教師の意識を改革
啓光学園は、1957年開校の歴史ある男子カトリックミッションスクールである。
1963年から12年の間、同学園で生物の教師をしていた古谷校長は、かつての教え子たちが社会の第一線で活躍する姿を目の当たりにしている。
「心身共にトレーニングすればするほど伸びるのが中学・高校時代です」。そして「生徒の可能性を最大限に引き出すためのシステムづくりが、校長の最たる役割」と抱負を語る。
学習面においては、どの生徒にもわかりやすい授業を提供できるよう、教師陣に対して、教材研究や教授法の重視を通達した。
同じく4月に就任した夏見隆晴教頭は「先生方と意思疎通を図りながら、生徒の自主性に任せる部分と我々が責任を持って指導しなければならない部分を明確にする。その上で、生徒の知・徳・体をバランス良く伸ばしていきたい」と語る。
古谷校長と夏見教頭は、毎週の教科主任会議をはじめ、学内の全会議に出席。率直な意見を交換し合いながら、教師陣の意識改革を促しモチベーションを高めていく。
教師も日々変化
授業見学も、古谷校長と夏見教頭の重要な仕事だ。教師の説明、板書の仕方、生徒の表情にまで目を配り、メモを取る。授業終了後には担当教師に講評を伝える。
「生徒の質問に対して、その真意を測りながらどう答えるべきか。授業をしている当人には気付きにくい点を指摘します」と古谷校長。
さらに、今後は教師が日常的に互いの授業を見学し講評し合うことで、教授法を向上させたいという。
「時代も生徒も日々変化しているのですから、教師の仕事も変わっていかなければなりません」。
定期テストや模擬テストについても緻密な結果分析が要求されるようになった。各教科ごとに、生徒に出題意図が明確に伝わっているかを検証し、その上で結果の悪かった生徒へのフォローを検討する。
また、新任教師に対しては教科研修のほかに、建学の精神などを学ぶ継続研修が、10回にわたって予定されている。
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週6日制、8時限目も設定
高等学校では、今年度から「特進コース」と「標準コース」の2コース制となった。
「特進コース」は、国公立大学および難関私立大学進学に照準を定めている。2年進級時には、文科系・理科系や国公立諸学部型など進学目標に応じてコースを細分化。実践力を磨く指導に重点を置く。
「標準コース」は、有名私立大学への現役合格を目指す。「特進コース」と同様、2年進級時に文科系・理科系の別に分かれる。
いずれのコースも昨年度に引き続き週6日制を継続。さらに、今年度からは1年次より週に4日間、8時限目を設定した。
長江高司進路指導部長は「センター試験の5教科7科目対策と、これまで補習として取り組んでいた演習問題を授業に組み込むために、授業時間を増やす必要がありました」。
また、昨年度まで3年生のみを対象としていた予備校講師による補習を、今年度から2年生においても実施。希望制だが、教師が必要と判断した場合は、受講を勧めることもあるという。
中学校においても、週6日制に加えて週2回の7時限目を設定。授業進度を速め、3年の1学期までに中学校課程を終了し、2学期から高校の課程に入る。
中高一貫生は高校の「6ヵ年特進コース」に進学し、高校の課程を2年で終了。3年進級後は演習を中心に、本格的な受験指導が開始される。
なお従来の「スポーツコース」は「標準コース」に組み入れられ、スポーツクラスとして存続させている。
将来の職業イメージを
学習指導を強化するだけではなく、生徒の社会への適応をサポートするきめ細かな進路指導も行なわれている。
「将来の職業をイメージさせるところから始めます」と古谷校長。
そのひとつとして、社会で活躍している卒業生を招き、特別講座を開く。第1回は、高校1年・2年生が3泊4日で出かける勉強合宿。古谷校長の教え子である大阪大学大学院教授が研究職について語る。
古谷校長は「早いうちに職業を意識すると、勉強への取り組み方が変わりますし、学校としても希望を実現させるためのカリキュラムを用意できます」と、そのメリットを語る。
中学2年では、体験学習の一環として企業や保育園などで職業を体験する。
生徒に様々な刺激を与えるために外部と連携した学校行事も多い。中学2年生は学内の畑でジャガイモを栽培。近隣の幼稚園児を招待して芋ほりを楽しむ。このときは生徒が園児たちの先生となり、手助けをする。
中学3年の研修旅行は、福島ブリティッシュヒルズへ「英国留学」。英語ONLYの施設内で3泊4日を過ごす。
バランスのとれた指導方針。そして進学実績の伸びが評価され、ここ数年、啓光学園は入学希望者を増やしている。専願志望者の占める割合も多い。
「好きな学校に入った生徒は伸びます。専願志望者はもちろん、併願志望者にも好きになっていただける新生啓光学園が誕生します」。古谷校長は学校改革への自信を語った。
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