多彩な課外授業で意欲を喚起
生徒個々の希望に添う進路指導
「本校では10年前に改革を行い、難関国公立大の入試に対応できるカリキュラムに刷新しました。そのおかげで入学者のレベルが少しずつ上がってきた結果だと自負しています」と話してくれたのは、入試広報部長の板倉宏明先生。独自の課外活動が多いことで知られる雲雀丘学園だが、それらが生徒のモチベーションアップに役立っているという。
「毎年夏に探究プロジェクトの一環として、『Academic Summer(アカデミックサマー)』を開催しています。これは、大学の協力を得て、実際に大学の医学部や工学部などの研究室で研究を体験し、プレゼンテーションを行うプログラムになっています。高校では『One Day College(ワンディカレッジ)』という活動も行っています。京大、阪大などの大学教員が本校を訪問してくださり、校内で大学の授業が体験できる本校独自の活動です」
ほかにも、サントリー生物有機科学研究所での研究者体験や先端科学実験教室に参加する課外授業もある。
「合格実績が伸びたのは喜ばしいことですが、ただ偏差値が高い大学を目指すのではなく、自分の目標に合った進路を生徒には選んでほしいのです。今年、名古屋大工学部へ進んだ生徒は、航空宇宙工学を学びたいという目標を立てて実現させました。長崎大の水産学部へ入学した生徒は、One DayCollege で先生の講義を聞いて感銘し、長崎大を選びました。自分はこれがやりたいから、この大学のこの学部へ進みたい! そういうふうに大学を選んでほしいと思っています」
英語による教科横断型学習や
英語だけで過ごす日も設定
中井 啓之 校長
今年度から中学高校ともにコースを改編した。中学は「一貫探究コース」に統合。高校は選抜特進を「文理探究コース」に改称。中高の6年間を3つの期間に分割して、学習理念を明確にした。中1、2の基礎期には、朝の授業前に自習時間を設け、放課後には1日の学習を振り返る時間もつくっている。中1生から順次タブレットを配布して、ICTを活用した授業も展開する予定である。
中3高1の展開期では、「サイエンスチャレンジ」「グローバルチャレンジ」「アカデミックチャレンジ」と、3つのコースから生徒が志望に応じて選択をする。クラスの垣根を越えて、様々なアクティブラーニングを行っている。
グローバル教育に力を注いでいる雲雀丘学園では、海外語学研修に加え、独自の授業を行っている。2日間を英語だけで過ごすグローバル研修(中1、2)、海外の大学生と英語を通してのグループディスカッション(高1、2)。そして中高ともにEIP(EnglishInteraction and Production) 授業を行っている。これは、コミュニケーション力をつけ、英語で表現する力を養成するためのものだ。
「昨年度から「CLIL(Content andLanguage Integrated Learning)= クリル」という英語学習法を行っています。これは各教科を英語によって学習する、いわば統合型学習です。ヨーロッパが発祥で世界的なトレンドになっていますが、本校でも導入にあたり、英語科の教員がイギリスで研修を受けてきました。教科学習を英語で行うことにより、語学力を伸ばせますし、教科の内容も深めることができます」
昨年の秋には、CLIL授業の成果を報告する発表会を開催。大学などの専門家を招いて助言を受け、カリキュラムの改善に役立てた。
「今年は、高校の新入生オリエンテーションを大阪大学で行いました。実は、阪大の副学長が本校を見学に来られたのをきっかけに阪大とご縁ができまして、話を持ちかけたところ、快諾してくれたのです。当日は副学長さんの講話やOBからの勉強アドバイスなどがあり、生徒は大いに刺激を受けたようです」
雲雀丘学園は距離が近いこともあり、阪大を志望する生徒が多い。昨年から校舎内に阪大の情報を集めたブースを設置しており、受験への意欲をかき立てている。
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次年度は中学入試を刷新
4教科でも受験できる体制に
中学校では、今年度から修学旅行を大きく変更する。これまでは学校が企画したプランに沿って沖縄を訪問していたが、それを生徒主導に変える。
「今年の中1生からの実施になります。実施するのは中3の秋ですが、飛行機は使用しないなどの条件で、生徒自身が企画を考えます。それをグループごとにプレゼンして、最終的に4つから6つのプランに絞ります。生徒は自分の行きたいプランを選んで出発するという流れです。旅行も大事ですが、事前に様々な土地の文化や歴史、現状を知ることにより、探究学習を深めていくのが目的です。本校の創立者・鳥井信治郎の理念でもあった『やってみなはれ』精神を行動に移すために、あえてこういう形にしました」
今春は、定員160名に対して177名が入学し、年々志望者が増えている中学校。次年度は入試の形態を変更することが決まっている。従来の3教科入試に加え、算国理社の4教科型の入試を新設。算国は150点、理社は100点の配点となる。
「国公立大学への進学希望者が増えてきましたので、4教科の成績をバランス良く判断したいとの考えです。また2日目の午前に英語入試を導入します。算国に加えて英語による面接と筆記試験を行います。小学校で英語が授業化されることもあり、早い時期から英語を勉強している生徒さんもいますので、本校でも対応したいと考えました」
神戸女学院中学校や神戸大学附属中等教育学校、大阪教育大附属池田中学校といった難関校との併願者が目立つようになった。これまでは少なかった神戸エリアからの生徒が増えているという。
この春の躍進を受けて、さらなる成長が期待される雲雀丘学園。今後の活躍が楽しみな学校である。
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