サポート補習を細やかに
基本的学習習慣を徹底
3.11の東北地方太平洋沖地震から間もなく、百合学院の生徒約100人が募金活動で街頭に立った。普段から隣人愛の実践として、西アフリカのシエラレオネへの救済活動「10円募金」を行ってきたことが、素早い実行力となって現れた。M崎宗一校長は、「募金活動が普段から地域に根づいているせいか、好意的に受け止められ、たくさんの方々からご協力いただいた」と学院ならではのエピソードを語った。
受け継がれてきた「純潔と愛徳を基本に、隣人愛をもって奉仕する心」という校訓が生きている。生徒の自発的行動は、一朝一夕に生まれるものではなく、また、教えようとして教えられるものでもない。環境によって、それと知らないうちに育まれるものであり、そうした校風が百合学院のスクールカラーそのものである。
宗教教育から醸し出される凛とした空気はまた、生徒の生活面にも当然に影響を及ぼしている。身だしなみや振る舞いについて全体を対象に諭すことはあっても、個々の生徒に教員がエネルギーを費やすことはほとんどないとM崎校長はいう。このことは、教科学習や進学指導に教員の時間とエネルギーを割くに十分な土壌があるということである。
中学校の授業時数を見てみよう。主要3教科では、公立中学校と比べると、3年間で週当たり数・国で4時間、英語では8時間、5教科全体では22時間以上も多く、その違いは歴然だろう。
中学校では、今後さらに基本的な学習習慣をつけ、学力の定着を図るため次のような取り組みを充実させていく。
@ これまで考査前に行われていた「テスト前勉強会」(7校時目)を日常化する「自主学習の時間」の設置。
A 英・数で習熟度が十分でない生徒20〜30人に対し、教科の枠を超えた全教員で指導にあたる土曜補習の更なる充実。
B 小テストの事後指導を徹底し、日常学習の動機づけを図っていく。
中学校ではこれまでも国・英・数において習熟度別授業を行ってきたが、来年度からはさらに、先取りと学力の底上げに力を注いでいく。落ち着いた学習環境があってこそのサポートだ。
「妥協しない女子」
に応える進学指導
中等〜高等教育を受ける女子の意識は、近年特に変化が顕著である。将来の進路に対する意識は強まり、早い段階から目的を持って学習を進める傾向が見られるようになっている。これらは就職活動で苦戦を強いられることに加え、出産・育児、仕事を通して充実した生き方を選択したい意欲の表れとみられる。
いきおい、保護者の学校に対するニーズも多様化するのは当然で、全人教育的な面に期待することはもちろん、確かな学力とそれにつながる進学保証を求める動きが加速している。学院でも近年、地元の難関私大に合格しながらあえて進学せず、翌年に国公立大学に再挑戦する「妥協しない女子」が見られるようになった。
こうした状況を受け、学院では2012年度から高校のコースを「選抜特進」と「特進」の2コースに集約発展させる。これまでのスカラー、自己探究、創造表現の3コースで培ってきたノウハウを生かしつつ、学力向上に重点を置いた教育活動を展開していく。
「選抜特進」は国公立大学への進学を目指し、5教科7科目受験に細やかに対応する。選択科目別の授業では、受講する生徒が過少であっても授業を成立させていく方針。「特進」もセンター試験対応型の授業を行い、国公立、難関私大への受験に備える。「選抜特進」40名、「特進」100名としている。
また、課外講習では長期休暇時の特別講習や放課後講習をシステム化することで、より確実に学力を伸ばしていくとしている。加えて、今夏、予定されている旧校舎のリニューアルの際には、「放課後自習室」を新たに設け、校内での自学自習の場づくりを行っていく。 |
特待、優遇制度を充実
2011年度入学生より、学業成績およびスポーツの技量に秀でた生徒に対し、入学金と授業料を全額または半額免除する新しい特待制度を創設した。内部進学や姉妹で在籍する生徒に対しても優遇制度を設けている。
一例として、高校では中3の2学期における実力テストの学年平均に対する成績が160%以上の生徒に対しては、入学金と年間授業料の全額を免除。同じく150%以上の生徒には入学金と年間授業料の半額を免除するなど、以下段階的に負担額軽減措置を行う。
優遇制度では小・中学校からの内部進学者に対して、入学金の全額免除を、姉妹が小・中・高のいずれかに同時在学する場合には、その人数によって負担を軽減する(詳細は応募申請時に確認を)。
学院では生徒の目線に立って、日々の教育活動の改善に取り組んできたが、授業料等の減免制度は保護者の立場に目を向けた改善といえる。生徒と保護者の声に耳を傾け、変えるべきは変えて行く。大規模校ではない学院の機動力に期待されるところだ。
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