国際交流・外国語センターを新設
語学教育の一層強化を図る
聖母被昇天学院では、小学校から英語の授業を導入。高等学校では、週2時間のフランス語を正規科目にするなど、これまで語学教育に力を注いできた学校だ。その伝統をさらに充実させるため、今年4月、「国際交流・外国語センター」を学院内に開設した。小中高12年間のカリキュラムを総合的に捉え、現代に通じる語学教育を発信していく拠点である。
「小学校から英語教育を受けてきた生徒は、聞きとる力を持っています。外国人にも動じない。これこそが机上の英語ではない、本来の語学教育の姿だと思うんです。いかに実践的な語学力を身に付けるか。そのための研究やサポートを強化するためにセンターを作りました」と開設意図を語る平沢真人校長。
就任3年目を迎え、これまで取り組んできた教育改革を総括。ミッションスクールという校風を踏まえた上で、次なるステージに進んで行く気概だ。
「例えば海外への研修制度の充実。現在もフランス・フィリピンとの交換留学は実施しており、中2全員の語学研修(国内)も定着してきました。それらをさらに充実発展させ、生徒たちが海外で学べる環境を増やし、広く交流の場を作って行きます」
昨年は高円宮杯全日本英語弁論大会の大阪大会で優勝・3位、全国大会への出場者も輩出するなど、英語教育において高いレベルを維持してきた同校。センターの開設により語学面で一層の飛躍が期待される。
1学年2クラスだからできる
個別指導レベルの手厚い学習ケア
同校は、1839年にフランスで創立された聖母被昇天修道会を母胎とするミッションスクール。世界34カ国に系列校があり、日本では大阪に拠点を置いている。昭和28年の創立以来、1学年2クラス(最大でも80名)という小規模教育のスタイルを貫いている。
「一人ひとりの個性に応じた指導とその人らしさを最大限に引き出してやることが本来の教育です。中高時代は人間の内面が揺らぐ時期。そういう多感な時期に行き届いたケアをすることが、その後の人生にとって重要な意味を持つと思うのです」と校長は穏やかに話す。
校長・教頭も保護者との面談を頻繁に行う同校。教員だけなく、OGやシスター……さまざまなポジション、世代の人々が集まる「家族(ファミリー)」といった雰囲気だ。この人間味あふれる環境が、10代の女子にとって心安らかな空間を作っているように感じる。
「私自身、電話でご家庭からの欠席連絡を受けるのですが、名前を聞いただけで、生徒の顔が浮かんできます。そういう関係を大切にしています」と三宅理磨教頭。
「この3月に卒業したある生徒が、いろんな場面で先生方が、『頑張ってる?』『どう?はかどってる?』と声をかけてくださり、いつも支えられていると思うことが大きな励ましになりました。大切にされているという実感が何よりの応援だった、と感謝の手紙をくれました」
紙風船が結んだ小さな絆
女子教育がもたらす“一生の財産”
全国的に男女別学校が減少していく中で、ここ数年、逆に女子校の良さが再認識されるようになっている。同校でも、学校説明会への来場者が一昨年辺りから増加に転じているという。
「男性のやることが女性もできるようになる、それが男女共生ではないと考えています。これからの時代を生きる女性は、人生の目的意識をしっかり持ち、社会に貢献できる人間として、パートナーの男性と、共に高め合い響き合う人間関係を構築する力を持っていてほしい。女性本来の資質を十分に生かし、その美しさ、たおやかさ、女性ならではの品性を磨きつつ自分の生きる使命を見出してほしい。女子だけの学校でこそできる教育が、生徒の長い人生における“大きな財産”になると実感しています」
取材中、ちょっと感動的なエピソードを伺った。昨年9月の学院祭で、紙風船に花の種をつけて飛ばすイベントを行った。風船は県境を越え、兵庫県篠山市の小学校に飛来。先方からお礼の手紙をいただいたことをきっかけに交流が始まった。話を聞くと、先方の小学校は閉校になってしまうとのこと。「これも何かの縁」と、生徒が現地へ赴いてハンドベルやコーラスの演奏会を開いたという。 |
「本校の生徒が現地の小学生にハンドベルを教える姿を見ていると、まるでお姉ちゃんが弟や妹に接しているみたいなんです。女の子らしい心遣いや気配り。何も教えなくても、そういうものが自然に醸し出されているんですね」
学校説明会でハンドベルの演奏を行う際も、卒業して何年もたつOGたちが自主的に集まり、演奏をサポートしてくれるという。
「子どもができても母校の行事に自然と駆けつけてくれる。この優しさこそが、女子校ならではの精神ですね。暖かいものに包まれていることが、人間、生きていく上でとても重要なこと。他者との共同作業を通じて、この感情は養われていくんだと思います」と教頭。
取材の後、校長先生自らが校内を案内してくださった。廊下ですれちがう生徒一人ひとりの名前を呼び、声をかけていく。最後に案内されたのは、校庭の一角。そこにあったのは、なんとも可愛らしいハート形の花壇だ。
「同窓会と生徒会が協力して、生徒だけで作り上げました。プロの造園業者も、この斜面には根付かないとあきらめかけていたんですが、生徒たちは最後までやり遂げました。すごいですよね」と、校長は目を細める。
校庭、教室、ベランダ……校内のあらゆるところから一望できる風景は壮観だ。西は淡路島、六甲山から大阪市街、和歌山、奈良の生駒山、東は京都につながる山々まで、一大パノラマが眼下に広がっている。これほどの風景を見ながら過ごせる12年間は、さぞや心地よいだろう。この環境は、同校が長年に渡って大切にしてきた“伸びやかな子を育てる”という理念の表れに他ならないとも実感した。
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