大阪南東部に広がる羽曳野丘陵。緑あふれる8万坪の敷地に、四天王寺国際仏教大学と隣接して同校のキャンパスがある。
ヨーロッパ調の校舎、その中庭に樹木が立ち並び、中央には石造りの噴水が水しぶきを上げる。休み時間には生徒たちの憩いの場となっている。
山上 周校長は「男子も女子も入り混じって談笑している。その和やかなシーンは共学校ならでは」と、校長室の窓から見える光景に笑みを浮かべる。
個人面談の機会を増やす
山上校長は系列の四天王寺高校から13年前に四天王寺羽曳丘中学・高等学校へ異動。同校において長年教頭を務め、今春、校長に就任した。
「四天王寺高校で女子教育を、本校では男子教育と共学を経験しました。教育の形態は違っていても基本は同じ。生徒が楽しく学べる学校でなければなりません」と語る。
生徒が学校生活を楽しみながら、進路の希望を叶えられるよう、教職員には「さらに面倒見を良くし、生徒を守ること。同時に、常に授業研究に力を尽くすこと」と生活・学習の両面での一層の指導向上を求めている。
例えば、これまで定期テスト後に実施していた個人面談の機会を増やし、生徒とのコミュニケーションを一段と密にする。服装など生活面にも心を配り、きめ細かく指導するなど。その結果、保護者からは「よく面倒をみてくれている」と歓迎の声が寄せられている。
受験生増加で1クラス増
同中学校は「文理コース」と「特進コース」それぞれ1クラスずつの2コース制であり、今年度は定員を越える88名が入学した。
「他の有名難関中学に合格した生徒も、本校を選んでくれました」。
今年6月に実施した中学の体験学習会も、前年数を上回る子どもたちで賑わった。
人気の要因は「進学実績だけでなく、卒業生や在校生が本校の良さを伝えてくれているからでしょう」。
同校には親子2代の卒業生や、兄弟姉妹の在校生も多い。
「高校に入学した生徒が、出身中学校に行って話をするせいか、公立中学校の先生のお子さんも多く入学しています」。
高校は、今年度よりコース名を「国際コース1・2(特進)」から「進学1類・2類(特進)」へと変更。
今春の入試では専願受験者が多数を占めたうえ、併願合格者の多くが入学。募集定員を大幅に越えたため、進学1類を1クラス増設。3クラスとした。
入学対策部の林部長は、今春の入試結果を「併願の生徒たちが、本校合格を手にした安心感から、ワンランク上の公立に挑戦したようです」と分析する。
山上校長は「受験生の増加に加えて、公立中学の先生方からも『特進』希望者をもっと受け入れてもらいたいと要望されていますので、募集定員を増やすことにしました」。
来年度の外部募集定員は、「進学2類」を40名増やし、「進学1類」と同数の80名とする。 |
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薬学部志望が増える
昨年度までは、中学校からの内部進学生と、外部募集の新入生とは別クラス編成だった。しかし、今年度よりシステムを一部変更した。
中学校で「文理コース」だった生徒は、高校では「進学1類」となり、他の中学校から入学した生徒たちと交じり合ってクラスを構成する。一方中学校で「特進コース」の生徒たちは1年間別クラスで学んだ後、高校2年進級時に外部募集の生徒たちと合流する。
「『特進コース』の生徒は、中学3年生で高校の学習内容に入っていますので、他の中学から入学した生徒は、1年間をかけて内部進学生の進度に追いつけるよう、カリキュラムされています」と山上校長。
7時間目の授業や夏休みの補習などで進度を速める。中には高校1年の秋時点で、内部進学生のレベルを越える生徒もいるという。
進学1類・2類ともに、2年進級時に、進路の希望に応じて理系・文系へと分かれる。 山上校長は「今後はますます理系に力を入れる必要があります」。
女子が増えた関係で、薬学部志望者が目立つようになった。また工学部を目指す男子も多いという。
なお中学校・高校ともに、本人の希望と成績により、進級時にコース変更も可能だ。
希望を胸に
同校は聖徳太子の教えに基く教育により、心身ともに調和のとれた豊かな人間形成を目指している。
毎朝、教室で般若心経を唱え、落ち着いた気分で1日が始まる。月に1度は、講堂において礼拝(らいはい)が行なわれる。
山上校長は「感謝の気持ちで『手を合わす』教育を大切にしていきたい」と語る。
情操教育の一環として芸術鑑賞会も定期的に開催されている。今年7月には、中国民族楽器オーケストラとして有名な「華夏(ファシャ)」を招いた。生徒たちは中国音楽の美しい音色に静かに聞き入った。
クラブ活動ももちろん活発だ。共学化を機に女子バドミントン部や華道部も創設された。
「今秋には、大学キャンパスに400メートルの公認トラックが完成します。本格的な陸上競技コースを本校の生徒たちも、走るのが楽しみのようです」。
大学の施設・設備を利用できるのも同校の大きなメリットだ。家庭科の調理実習は、大学の授業で使われるキッチンに立つ。先の芸術鑑賞会も、1000人収容できる大学の大講堂で催された。
「中学生のうちから大学の雰囲気に慣れ親しむことができます」。
最後に山上校長は語った。「進学実績を含めて、生徒・保護者に喜んでもらえる学校でありたい」。そのため、情報開示にも積極的だ。要望などがあれば遠慮なく指摘していただきたいとも。
「本校の特色を充分にご覧いただいた上で、希望を胸に入学していただきたい」と言葉を結んだ。
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