進学校へ第一歩
「特進」「進学」に注目
1924年、イカリソースの創業者である木村幸次郎氏によって、「奉仕のこころ」を持った産業界で活躍できる女性の育成を目的とし創立された前身の淀之水高等学校。淀之水高等学校を知る人は多いが、50年前まで併設中学校があったことを知る人は少ないだろう。
同校に50年前、新任教員として着任した鶴巻榮二校長は、「当時はまだ中学校がありました。それが休校し、以後そのまま募集を停止していましたので、昨年の中学校開校は本校にとって長年の念願だったのです」と語る。続けて、近隣に私立中学校が1校もないこと、周辺の環境が工場地帯から住宅地へと変わってきたことなどにより中学校開校の機運が高まり、開校に至ったという。
50年前とは学習環境もニーズも変化したことから、中学校は共学と決め、校名も変更した。いずれ中学校を終了した生徒は、昇陽高等学校へ進学するため、高校の共学化は必然であり、今春から「特進」(定員30名)と「進学」(同30名)の2コースで共学化に踏み切った。
「特進」は少人数制で、関関同立をはじめとする難関私大への進学を目指すコース。全学年は毎日7時間目に補習授業が行われるほか、8時間目と土曜日は予備校講師による受験対策としての補習(希望制)を実施する。
「進学」は得意科目を伸ばし、4年制大学への進学を目指すコース。毎日7時間目に補習授業が行われる。特に、英語の読解力と会話力養成に重点を置いた授業が特徴。
両コースとも設置早々注目を集め、2コース併せて55名の定員に対し、今春は150名程度の志願者が集まり、70名が入学している。入学者は共学化1年目ということもあり、若干男子が少なめだが、「校内は活性化し、生徒指導上も何ら問題なくスムーズに滑り出した」と鶴巻校長。
目的持って学ぶ福祉科
進学率6割に
前述の2コースのほかに、普通科には「ビジネス」、「パティシエ」コースが併設されている。「ビジネス」では進学や就職に必要な基礎学力を徹底して身につけ、情報処理、英検、漢検などの資格取得を奨励している。とりわけ情報処理検定で90%以上の合格者を保持している点は注目に値するだろう。
「パティシエ」コースは、普通科と製菓技術習得のためのカリキュラムを併せもっている。卒業後、さらに専門的な技術を習得するため、進学や留学する生徒のためのサポート体制も整っている。菓子の本場フランスを修学旅行先に選び、フランス語の授業を行うなど生徒の意欲を引き出すカリキュラムが採用されている。
さて、昇陽高等学校の教育で大きな柱となっているのが、福祉科の「福祉」、「看護福祉」、「保育福祉」の3コースだ。そのうち「福祉」コースでは、生徒のほとんどが介護福祉士国家資格の取得を目指している。国家試験では厚生労働省が定めた1820時間(うち実習450時間)もの授業の受講が受験資格となっているが、大阪府内の私学で唯一、この条件をクリアしているのが同校の「福祉」コースだ。介護施設などでの実習機会も豊富で、実習先から是非と就職を請われる優秀な生徒もいるというが、より専門的に福祉を学ぶため、大学に進学する生徒は6割に達している。ケアマネージャーに就いている卒業生も多い。
「看護福祉」でも病院実習の機会は多く、看護系大学や専門学校への見学も豊富に行える。進学後、2〜4年後に国家試験を受け看護師を目指す生徒がほとんどだが、在学中にホームヘルパー2級、福祉住環境コディネーターなどの資格取得も可能となっている。
「保育福祉」では、入学までピアノ経験がまったくなかった生徒に対しても専門講師による丁寧な指導で、保育士への道を開いているのが特徴だ。保育系大学や専門学校に進学する生徒も多く、大学の模擬授業を体験するプログラムも準備されている。
「専門コースで学び、適性ある分野により関心を持ち、目的意識を持って進学する生徒が増えてほしい」と鶴巻校長。同時に、「難関大学への進学とともに多様な分野を目指し進学する「広い意味での進学校」を目指すとも。 |