授業は習熟度別で行われる。記者が見学した3年生「英語発展クラス」は、成績上位者で編成されたクラスだ。生徒は17名。始業チャイムが終わるや否や、英語科主任の宿口信子先生がホワイトボードに次々と単語(日本語)を映し出す。まずはフラッシュカード。「cave」「mystery」……生徒は声を揃えて英訳を唱和していく。
教室前面に設置されているのは、黒板ではなく専用のホワイトボード。ここにプロジェクターから教科書の内容が投影される。ボードを専用ペンでタッチすると、音声が流れる。上部に取り付けられたユニットが位置情報を読み取り、該当箇所の音声を即時に再生するという仕組みだ。基本操作はすべてパソコンである。
フラッシュカードが終わると、息つく暇もなくリスニング。スピーカーからネィティブの読む長文が流れてくる。じっと耳を傾ける生徒たち。続いて設問。各自が答えをノートに筆記。この間、先生は要点を素早くボードに書き出していく。かなりのスピードだ。ここまでで、まだ10分しか経っていない。
「とにかく生徒が退屈しないよう、スピード感を意識しています。耳で聞いて口でしゃべって手で書いて、全身をフルに使う授業を心がけています。デジタル教科書は、それを可能にしてくれる非常に便利なツールです」と宿口先生は、授業作りのコンセプトを語る。
これまでの紙の教科書の場合、板書の時間がどうしても必要となる。それがロスタイムとなって、授業の緊張感を削ぐことも少なくない。しかし、デジタル教科書は、クリックひとつで教材を切り替えられ、板書もそのままデータとして保存できる。削除するのも一瞬だ。この即時性が心地よいリズムを生み出し、集中力を醸し出している。
「デジタルになって生徒が下を向かなくなりました。常に前方を向いているので、集中力も高まりましたし、姿勢そのものが変わりましたね」
この日は、間近に迫った英検対策として問題集にも取り組んだ。金蘭会中学では、すべての生徒が英検を受験する。指名された生徒が次々と答えを発表。これもかなりなスピードだ。この他、生徒がペアになっての「早読み大会」や「ディレクション読み」も取り入れている。前者は、制限時間内に何行読めるかを生徒同士で競争する。「一度、早読みをすれば、次からは普通のスピーキングがゆっくり感じられるようになるんです」という宿口先生。徹底的に音読することで、身体を英語に慣れさせるのが目的である。
そして、英単語の和訳。ボードに次々と現れる単語を瞬時に和訳していく。最後に、手作りの要点プリントと単語カードが配られる。生徒はすぐさま、自分のノートに貼り付け、復習の準備も授業中に完了。
50分間の授業に、単語暗唱、筆記、リスニング、スピーキングなどさまざまな英語学習の手法が盛り込まれている。授業後、生徒に感想を聞くと、みんな一様に「疲れた!」と笑顔で答えてくれた。これだけのカリキュラムをこなせば、当然だろう。デジタルツールを活用することで、より密度の高い授業が可能な時代になったのだ、と実感した。 |