東大見学会・東大ゼミ実施
カリキュラムも国公立対応
温井史朗校長が取材の冒頭で触れたのは、国公立大学の合格実績だ。卒業生数は昨年より1クラス減ったが、現役生では前年(93名)とほぼ変わらず、過年度卒業生では7〜8名の伸びがあり、その中から東大合格者も出している。
今年は標準(現・文理)コースからも現役で国公立大合格者を出し、コース改編以来、全コースで国公立への道が開かれた。温井校長は「教員の意識変革の顕れで、学校全体の雰囲気が受験で結果を出すという方向に向いている」と話す。
生徒の側でもここ1〜2年、東大、京大を志望大学に選ぶ生徒が増えていることから、「東大見学会」を今年から実施する。高2を対象とし、6月に1泊2日で早稲田、慶応なども見学する予定。また、東大ゼミも6月から開始予定。これらの取り組みは、超難関国公立への進路指導体制を本格化するという学校の姿勢を生徒に示すもので、見学会、ゼミともに積極的に参加者を募っていく。
併行して、カリキュラムも今年度から国公立受験を中心に据えた内容に移行した。国公立受験では二次試験、前期、後期試験などへの多様な対策が求められていることから、昨年から見直しが始まっていた。
"桃山の変化"を話す温井校長の椅子は、一時も温まることがない。この日も、取材途中、定刻の校内放送で自らマイクの前に立った。近畿私立中高等学校の水泳競技大会で男子総合の部で2位を獲得した生徒、並びにインターハイ予選で強豪校に連勝し、ベスト4に進出したサッカー部の健闘を称えるためだ。「教員一人ひとりが生徒の活躍、頑張りを心から喜んでいることを生徒に伝えたい。結果的に校内の活気につながっている」と温井校長。
活気を生むといえば、東日本大震災の被災地支援の話をしたい。震災翌日から生徒による募金活動が始まったが、日を置かず保護者も救援物資を募り、10日後には、教員4名がその物資と千リットルの灯油を被災地に届けた。行動が活気を生み、さらなる行動へと結びついて行く桃山的連鎖。これもまた伝統の一つだろう。
アジアに目を向けた
国際教育展開へ
現在、桃山学院には、中高一貫コース、S英数コース、英数コース、文理コース、国際コースの5コースがあり、文理コースには中学校時代にクラブ活動で優秀な成績を収めた生徒で構成するアスリートクラス1クラスを含んでいる。今春からこのアスリートクラスを除く全コースで共学となった。
国際コースには、短期留学を行う「国際Aクラス」と1年間の長期留学を行う「国際Bクラス」がある。これまで留学先はカナダを選んできたが、今後アジアに目を向けた新たな国際教育展開の動きを見せている。
もともと生徒の募金活動が始まりで、「School by School(SBS) Project」(学校による学校建設プロジェクト)を発足させたのが10年前。これまでにフィリピンにデイケアーセンターを建設している。このプロジェクトをきっかけに今後、国際教育の場をアジアも視野に入れて、より広い展開が検討されているところだ。
「自主自律の精神」は桃山学院の建学の精神。世界の子どもたちのために…と始まった生徒による募金活動が、一つのプロジェクトを成し遂げた意味は大きい。創立者の精神は受け継がれ、生徒自身の手によって新たな学びの方向性を生んだのである。
自主自律の精神はまた、教員の中にも受け継がれている。これはと思う発案があれば、すぐさま校長に提案、ゴーサインが出れば新たな試みは始動する。最近では、携帯電話を利用した古典の勉強法が提案され、一定の条件のもと試行が始まっている。良いと思ったことを提案実行でき、「やってください」と試行錯誤を見守る土壌。この二つが動き続ける桃山の原動力になっている。 |
好調な募集で
合格ライン上昇
年々、中学校、高校に進学する子どもの数が減少する中、桃山学院高等学校の志願者数は2011年春で2,205名。専願者だけでも439名を数える。2011年度から大阪府立高校に文理学科が設置されたが、その併願者が多く受験しており、いわゆる歩留まり率は15%程度。受験者が増えれば、合格ラインが上がるのは当然で、毎年の入試動向に注目が必要な学校の一つだ
一方、中学校でも定員120名に対し534名が志願、今年も人気ぶりをアピールする結果となった。温井校長は「中学校では協調性、継続性、責任感などを育むための体験学習が多く、その大切さを理解した保護者に選んでいただいている」といい、加えて「広報にそれほど力を入れていないが、本校を卒業した先輩や兄弟による口コミで受験していただいているようだ」と人気は教育内容と口コミによるところが大きいと分析した。
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