在、同校ではさまざまな形態の大学入試に対応するため、進路指導専門の教員が、最新の受験情報を収集している。進路指導も徹底しており、高3の個人面談では、生徒全員のこれまでの模擬試験のデータや学校の成績を分析してから行っているほどだ。
また、同校では将来の職業を決めるため、中学校で「キャリアガイダンス」を行う。キャリアガイダンスは各分野で活躍する保護者を招き、仕事内容を紹介してもらうもので、今年は、保護者でもある桑田真澄氏(元プロ野球選手)が、ボランティアで講演を引き受けてくれた。夢を実現させた桑田氏が語る姿に、生徒は大いに感銘を受けたようだ。
このように、教員たちの愛情に包まれて育った生徒は、母校に対して特別な感情を抱いている。チャペルで行われる卒業生の成人式は、生徒が発案して始まったもの。また約1割にあたる生徒が教育実習にやってくるなど、愛校心の強い卒業生が多い。
「いつも怒られていた生徒こそやってきますね。その子たちにも本校での居場所があったんでしょう。有名大学に入った子だけの学校でないところがいいと思っています」と藤崎教頭。
2009年の進学実績は、早慶上智理科大ICU/35人、GMARCH/115人、国公立/12人と高い実績は挙げています。「中学では学ぶ姿勢を身に付け、高校では自分の夢の実現のためにきめ細かく指導する体制がしっかりできあがった結果だと思います」と、杉本教頭。
個性豊かな生徒がお互いを尊重し合いながら、生き生きと学んでいる桜美林中学校・高等学校。どんな生徒でも温かく見守る校風がそこにあった。
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