注視率100%の授業目指し
教科指導研修を強化
毎年4月1日、金光八尾中学校・高等学校では学校経営方針が発表される。「人はみな神の氏子である」という金光教の建学の精神を確認し、日々の教育実践で目指すもの、生徒募集上の目標、教職員の意識変革など学校全体で方針の共有化を図るためである。その中で、今年度のポイントとなる項目について本荘忠彦校長に聞いた。
まず、高校のコース制が改編される。今年は中学校の「特進T・特進Uコース」の導入から3年目にあたり、来春、同コース1期生が高校進学の年を迎える。これを受け、来年度の高校コース改編について準備を進めている。これまで、中学校の現コース導入以前の生徒は、高校進学後に外部生と混合する形で「特進」、「普通」の各コースに在籍していた。
それを来年度からは6年一貫のメリットを明確化するため、高校進学後も「特進Tコースの生徒はそのまま高校3年まで進級する。一方で、外部からの「S特進」コース(40名)を新設し、併せて80名で国公立大学進学を目指すというもの。同時に従来の「特進」コースと、「普通」コースを改称した「総合進学」コースは国公立大や難関私大への進学を目指していく。
次に、本荘校長が強調した経営方針はスリーパワーの強化である。すなわち、教科指導「力」、生徒指導「力」、人間教師「力」の3つの「力」を強化するため、いかに実践してきたか、また、今後どう進めるかについて説明した。
同校では教科指導力の向上を図るため、これまでも校内研修を奨励してきたところだ。教科ごとに教員が相互に授業参観を行い、意見を述べ合って、より分かる授業、ひきつける授業とはどういうものか、研究を行ってきた。「昨年は若手の育成が中心でしたが、今年はベテランの先生にも新しい発想をとり入れていく意味で、全教員間で授業公開をお願いしている」と本荘校長。また、年1回以上は外部研修にも参加を義務づける方針だ。教師も生徒も「注視率100%の授業」をスローガンに授業重視の志向を鮮明に打ち出している。
系統的な中高の一貫指導
が支える学力伸長
進路指導上では、大学入試問題の分析と共有化に力を入れていくことが確認されている。意外と思われる向きもあるかもしれないが、共有化には中学校教員も含まれている。京大、阪大といった入試問題に中学校教員が目を通す、その理由を本荘校長は次のように語った。
「文章題や二次試験の論文形式の問題を見ていると、中学校時代からいかに思考力を高めていく授業が重要かということを実感する。その意識を持っていただくため」と。つまり、全校一丸となって中学1年段階から難関大合格への体制を整えようというのだ。
同校ではもともと中高の交流が活発で、校務分掌でも中学校と高校で隔たりなく、主な行事も一緒に行われている。高3生を受け持っていた教員が、翌年には中1生の担任となることも珍しくない。そのため「大学入試を直前まで見届けてきた教員が、中学生に大学入試の仕組みや先輩の頑張りをダイレクトに伝えられる」と玉里章一・中学校教頭は、中高の系統的一貫指導のメリットを強調した。
次に話は募集状況に移った。今春の中学入試では定員70名に対し、93名が入学、高校では240名の定員に対し232名が専願受験、併願戻り率も15%を超え2クラス増のクラス編成となった。「本校の特徴として、それほど高くない学力で入学してきた生徒が大きく伸びて卒業していくということがある。今年、阪大に合格した生徒も入学時は『普通』コースに在籍していた。教員の指導力の一つの証明」と本荘校長が話すと、岡田親彦・高等学校教頭は、「潜在的に伸びる要素を持った子どもたちが入学してくる。その原石をいかに磨くかがわれわれの役目」と応じた。
原石を磨くには短・中期的な目標が必要だ。4月、その年の経営方針が発表されると、教職員はそれぞれの目標を数値化して会議の席上で公表するのが恒例となっている。「教育に数値はなじまないという声を聞くが、それがあってこそ団結できる。目標は京大、阪大、神大で20名。国公立全体では80名」と本荘校長は強気だ。
また、目標達成にもっとも必要な生徒の意欲を引き出すため、今年から高2生全員が関西圏の難関大学を訪れる「大学探訪」という試みが始まる。全員が大学の施設を見学したり体験授業に参加するなどして、進学後の学びや学生生活をイメージすることはモチベーションアップにつながるとの考えだ。
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