1型特進に2コース
2型標準に4コース
帝塚山学院といえば音大、美大を目指す芸術教育に卓越したノウハウを持つことで知られるが、国公立大学や医歯薬系大学への進学でも高い実績を上げている(別表参照)。地元、関関同立への合格者99人も全員が現役合格(2005年入試)で、1学年221名という分母からすると高い合格率だ。
かといって、生徒は中高一貫の6年間を受験指導一点張りで過ごすわけではない。むしろ多彩な体験型授業や、ボランティア活動、海外での研修などにより、進路の決定から目標達成までを導く教育活動は、中高一貫でこそ可能となる。
6タイプのコース選択では学校側が成績によって分けるのではなく、生徒の意思により選択できる点、また、コース変更が柔軟に行える点が特徴となっている。「もしも、選んだコースが合わないと思えば、別のコースを選択すればいいので、中学の3年間でほとんどの生徒たちは自分に何が向いているのかを見つけてくれます」と入試対策部長を務める松本光司先生はいう。多感な成長期に様々な可能性に触れ、進路を自ら選び取った生徒は、いったん目標を決めると学力や技能は大きく伸びるという。
▽ 1型特進 中学1〜2年次に自学自習力と基礎学力を養う。中学2年次より英・国・数の3教科で習熟度別クラス編成を行い、夏休みには夏期特別講習を実施。中学3年次からは高等学校の学習内容へ移行する。同校の波々伯部(ほおかべ)守教頭は「本校では浪人は考えていません。現役合格のためには学習の前倒しをできるだけ早く行っていきます」と現役合格にこだわる。中学3年の春休みには2週間のカナダ研修旅行を実施し、ホームステイを通じ異文化を体験、現地地元校の授業にも参加する。なお、高校1年進学時に別コースへの変更は可能。
▽ 2型標準 中学校から入学の生徒で2型標準タイプを選択した場合は、1〜2年次に「英語国際」「音楽」「美術」の3コースすべての体験授業を受ける。この間にどの分野に興味があるかを見極め、中学3年からは3コースのいずれかを選択し専門授業を週2時間ずつ体験し、高等学校での本格的な進路選択の準備を行う。高校からの2型各コースは以下の通り。
▽ 英語国際コース 高校1年で「英語国際」を選択した場合は、高校1年次に週9時間、2年次に週12時間、3年次からは週13時間をかけ、実用英語と入試英語を両立し学習を進める。資格取得にも力を入れ、昨年度の英語検定では、高校2年で全員が準2級を、3年で83%の生徒が2級を取得し、準1級を取得した生徒もいる。高校2年次に3か月間のカナダ語学研修を実施し、現地で少人数英語授業を受けながら英語力を高める。大学入試でも、「関関同立」に12名が合格している。なお、このコースへのコース変更は高校進学時が最終となっている。
▽ 音楽コース 高校1年進級時まで別コースへの変更が可能。その後は音大進学を目指し、音楽理論、和声学、イタリア歌曲、ソルフェージュ、器楽、演奏法など専門科目に重点を置く。高校2年の春休みにウィーン研修を実施し、現地のプライナー音楽院で実技レッスンを受講。ほかにも国内外から教授を招きピアノ、バイオリン、声楽などの特別レッスンも受講可能。50年の指導実績と海外ネットワークが最も生きるコース。
▽ 美術コース 高校1年進級時まで別コースへの変更が可能。高校2年からは素描、デザイン、美術概論、映像メディア表現、造形表現などの専門科目を学ぶ。高校2年の春休みにイタリア美術研修を実施。古代文化遺産やミケランジェロ、ラファエロなど巨匠の作品を鑑賞する。ファッションデザインの取材実習も行うなど盛りだくさんな内容。「この研修は保護者からも参加したいと声が上がるほど好評です」と波々伯部教頭。なお、全国高校総合文化祭では9年連続で大阪代表校に選出されるなど、その実力は群を抜いている。
▽ 総合(自主選択)コース 高校から選択できるコースで、多彩な選択科目群から生徒自身が授業を組み合わせることができる。情報処理、中国語、環境学、女性学、書道、合気道、さらに系列大学との連携授業を受けることも可能。IT関連の専門家や食物栄養などの分野で活躍する人材育成を行う。高校2年のオーストラリア研修では現地のカレッジに体験入学し、豊かな自然との共生を考える。波々伯部教頭は「別コースに入学し、途中でそのコースが自分に合っていないと思っても、それ以上選択肢がなければ、無理をして自分自身を潰してしまうこともあります。そうならないように、いろいろな可能性を提供したい」と総合(自主選択)コースの多様性の意義を説明する。関関同立、神戸女学院などの指定校推薦で進学する生徒が多い。
ある生徒は1型特進コースで入学したが、音楽の授業で声楽の才能を見出され、本人の希望もあって、高校進学時に2型音楽コースへコース変更した。成長段階を経て、声が安定し始めるのがちょうど中学のころで、同校の音楽教師がその才能を見逃さなかったことがきっかけだ。生徒にとって思わぬ進路を見出した例といえる。また、幼少時からバイオリンを習い続け、バイオリニストの夢を持って2型音楽コースへ入学してきた生徒が、練習を重ねるうち海外で技能を磨く決心をし、そのために必要な英語力を身につけたいと英語国際コースを選んだ例もある。
いずれのケースも将来の進む方向を真剣に見つめてのコース変更だが、このようなケースが年間10例程度あるという。波々伯部教頭は「希望する目標を達成させるには、生徒の意思に沿うことが大切です。本校では1型の特進コースでも「国公文理」か「私大文系」なのかを成績によって一方的に分けることはしません。生徒が自分で選ぶのです」という。 |