学部横断的に培われる国際感覚と視野
「多様性」を機軸に拡がる学びと人間性
グローバリゼーションはあらゆる学問領域に国際的な観点を求めている。この流れを1988年にいち早く洞察し、1988年に国際関係学部を開設した立命館大学は、語学やリベラルアーツの体得にとどまらず、専門性をツールに国際社会で行動できる人材の育成に傾注してきた。現在では全学部で、学生自ら国際性を加味した学びを追究できるよう仕組みが整えられている。併せて、正課がもたらす学問的成長に加え、伝統ともいえる学生相互の交流、出身地の多様性が魅力ある立命人を育む土壌をなしている。
先駆者ならではの国際関係学部
各専門領域のグローバルリーダーを育成
グローバル化を予期させた東西冷戦の終結期、立命館大学は改革の一環として国際関係学部を開設した。その後、予想をはるかに超えるスピードでグローバル化は進み、多くの大学で「国際」を冠とする学部が開設されてきた。が、立命館のグローバルリーダーを育成する環境には、先駆者としての経験と試行錯誤によって得られた厳選されたノウハウ、プログラムが存在している。
そのうちのひとつ、学生が国際交渉を疑似体験するグローバル・シミュレーション・ゲームミング(GSG)では、地球温暖化、フェアトレード、人権問題、地域紛争など地球規模の問題の本質を学びながら解決のための仕組みづくりを考えるプログラムだ。各国首脳やNGO、マスコミといった役割を学生が演じることで、問題に対する意識を深め交渉技術をつけていく取り組みで、同学部の「国際秩序平和」、「国際協力開発」、「国際文化理解」、「国際行政」の4コース全体で各コースで2回生時にから実践されている。
3回生になると、研究成果を企業や行政機関の人事担当者にプレゼンテーションするオープンゼミナールにも参加する。学生にとってはゼミナールのゲストから得られる講評や就職情報を収集できることも大きなメリット。国際機関や企業での実務を体験できるインターンシップ制度では、学生ならではの感性で受け入れ先企業に提案を行うなど学びを定着させる取り組みも実践されている。
学部開設から今日までの20余年間、立命館大学は専門性と国際性を身に付ける国際インスティテュート(高度国際教養教育)を導入、さらに立命館アジア太平洋大学(APU)開学と、国際化にウエエイートをおいた改革を着実に実現させてきた。この流れは学祖である西園寺公望が掲げた自由主義と国際主義を今に受け継ぐものであることはいうまでもない。
国際化の進化。それは海外ネットワークの充実にも見ることができる。世界のあらゆる地域に提携大学を持つ立命館では、留学制度を通じ年間約1500名の学生がフィールドワークを体験して海外で学んでいる。留学先での学費は免除され、希望する学生のほとんどが数ある奨学金制度の中から何らかの奨学金を受けていることは特筆に値する。
さらに国際関係学部から大学院への進学を前提とする学生のうち、成績優秀者は3年間で学部を卒業し、博士課程前期課程に進むことが可能で、実質5年で修士号を取得する道も開かれるなどグローバルリーダー育成のための条件整備はきめ細かい。
今日、国際関係学部に限らず、あらゆる専門領域において国際的観点に立脚した学びが求められている。立命館では来春開設予定のスポーツ健康科学部を含めた13の学部で、それぞれが国際社会で確かなポジショニングを得、世界のさまざまな場面で研究成果が還元される学びが進行中だ。
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立命館の伝統
多様性と学生相互支援
大学生活は正課で学ぶことと同等に正課外で得られる成長もまた見過ごすことはできない。そう話すのは文学部教授で、学校法人立命館の副総長を務める本郷真紹博士文学部教授。キャンパスでの先輩、同輩、後輩の触れ合いはもとより、ボランティア活動、留学体験などから得られる人間的成長ほど得がたいものはないとも語る。
その点、立命館大学には心強い後輩支援体制がある。新入生が戸惑いがちな時間割の登録から、テストやレポートに関する学習支援、生活面でのサポートをしてくれるオリターという先輩たち。といってもこれは、意図的につくられた制度ではなく、いわば先輩が後輩の面倒を見るという大学の伝統の中で自然発生的に生まれたサポート体制である。
新入生が戸惑いがちな時間割の登録から、テストやレポートに関する学習支援、生活面でのサポートをしてくれるオリター。大学の学生支援制度としてスタッフを務める学生たちも多数いる。成績優秀な上回生が授業で援助をしてくれるES(教育サポーター)エデュケーショナル・スタッフ。大学院生が実験の手順を教えたり資料の検索レポートや論文の作成などをサポートしてくれるティーチング・アシスタントが代表的。他にもさまざまな学生スタッフにより「学びあい」のしくみがある。
こうした学生によって生み出された担われている支援体制が、授業や大学のさまざまな学生支援制度などとコラボレートすることで、立命館独特の理想的な学びのステージを実現させている。では、学生相互の融和な関係性はどこからもたらされたものか。それは在籍する学生のうち約半数以上が関西圏以外の出身であること、選抜方法の多様化により個性豊かなキャラクターを持った学生が入学してくることと関係していると、本郷副総長は説明する。3万3千人のアイデンティティが相互に刺激しあい、融合した結果、立命館ならではの魅力を生んでいるようだ。
融合の魅力はまた、びわこ・くさつキャンパス(BKC)のコンセプトにも及んでいる。文理を融合させた学びの中に新たな学問分野を開拓していこうと設けられたキャンパスでは、一昨年開設された生命科学部、来春開設予定のスポーツ健康科学部が、その広大なキャンパスの利点を活かし複合化された学びの体系を構築しているのだ。
インタビューの最後、本郷副総長は今後も立命館の特色ある学びの場を大切に育てるとともに、社会的ニーズと学生の志向性にあった学びのシステムを築いていきたいと締めくくった。
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