生徒の自律心が
共学化を成功へ導く
創立90周年を迎えた2008年に普通科U類の男女共学化に着手、2010年に全コース共学化を果たした滋賀短期大学附属高等学校。共学化2期生が卒業した本校を訪ね、その成果と展望について取材した。
募集企画課の小林昌彦教諭は、共学化について次のように総括した。
「職員よりも生徒がよく頑張ってくれたと感じています。もともと本校の教育目標は個人の能力を卒業までにしっかりと引き上げること。大学受験合格に特化している訳ではありません。しかし、共学化2期生を送り出した普通科U類は、妥協せずに自らと戦う、受験に強い集団に成長してくれました」
本校は建学の精神「心技一如」の下、自ら成長したいという気持ちを育む教育を推し進めてきたが、小林教諭の言葉には、それに生徒が応えてくれたという喜びがにじんだ。推薦入学が決まっても、第一志望校の合格を目指し、夜遅くまで進学講座を受講する姿に頼もしさを感じたという。今春の普通科U類の卒業生は34名で、その半数以上が国公立・難関私立大学に合格。後輩にもその気運が受け継がれ、よい校風を生みだしている。
生徒のモチベーションを上げるために心を砕いているのが、教員が膝を交えて教育を行うこと。少人数制指導で個人の力量を伸ばす可能性を見つけ、確実にレベルアップに導く。3年次になると個々の受験科目に対応し、受講者が2人であっても必要な講座を開講するという徹底ぶりだ。同時に、生徒の家庭環境を含めた生活全般にも目を配り進路指導に当たる。そして、校長自ら校門に立ち、登校する生徒と挨拶を交わす。生徒は見守られているという安心感を持ち、学校に自分の居場所を見つけることができるのだという。
本校の学校評価についてのアンケート集計がホームページで公開されている。
「保護者、近隣社会から概ね良い評価を得ていますが、分析して教育現場に活かしたい」と小林教諭は結んだ。
夢の実現に向け
コース独自のカリキュラムを展開
本校では全国でも珍しい4学期制を導入。1年を3ヵ月ごとに分割し、生徒たちの習熟度に合わせたきめ細やかな指導を行っている。学期ごとのステップアップによって生徒は達成感を得る。授業時間も3学期制に比べると約11%増え、効率的な学習スタイルが定着している。また、校内の学習評価は100点満点で採点され、定期考査だけでなく小テストや課題提出も対象となる。5段階評価より日々の努力が見えやすく、生徒の励みに繋がっている。
普通科U類は、国公立・私立難関大学現役合格を目指すために、多角的な進学指導を年間計画で実施している。週3回、主に1、2年生の希望者を対象に開講しているのが特別進学講座。受験に対応した先取り学習だ。3年次の進学講座は、センター入試等に必要な教科・科目について8講座展開し、必要に応じて個別指導も行われている。
普通科T類は総合的なカリキュラムで幅広い分野について学ぶコース。多様な進路選択が可能で、生徒が自分の進路を見つけられるよう全力でサポートする。2009年に共学になり、今春、1期生が卒業した。これまで卒業生の70%が看護医療系、保育福祉系、社会スポーツ系に進学していたが、今年は建築、理系、情報系に進む男子生徒もいて、さらに進路の幅が広がった。 |
人間総合科は生活の基盤となる「衣・食・住」を理論と実践から学ぶコース。2年次からは、ライフデザイン類型(食・住)とファッションデザイン類型(衣)に分かれて学び、さらに専門性を高める。2010年に共学となったが、男子生徒は若干名に留まる。しかし、熱心に取り組む姿に男女の垣根は感じられない。
本校では多くの生徒がクラブ活動に打ち込み活躍しているが、クラブ活動と進学講座の時間が重なる場合やインターハイ出場で在籍できない場合は、夏期集中講座や個別指導でしっかりサポートしている。
ユニークな講座や体験学習で
地域社会と繋がる
本校がコースや学年の枠を超えて実施しているのがフレッシュ講座や体験学習。フレッシュ講座は教員の得意分野をテーマに年7、8回開講。理科の実験、スポーツや趣味、受験に特化した学習など多種多様で34講座に及ぶ。今年は外部講師も迎え、葦笛づくりや貼り絵など地域の伝統文化にも親しむ。
体験学習の1つは滋賀県が推奨する環境活動「エコホスター」への取り組みで、近隣の美化・清掃を行う。もう1つはウォークラリーで、半日かけて史跡めぐりなどを通して地域への愛着を深める、学校を上げての行事だ。
共学化という学校改革から5年。村田千栄子校長はその展望と抱負をこう語った。
「どんなに優秀な大学を卒業しても、自己の挑戦力が要求される時代です。世の中のできごとを幅広い角度から見聞して、任されたことは責任をもってやり遂げる人に成長してほしい。マナーはその基本です。その様に教育し応援したいと思っています。生徒、職員、保護者の方々と、そんな思いを共有しながら、創立100周年に向かって元気に歩みます」
|