一番の思い出は「しまなみ海道夜間歩行」
今春、開明では6名(うち現役3名)の京都大学合格者が出た。京大農学部応用生命科学科に進学した中村優子さんは、そのうちの一人。彼女が開明中学校の「スーパー理数コース」1期生として入学したのは、平成18年のこと。
「地元の公立中学では、高校進学時に進路の選択の幅が狭いので、私立の学校説明会や授業見学会に参加して、開明に決めました」と当時を振り返る。決め手となったのは、自宅からの交通の至便さと、説明会等で見た志望者たちに気の合いそうな人が多かったこと。。
開明中学校に入学して、まず驚いたのは、授業のスピードの速さと内容の深さだった。毎朝のテスト、格段に多い宿題。油断していると、授業からおいていかれるような気がしたものの、まもなく慣れ、一学期末頃には、どんな勉強をどの程度すればよいのか、わかるようになったと言う。
開明中学校では、3カ月に2回くらいの頻度で、教科の指導と結びついた行事が実施される。中村さんの印象としては、「ハイキング的なよく歩く行事が多かったですね。楽しかったです」。
その集大成ともいえる一大イベントが「しまなみ海道夜間歩行」だ。卒業式の数日前に、夕方から翌朝まで一晩かけて卒業生全員が約43キロを歩く。中村さんにとっても中学生活で一番思い出に残る行事だったと語る。
「スタート前は憂鬱で、早々にリタイアしようと思っていたのですが、友達と話しながら歩いていると、意外と疲れを感じないもので、歩ききることができました。それまで徹夜の経験がなかったのですが、こんなしんどいことをしながら、朝まで起きていられるんだと思いました。貴重な体験でしたね」と語る中村さんが、この夜間歩行で得られたのは、つらいことも乗り切れるという自信、そして仲間との連帯感だった。
クラスメイトは同じ目標を持つ“同志”
開明高等学校では、1年の時は内部進学生と高校から入学した生徒は別のクラスになる。2年次に合流し、各生徒の希望と学力に応じて、志望大学別に4コース編成となる。中村さんは京大コースに進んだ。
高校では、中学にも増して授業の中身が濃くなり、時間数も増える。同校では、平日7時間、土曜4時間の授業とは別に、1年間に3期の特別授業がある。それを3年分合計すると公立高校1年間の授業日数に相当するほどで、予備校へ通っていない生徒のほうが圧倒的に多いとか。
授業時間の充実だけでなく、勉強する環境も整っているのが開明の特徴。生徒の要望により、日曜日に高3生の教室を開放したり、土曜の午後に教員が自習室の監督をしたりしている。また、放課後の職員室は、質問に来る生徒が引きも切らないほど。それも、開明の教員と生徒の距離の近さの証だろう。中村さんも例外ではなく、「先生には相談しやすかったですね。私は模試の結果に一喜一憂するタイプなので、落ち込んだ時は担任の先生に慰められ放しでした」。
クラスメイトは、同じ目標を持つ者同士。同志といった感じで、お互い励まし合い、教えたり教えられたりする関係だった。生涯の親友を得た生徒も多いことだろう。 |
必要なことはかなえてくれる学校
開明高等学校では、HR活動や大学見学、各界スペシャリストを招いての講演会などを通じて、将来の夢・目標を持たせ、それに向かってきちんと努力することの大切さを教えている。子どもの時から生物が好きだった中村さんは、「HR活動で、自分の興味あることについて考える機会があり、私は微生物に興味があることを自覚しました」。それが応用生命科学科を選ぶきっかけとなった。
中村さんは、開明で過ごした6年間で得られたことは多いけれど、一番の収穫は同志と一緒だったことだと言う。「私は、勉強は一人でするものだと思っていたんですけど、大学受験前の不安定な精神状態の時に周りの人に励ましてもらったりして、同志や連帯感って大事だなと思いました」。その体験は、今後の人生において、大きな糧となるはずだ。将来、大学院に進んで研究を続けるのが、今の中村さんの夢だが、同じ研究所の仲間ともきっと信頼し合える関係を築いていくに違いない。
開明の良いところについて聞くと「自分が伸びるために必要だと主張すれば、受験に関する情報にしろ、自習室等の設備にしろ、全てのことはかなえてくれることですね」という答え。後輩には、それを存分に活用してほしいという思いがあるようだ。「簡単に妥協してしまうと、この学校が与えてくれるものを使いきれないと思います。向上心を大切に、目標を高く設定して、なるべく妥協しないように頑張ってほしい」とアドバイスしてくれた。
百周年迎える2年後には、新校舎が完成する。中村さんたち先輩にとっても待ち遠しいことだろう。
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