男女共学化がもたらした活気が
さらに合格実績を引き上げる
「関西屈指」から「日本屈指の進学校」へ。こんなフレーズがふさわしいほど近年目覚ましい成長を遂げている洛南高校、附属中学校。2009年度は国公立医学部の合格者数76名という結果を残し、国公立医学部への現役合格者数において全国第1位に進出。洛南の名を全国に轟かせた。合格実績の全容に目を向けると、東大29、京大105、阪大53を始め、国公立大への合格数は376名に達する。2010年度はやや苦戦したものの、それでも東大16、京大83、阪大30。国公立大への合格者総数308名と、圧倒的な数字に驚かされる。医学部では最難関校のひとつ防衛医科大学に14名合格という実績も注目に値する。
また、2010年度は変化もあった。高校からの入学者の健闘ぶりだ。洛南高校には、附属中学からの最難関校を目指す内部V類と高校からの外部V類、さらに高校からの入学者を対象としたT類の2つのコースが設置されている。これまで最難関大学の合格は、V類の生徒がほぼ独占する状態だったが、2010年度は様相が変わった。高校からの入学者の中から、京大を始めとする最難関校への現役合格者が増加したのである。要因はどうやら男女共学化が関わっているようだ。
長らく男子校であった同校が共学化に踏み切ったのは2006年。それから4年経ち、1
期生の女子生徒も高校2年に進級した。付属中学への女子入学者は毎年50名までである。2010年度は募集定員の総数を200名から240名に拡大したが、女子の合格者は前年より減って53名となった。女子にとって洛南は「関西屈指の超難関中学」になっていると言っても過言ではない。ゆえに狭き門をくぐり抜けてくる女子には努力家が多く、勤勉で堅実なタイプの生徒が多いという。そういった女子生徒のモチベーションの高さが、良い意味で男子生徒を奮起させているのではないか、そう柴垣弘厳校長は分析する。
2年間単位で確実にステップアップを遂げる
成長力養成プログラム
近年、公立校においても採用校が拡大している中高一貫教育。ますます注目を集める教育制度だ。同校の場合は、6年間を2年ごとに3つのステップに区切り、それぞれに目標を設定している。まず中学1、2年は盤石な土台を作る期間。予習・復習の習慣を徹底してつけさせ、英・数・国の主要教科は週に1度の小テストを実施。進度を細かくチェックし、学習の基礎をがっちりと作り上げる。その上で、中2までに中学課程を終了。中3からは高校課程を先取り学習する。この2年間は、学習合宿を行うなど、大学入試への学力を完成させる。そして高校2年時から文系・理系の選択科目を導入。授業以外にも目指す進路に応じた勉強会を開催し、進学塾や予備校などに通わずとも、最難関校へトライできる学力を作り上げていく。
その秘訣を知ろうと全国から教育関係者の見学が後を絶たない。だが、柴垣校長は進学校としてのみ脚光を浴びることを決して歓迎していない。「今は進学校という側面ばかりが取り上げられますが、本校は本来そういう学校ではないのです。目指しているのは、あくまでも学校らしい学校です」と静かに語る。 |
校風の一端が垣間見えるのが朝の登校時間だ。「おはようございます!」。校門前に
立った生徒たちが、登校してくる生徒一人ひとりに、元気よく声をかける。同校が実践している週番制の朝の挨拶だ。校内へ入ると、ゴミはひとつも落ちてない。磨き込まれた廊下。掃除の行き届いた教室。そこかしこに元気な声が飛び交っている。清々しくもどこか懐かしい学び舎の光景がひろがっている。また、週に一度の身装検査も長年の伝統である。服装の乱れには厳しくチェックが入る。当然、茶髪などは一切禁止。生徒だけでなく教師も男性は白のワイシャツにネクタイが原則とされている。
柴垣校長が常日頃、生徒に言い聞かせているのは次の3点である。「挨拶をしなさい」「座席を立ったときは椅子を入れなさい」そして「履物は脱いだら揃えなさい」。単純といえば単純だが、こういった作法の基本を体得させていくことこそが教育の根本である。「人間としての土台を築くことができなければ、いくら優秀な成績を残そうとも、真の教育とは言えないです」
2010/5 塾ジャーナルより一部抜粋
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