響き続ける槌音が
受験者数となって表れる
5年前に高校を共学化し、その2年後には中学校も共学化。さらに、2年後には郊外型の学習宿泊施設「多聞尚学館」を開館し、関西大学と提携した浪速。立て続けに断行される改革が、「次は何を」と外部の目をひきつけている。
その期待に応えるかのように、今年は大阪府堺市内に「浪速ふくろうスタジアム」を誕生させた。4500坪の広大なスタジアムは野球、サッカー、ラグビー、アメリカンフットボールのフルコートがとれ、ナイター設備も有する本格スタジアム。「これまでは、中学校と高校の5つのクラブが交代でグランドを使っていた。それはそれで教育的意義もあったが、今後は存分に練習できる環境で力を発揮してもらいたい」と、入試広報室室長の岡田成二先生は部活動のさらなる活性化に期するところが大きいようだ。
これに伴い、来年度入試から硬式野球部で特待生制度を設けることになった。スタジアムは堺市南部のリトルリーグが多い地域にあって、層の厚い地域から優秀な選手と巡り合えることにも期待がかかる。
さらに、来年1月には「新武道館」が完成予定だ。浪速は元来、文武両道を伝統としてきた学校だけあって、柔道、剣道、空手道、弓道など神道とゆかりの深い武道部が活躍している。そうした活動をいっそう支援する目的で武道館の建設が進められているが、実は建設目的はもう一つある。
新武道館の完成を待って、今ある武道館を撤去し、その場所を種地として、段階的に新校舎に建て替えようというのである。一つの改革が次なる改革へのステップというわけだ。
新武道館は武道場のほかに、ダンスの練習にも使える多目的室、雅楽や茶道、また作法学習の場として活用できる和室を備えている。設備機能を十二分に活かそうと、近く茶道部を発足させる予定で、現在、顧問候補の教諭が茶道の稽古に励んでいるという。
部活ではほかに吹奏楽部も活気づいている。顧問以外に外部指導者を招請し、部員が使う楽器は貸与ではなく付与されている。そんな支援が奏功してか、地域での定期演奏会に新たな活躍の場を獲得し、学校の催事には欠かすことのできない地位を占めるまでになった。
それにしても新たな展開が続く浪速の原動力とはいったい何か。そんな質問を投げかけると、岡田室長は木村智彦校長(理事長兼務)の名を挙げた。木村校長は常々「槌音のしない社会はだめだ。それは学校にも言えること」と口にしているという。槌音は文字通り、教育理念達成のための施設建設の音であり、システムをより良き方向に改善するのにふるわれる槌の音といえるだろう。
そして、その音が広く響き渡り、今年度、高校入試の受験者数は2500名を超える数字をはじき出している。
コースを細分化し
月スペ、土曜講座を開始
学習面での改革としては、昨年から高校に「インテンシブ文科コース」が開設されている。同コースは国公立大学を目指すT類の中の文系志望者、難関私大を目指すU類の中の文系志望者の中から、高2進級時に選抜された生徒で構成される。最難関といわれる私立大学文系学部を目指すコースだ。
インテンシブ文科を含め、高校では次の各コースが設置されている。@理数科SS(難関国公立理系指向)、A普通科T類スーパー理数(国公立または難関私大理系指向)、B同T類スーパー文科(国公立又は難関私大文系指向)、C同インテンシブ文科(前述)、D同U類理数(難関私大理系指向)、E同U類文科(難関私大文系指向)、F同V類(部活と両立しながら現役合格目指す)。 |
これらのコース共通で、今年から「月曜スペシャル」というバリエーション講座も始まった。通称「月スぺ」は、全教員が月曜日の放課後に生徒と直接向き合えるなんらかの講座を設けるという新たな取り組み。岡田室長は「実践力練成講座、小テストの解説、読書会、クラブの大会前指導など、どんな形にせよ生徒としっかり向き合う時間を月曜日に設けるということを決めた」と、月スぺ導入の経緯を話した。
また、土曜日はクラスの枠を取り払い、100分授業を2コマとし、英、国、数、体育、芸術のうちから選択し、授業を受けられる「土曜講座」を開講している。さらに高2からは選択教科に理、社も加わる。
中学校では今年からスタートした「関大コース」に43名が入学した。同コースは偏差値50程度の生徒が受験するケースが多く、競合校が多い中での健闘といえるだろう。岡田室長は「関大コースと名づけているが、センター試験対応型のカリキュラムを組んでいるので、大阪府大、大阪市大を狙えるところまで実力をつけていきたい」と、さらなる高みを目指して進路を関西大学に限定しないという含みを持たせた。
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