体系的な教科指導と進路教育
女子聖学院中学校・高等学校は高校からの募集を行わない中高完全一貫校である。
キリスト教による人間教育を基盤に、「神を仰ぎ 人に仕う」というスクールモットーのもと、6年間をかけて生徒一人ひとりの人間的成長を促す。そのうえで、生徒の可能性を引き出す学習指導と進路教育に力を入れている。
進路教育は、生徒の個性や希望に配慮しながら「神様から自分に与えられている賜物を生かすのにふさわしい進路」を獲得できるよう進められる。
学習指導においては、6年一貫教育のメリットを生かして学習内容の精選と系統化を図り、ゆとりある「先取り教育」を実現。6年間の学習内容を高2までにほぼ終了させ、高3の1年間は大学受験対策に充てる。
こうした教科・進路指導により、今年度は、卒業生の約8割が現役で4年制大学に進学した。大学合格実績には、東京外大や東京海洋大などの国公立大、早稲田・上智・東京理科大・ICUなどの有名私大が名を連ねる。
英語教育を強化
学力をさらに充実させるため、今年度から教育システムや教育内容の見直しを開始した。
校長補佐の城築昭雄先生は「生徒は世間的イメージや偏差値で大学を選んでいるわけではないが、進路の選択肢を広げるためにも十分な学力を身につけさせたい」と話す。
その第一歩が中学の週5日制から6日制への変更だ。同中学では2002年度の完全学校5日制実施に合わせ、授業を平日に行い、隔週土曜日には「人間教育プログラム」や補習などを設定していた。しかし、今年度からは中学も高校と同様の週6日制へ戻し、週当たりの授業時間数を4時間増やし33ないし34時間とした。昨年度まで土曜日に設定されていた人間教育プログラムなどは、週1時間から週2時間へと増やしたロングホームルームのなかで実施される。また、昨年まで短期集中授業として行われていた美術と技術家庭にも1時間ずつ充てた。
主要教科については、先生方が話し合った結果、英語教育に力を入れるため、授業時間を1時間増やし、週7時間とすることが満場一致で決まった。増やした1時間は、ネイティヴによる英会話の授業に充てられ、中学1・2年で週2時間、中学3年では週1時間の授業が設けられることになった。
同校入学者のなかには、帰国子女やすでに英語教育を受けている生徒も少なくない。そのため、1年の英会話では既習者と初心者を分けてクラス編成している。しかし、数ヵ月後の初心者クラスの上達ぶりには、帰国子女も驚くほどという。
「時間をかけてじっくり教えていますので、英会話を楽しみながら習得していくようです」と城築先生。
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教育内容もバージョンアップ
同校では従来より、生徒一人ひとりの理解度に合わせて丁寧に指導するために「習熟度別授業」と「少人数授業」を実施してきた。
例えば、理科実験や技術家庭の実習などは、一人ひとりに目が行き届くように1クラスを2分割して「少人数授業」を行う。また中学3年の英語と高校1年の数学では、習熟度別に1クラスを2分割、あるいは2クラスを3分割する「習熟度別授業」。さらに高校2・3年では、受験に対応した選択科目が大部分を占めるため、多くの授業が少人数制で行われている。先の英会話の授業も、いずれも1クラス約40名を3分割した「少人数授業」である。
しかし、城築先生は「限られた教室数では、分割できる教科に限界があります。学力の充実をはかるため、少人数教育をさらに推進することが本校教員の長年の願いでした」と話す。
その願いを実現するのが、創立100周年記念事業として建設中の新校舎だ。チャペル棟と体育館を除く、教室棟が全面的に建て替えられる。
新校舎は地上5階建て。旧校舎と同じ位置に建設されるが、敷地面積は旧校舎の約1.5倍。床面積は2倍近い。エントランスホールの横には、約400名を収容できるホールを設け、学院創立者の名を冠して「クローソンホール」と名づけられる。もちろん少人数教育に必要な教室数も十分に確保された。
竣工予定は2007年12月。したがって2008年度から新校舎で、念願の少人数教育が実現する。
さらに城築先生は、「教育は中身が問題です。生徒を人間的に成長させながら学力を高めていくことが教育。少人数教育にとどまらず、総合的な見地から授業内容や行事を見直し、校舎と同様に、私たちの教育もバージョンアップさせていきます」と改革への意気込みを語る。
いま女子聖学院では、新校舎建設と新たな教育の構築が同時に進められている。
2007年12月、女子聖学院のシンボルであるチャペル棟と連続するように切妻屋根の新校舎が完成する。その垂直線を強調したゴシック風デザインは、チャペル棟と見事に調和し、美しい景観を作り出すことだろう。
新校舎起工式を開催
8月28日(月)、女子聖学院新校舎の起工式が執り行われた。旧校舎が解体されて、広大な更地となった敷地に特設テントが設置され、学校法人聖学院関係者・女子聖学院同窓会・PTA・教職員・設計・施工者ら約200名が参加した。
起工式は礼拝形式で行われた。最初に参加者全員で讃美歌を歌った後、聖書・マタイによる福音書第7章24〜27節が朗読された。
小倉義明校長は説教で、「神は100年前に聖学院を創立し、いま新たな建築を発意され、導いてこられた。今日私どもがこの事業を起工するに当たり、まず、神が大いなる決心と経綸をもって、建物を建てようとしていることを心に刻みたい。その認識こそが、この建築の土台となる」と述べ、「列席者すべてが事業の完成に向けて、一致協力していくことを決意しようではありませんか」と結んだ。
その後、鍬入れが行われ、無事起工式を終了した。
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