キーワードは
「自己肯定感」と「関係性の力」
追手門学院中学校・高等学校の人間形成教育のバックボーンは、創立から脈々と継承されている教育理念「独立自彊・社会有為」である。現代のような変化の激しい不透明な時代にこそ、自主自律の精神を持ち社会に貢献できる人材の育成が求められる。そのため、学習・生活・行事・クラブ活動などすべての教育活動が教育理念を基軸に展開されている。こうした考えのもと構築されたのが追手門独自の「新しい学び」だ。
「新しい学び」は、@「学習力の強化」A「アウトプット教育の推進」B「国際教育の充実」を3本の柱とする。
「学習力の強化」においては、反復を徹底するサイクル学習を実施している。まず授業サイクルで予習と復習の流れをつくり、週サイクルで1週間の学習内容のまとめ課題と確認テスト。そして定期考査では、明らかになった弱点を解説→ミニ考査→講習の考査サイクルで克服していくことで、苦手科目が得意科目になった生徒も多い。追手門独自の「学力向上メソッド」に沿った反復学習は、我々の「脳」の働きに適したもので、「英語マインド(脳)」や「数学マインド(脳)」などの「学習マインド(脳)」を形成し、学力を定着させ、伸ばすメソッドである。
住谷研中高一貫教頭は、「スモールステップでの達成感と、やればできるという自信が自己肯定感につながり、学習意欲が向上します」と話す。
さらに、授業でグループワークを多く取り入れたり、HR活動、クラブ活動などにも重きをおき、共感的・肯定的な「関係性」づくりをめざしている。「新しい学び」は学習指導だけでなく、「自己肯定感」と「関係性の力」をキーワードとした人間形成教育の実践でもある。
知識・教養を蓄え
発信する力を伸ばす
アウトプット教育
「アウトプット教育」は、「国際教育」とセットで考えられている。「英語を話すことではなく、英語で何を話すかが重要だからです」と住谷教頭。
そのためには、まずアウトプットの基となる情報・知識をインプットしなければならない。中学のSS(特選)クラスでは週1回アウトプット講座を設定。新聞記事などを教材に国際紛争などさまざまな問題を自分の頭の中で咀嚼し、知識・教養として蓄え、プレゼンテーションやディベートを通じて他者へ論理立てて表現する能力を養う。中学2年生後半から3年にかけては、アウトプット講座の集大成として、全員が「テーマ論文」に取り組む。
Sクラスでは、長期休暇前の特別授業として「伸びゼミ」を実施。通常の科目授業を超えた多彩なプログラムが用意され、楽しく学びながら自ら考える力を養う。例えば、「ツアーコンダクターへの道(社会)」と題した授業では、ツアーコンダクターになったつもりで目的地・ルートなどのプランを立て、プレゼンテーションを行う。他にも「石けんづくり」や「英語すごろく」など教科ごと多岐にわたる講座が用意されている。
「アウトプット教育」は、高校においても形を変えて継続されているが、来年度はU類コースの中に「表現コミュニケーションコース」が新設される。専門家を招き、身体表現や演劇的手法などの表現コミュニケーション活動を通じて人間形成教育を行う。
いま社会から求められる人間力として、高度なアウトプット力は欠かせない。高校のコース新設とともに、中学でのアウトプット教育のさらなる充実も期待される。 |
多彩なプログラムで
英語コミュニケーション力を高める
「国際教育」もますます充実している。クラスを2分割して行われる週2回のネイティブ講師による通常の英会話授業の他、生きた英語に触れる機会が多く用意されている。
夏期・冬期休暇前に開かれるベルリッツ英会話講座や日本語禁止のイングリッシュキャンプ。さらに中学SSクラスでは2年次に韓国英語村で宿泊研修が実施される。こちらでも終日英語漬けとなる。そして今年度からスタートしたのが、イングリッシュカフェ。同じ敷地内にある追手門学院大学キャンパスで、留学生と自由に英会話ができる。中学の英語学習の総仕上げは、7泊8日のニュージーランド修学旅行。現地では3泊4日のファームステイもあり、英語コミュニケーション力が試され、モチベーションが一段とアップする。
「海外の有名大学へも進学してもらいたい」。住谷教頭の期待は高まる。
きめ細かな指導により
学習習慣を定着させる
進路指導に関係して、同校では難関大学合格者の在学時の指導データを基に「合格ストーリー」と題するシラバスを作成している。内容は授業進度だけでなく生活面や進路指導上の留意点にも及ぶ。これは教員と生徒との距離が近く、目配りが行き届いていることを示している。
実際にきめ細かな指導が行われている。例えば、家庭学習を習慣づけるために毎日「家庭学習計画表」にスケジュールを記入させ、担任教師がチェックしコメントを添えて返す。生徒からもコメントや時には悩みが書き込まれることもあり、担任と生徒とのコミュニケーションツールの一つとなっている。また「家庭学習用ノート」には、毎日宿題以外の自分で選んだ教科の学習をこのノートを使って行い、翌日提出する。担任教師は内容をチェックし、アドバイスを与えたりコメントを書き込む。この積み重ねが互いの距離を近づけるのか、各教室の前に設けられた「交流スペース」では、休憩時間や放課後に教師に質問したり相談する生徒の姿が多く見られる。こうした日常の学校生活から「関係性の力」が確実に育まれていく。
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