「教育理念」の具体的実践は
教員の意識改革から
3年前より始められた「中長期プロジェクト」の委員長でもあった佐々木実新校長は、特に「生徒教育(教育理念)」・「教育力(研修)」・「生徒募集(財政)」を3本柱として重点を置いている。
「生徒教育」面では、「進学・学習面」にシフトした改革T期から、U期においては総合力を有する人材育成を図りたいとする。
具体的には、「追手門・進進プロジェクト」(進学+進路)を立ち上げ、進学・学習面は勿論重視しながら、進路学習面で中高一貫の6年間・高校3年間の2種類のシラバスを作成し、単に大学受験に対してのモチベーションに止まらず、思春期・青年期の時期に「自分の生き方のベースとなる進路観(価値観)」の形成を主眼にしている。
つまり、学院理念に基づく人材育成を目標に、「進進プロジェクト」を基軸に教育活動を展開することが改革U期の特徴である。
また、「教育力」は教員の学びへの姿勢、意欲にかかっている。教員自身の学びへの意欲が、生徒の意欲を喚起する。教員文化が生徒の育成の鍵となるのである。そして、教員の人間力向上のために、さらに「研修」を重視し、研修を「制度」として導入し、確立する準備を行っている。現在は、教員研修として、講師の先生を招き、カウンセリングアプローチの講習を6回シリーズで企画している。
一方で「財政面」では、これまでの生徒募集の数値を追い求め、振り回されるかのような感があった活動から、学院理念を基軸に据えた「ブレない教育」を目指し、自分たちの教育を世に問うという気概だけは持ちたいと考えている。
「10年前現代の社会状況がわからなかったように、これから20年後30年後のさらに不透明で不確実な社会で生活していくために、この思春期・青年期という大切な時期に、生徒たちにどのような力を付ければよいのか。教育は常に葛藤のなかにあるといえます。しかし、その思いは生徒・保護者と同じはずです。生徒も保護者も先生も同時代を生きる人として、共有できる教育の在り方を追求していきます。」
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「自己肯定感」をキーワードに
3つのサイクル学習
重点項目の一つ「生徒教育」の「進学・学習」面の取り組みである3つの「サイクル学習」。これは追手門中学校独自の学習システムである。
佐々木校長は、学習指導のキーワードに「自己肯定感」をおいて、3つの「サイクル学習」を実践していると話す。これも教育理念の具体的実践の一つであり、教員間の「共通言語(教育理念)」→「共通理解」→「共通活動」が生徒に浸透していけば、学習を通して生徒の成長につながる。
3つの「サイクル学習」とは「授業サイクル」・「週サイクル」・「考査サイクル」のこと。
「授業サイクル」とは「授業第一」としたサイクル。予習→授業→復習で着実な学習の定着を導く。
「週サイクル」では、英数国を中心に1週間分の学習した内容をプリントなどで週末課題として示し、週初めに提出・確認テストを実施。合格点は高く設定し、合格した生徒は、チューターの常駐する自主学習室で学び、不合格だった生徒は、ステップアップ講習で「わかるまでいっしょに」と学ぶことになる。
「考査サイクル」は、年5回行われる定期考査をそれぞれのゴールとせずに、テスト返却時に詳しい説明をした後、定期考査と同じ範囲でミニ考査を行い、まだ不十分な生徒はステップアップ講習でフォローして、徹底的に理解に導くのである。
「特に、週サイクル学習では、1週間で学習範囲もまだ狭く、学習のポイントや方法もわかりやすいため、学習しやすいことが特色です。生徒も努力したその成果で、達成感を得ることができます。こうした小さな成功体験の積み重ねが自己肯定感につながり、また周囲から認められることで、自尊感情が育まれます。入学前から生徒は学習面では多かれ少なかれ傷ついている状態ですから、こうした教育理念を基軸に据えた指導がたいせつになるのです。」
実際、このサイクル学習を導入してから、外部模試における生徒の学習偏差値は急カーブを描いた右肩上がりを続けている。
また、クラス分けも「自己肯定感」をキーワードにしている以上、少なくとも中学課程では、コースを一本化し、学力で差異化せず平準化のクラスで行いたいとしている。
「考える力こそ生きる力」だとする同校では、今後「考える力を育むプログラム」つくりを始める。これが「追手門メソッド」にあたるものになる。
豊かな「知識」、豊かな「体験」、そして考える「方法」があって、「考える力」となりえるのである。
時代状況を見据えた教育。生徒、保護者とともに葛藤のなかから教育活動を展開する。
こうした姿勢を大切にしながら追手門学院中高は次の教育へと進み始めている。
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