3つの校訓
履正社学園豊中中学校は50万坪の緑豊かな服部緑地公園に隣接し、通学路には高級マンションや住宅が建ち並ぶ静かで落ち着いた環境の中にある。
同校の校訓は、「履正不畏」(自分が正しいと思うことを勇気と責任を持って実践すること)、「勤労愛好」(働くことは自己実現。勤労を通して国や社会に貢献する人材を育てる)、「報本反始」(常に初心に帰り、自分を育ててくれた両親や先人の恩に報いる心を育てる)の三綱領で、これらをベースとして教育が行われている。
まずは大きな器の創成をめざし、目標へのやる気、意欲を引き出し、学習・行事・クラブに真剣に取り組む集中力を高め、ねばり強くやりぬく持続力、意志の力を培う。第二に、優れた映画の鑑賞やさまざまなジャンルの著名人の講演会を毎年実施するなど「感動の教育」によって感性を磨く。そして生徒の無限の可能性を信じ、一人ひとり丁寧に面倒を見、学習につきあい、最大限に才能や能力を伸ばす。第四に人格の形成を最終目標とし、豊かでたくましい人間性を育む。
これらの教育実践により、「履正社に入っていなかったら、東大生の自分はなかった」と語る卒業生を生み、中学受験で難関校への入学が果たせなかった生徒をそれ以上のレベルの高校へ進学させる「リベンジ」が果たせる学校として知られる。
19年の実績を誇る
「3カ年独立コース」
3カ年を一区切りとして難関高校への進学を目指す「3カ年独立コース」は、全国で唯一の存在である。多くの私学が中高一貫6カ年で国公立大学や難関私立大学への合格を目指していたなか、3年間で難関高校へ進学させることに邁進し、すばらしい実績を残してきた。1〜15期の卒業生のうち灘や甲陽学院に進学し、さらに東大・京大・阪大で学んだ生徒は135名にのぼる。
このコースの定員は80名で、2年生からは1クラス40名をさらに2〜3分割するなど少人数制できめ細かく指導を行い、偏差値を20伸ばすこともある。
「『日の出から日没まで』というのがモットーなのです」と村瀬典弘校長が言うように、同校の授業時間数はかなり多い。1日のスケジュールは0時限目の8時15分からスタートする。15分間の「早朝テスト」の後、6限授業、そして掃除などをはさみ100分間の「進学講座」と続く。「進学講座」は科目ごとに「基礎コース」、「標準コース」、「発展コース」などに分かれており、生徒が選択し解らないところを解決していく講座である。「進学講座」の終了は5時20分。女子のみ緑地公園駅までスクールバスがでる。
「早朝テストの前に勉強するため、あるいは教師に質問をするため、朝7時に登校する生徒もいます。そして、進学講座だけでは不足する生徒のためにさらに100分講座を行うこともあり、まさに日の出から日没まで、の1日ですね。けれど、解らないと言う生徒ほど理解したいといつも思っているのですよ」と仲田建一教頭は語る。
週6日、3学期制で、夏休みは8月1日〜19日までの20日間。鍛えてくれる学校だと認知され、生徒は覚悟して入学してくるというが、頻繁に個人懇談を行い、「生徒が80人いれば、80通りの進学指導がある」というスタンスで、40人余りの教師がきめ細かく面倒をみる同校だからこそ、学力が飛躍的に伸びるのだ。
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一流大学をめざす
「6カ年特進コース」
履正社高等学校との緊密な連携のもとで設けられた「6カ年特進コース」は、今年で中学1年生から高校3年生までが揃った。
一流大学合格を目標にカリキュラムが組まれ、中学3年の内容は中学2年でほぼ修了し、高校2年で高校3年までの全課程を修了する。高校3年では総復習と共に大学受験勉強にウエイトを置き、指導が行われる。
現在の定員は「3カ年独立コース」と同じ2クラス、80名で、履正社高等学校に進学時は外部からの入学者のクラス(8〜9クラス)とは分けて授業が行われる。(来春からは3クラス、120名となる)教育メソッドは「3カ年独立コース」と同様だが、幅広い人間育成をめざし「進学講座」の中にボランティアとして老人ホームを訪問したり、ネイティヴの教員による英会話を採り入れているのも特色の1つだ。英検は多数の生徒が準2級などに合格したため、表彰されている。
「老人ホームへは年に8回ほど訪問するのですが、最初はどう接すれば良いかわからず落ち込んでいる生徒も次第に慣れてうれしそうに帰ってきます」と仲田教頭。
「やってあげている、という気持ちではなく、自分が成長させてもらうために行くのだという気持ちで訪問するのだよ、と落ち込んでいる生徒に声をかけると少し変わってきますね」。
また異文化体験として修学旅行は6泊7日でニュージーランドへ行く。ホームステイをしながら午前中は英会話を学習、午後は買い物やアクティビティ等を楽しむ。短期間だが、生徒たちは大きな刺激を受け、成長して帰国する。このほか両コースとも授業時間数が多いため、クラブは昼休みや放課後週1〜2日の活動であるが、生徒たちは短い時間を有効に使い、非常に楽しんでいる。
来春、「6カ年特進コース」は1期生の大学進学実績が出る。「もちろん自信はありますよ」と仲田教頭。この言葉に、大いに期待したい。
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