総合進学コース(共学)を設置
近鉄南大阪線「高見ノ里」駅から学園通りを南へ7分。広大な敷地に立つモダンな校舎が視界に入ってくる。高機能な設備に心のゆとりを生みだす設計が生徒の人気を集めている。
校内では就任2年目の木清宏校長が迎えてくれた。高校時代を同校で過ごし、教諭となって再び古巣へ帰ってきた木校長は、いわば同校の生き字引き的存在。高校球児として甲子園出場の経験をもち、教員としてはもちろん、30年以上、野球部の指導にも携わってきた。
それゆえに学校全体を見渡す校長の目、生徒一人ひとりを細やかに見つめる教諭の目、部活の厳しさと喜びを感じ取って来た指導者の目、そして子を持つ親としての目と教育的複眼の持ち主である。学校教育、家庭教育、社会教育的側面など多面的にとらえた指導の浸透が期待されるところだ。
そんな学校長のもと、高等学校、中等部ともに来年度に向けた新たな改革の動きが見え始めている。高等学校ではこれまで「数英」「国英」「国際」「総合」の4コースを設けてきたが、2010年度から「国際」と男子単学だった「総合」を統合し「総合進学」として共学化する。コース名から「国際」の名は消えるものの、これまでに培われた国際感覚を磨く取り組みや短期留学のノウハウを今後も新コースで生かしてゆく。
今回のコース改編で、9年前に一部コースの共学化を実施して以来、全てのコースで共学化することになる。「全学共学化を視野に入れ、校舎を新築・移転したのは8年前。それ以来、女子生徒の指導にも研鑽を重ねるとともに、計画的に女性教員を採用してきた」と説明する木校長。
おりしも系列の阪南大学ではフライトアテンダントや航空会社のグランドスタッフといった人気の職業に直結すべく国際観光学部が創設され、併せて国際コミュニケーション学部では英語教員免許取得(申請中9に優位な語学センター機能を充実させているところである。総合進学コースの誕生には生徒が様々な角度からそれまで気付かなかった自らの才能を発見し、進路を開拓していってほしいとの願いが込められているようだ。
多感な6年間を見守る目
開設から8年目を迎えた中等部では昨春、その第一期生が6年間の一貫教育を終え、それぞれの進路へと巣立っていった。第二期生の担任として生徒を見守ってきた近藤英俊教頭は、卒業式ではひときわ深い感慨をもったという。「中等部の3年間は高校のそれよりもはるかに大きな成長に寄り添うことになる。それだけに教師として重い責任を感じた」と話す。
高校での経験が圧倒的に長かった近藤教頭。「最初は触るのもこわいくらいの小さな生徒が、自分の進路を決定し卒業していくころには、幼かった口ぶりも相手の思いを推しはかりながら会話できるまでに成長した」と話す口調にやはり教諭の目、親の目が垣間見える。そんな成長過程を見届けられるのも中高校が同じ敷地内にあればこそ。最もデリケートで大きく成長する発達期にゆとりある校地、複眼的な視点、効果的な学習システムがいかに大切かをあらためて感じさせられる。
さて、これまでの中等部からの入学者は高校進学後も原則「一貫」コースに籍を置いてきた。ただし、来年度の入学者から高校進学時には、今後新設が予定されている各コースを選択することになる。中等部でしっかり学習の基礎を固め、その後の3年間の学び方をより柔軟に選びとれるようにするもので、高校進学時に進路を今一度見つめ直す機会を設けるようにしている。 |
実力アップが励みになる仕組み
学習環境を整える観点から大切なものの一つにモチベーションの維持がある。常に新鮮な気持ちで意欲を持ち続けることが、将来の目標を達成し、進路を切り拓くカギといっても過言ではない。そのために昨年1年かけて学校改革の方向を決定。現在それに基づき、若手を中心とした7名が「進歩を実感できる学習プログラム」の構築に向け日々専心している。「生徒のヤル気は自分が努力したことが報われたとき、つまり進歩を実感したときにグッと出る」と話す近藤教頭。そのために、まずはこれまでコース別に実施されてきた実力テストを全コース共通の問題で実施することにより、校内での自分のポジションを客観的に把握させ、次の目標を見つけさせる。さらに短いスパンでは、単元別の習熟度を点検しフォローアップする仕組みづくりも検討中。また、別の部署では各種検定の資格取得においても、精選し実力アップが励みになるような仕組みを作っていこうとしている。
同校の場合、こうした改革改善に向けた動きは“生徒の今”を注意深く読み取ることによって生まれている。トップダウンではなく現場の教諭の思いや生徒の声を出発点としているだけに、日頃から教諭と生徒のコミュニケーションに力を注いでいることがうかがい知れるのである。
大学現役進学率86.3%という数字は、こうした地道な改革改善意識の中から積み上げられてきたものであることを70年の歴史とともに感じさせる学校である。
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