学内外で多彩なプログラム
「本校でアピールしたいのは子どもたちの笑顔です」と入試広報室・副室長の北岡浩先生。
夏休み目前の7月14日、滝川第二中学校では、生徒たちの笑顔が満開になった。この日から4日間、体験学習がメインの「Special Wednesdayワイド」が実施されるからだ。
「心身ともに逞しい人材育成」をめざす同校では、多彩な学習プログラムを取り入れ、実践力を養っている。「Special Wednesday(SW)」とは、毎週水曜日に芸術鑑賞や農業体験などのさまざまな体験学習を集中して実施していることから名付けられた。その他の曜日は7時限目まで教科の学習が詰まっているため、水曜日は生徒たちにとってまさに「特別」に楽しい日である。
SWワイド初日のこの日は、学内外で学年ごとの催しが行われた。
中学3年生とそのお母さん方は、神戸西神オリエンタルホテルにいた。10月に予定されているカナダ研修旅行の説明会である。会場では親子が並んで座りパンフレットを一緒に見ながら、旅行会社の担当者が旅行日程や手続きについて説明するのを聞いた。その後、お母さん方はビュッフェでランチ。生徒たちは、マナー研修である。ホテルの廊下などパブリックスペースでのマナーについて学んだ後、生徒たちも実習を兼ねてビュッフェでバイキングを楽しんだ。
期待を胸に、調べもの学習
同じころ、1年生と2年生は学内でそれぞれの課題に取り組んでいた。
1年生は、海の自然研修合宿の事前学習。8月に3泊4日で岡山県牛窓に出かける。その前に、班ごとにテーマを決めて学習し、皆の前で発表することになっている。
教室では5〜6人ずつ机を囲み、作業を進めていた。ある班は、「危険」をテーマに「海の底の危険」「陸の危険」をわかりやすく絵に描いている。また別の班のテーマは「ブイヤベース」。牛窓で自炊するメニューなのか、図解入りのレシピを作成中だ。
「行く前はきちんと勉強し、現地では思い切り遊ぶ。これが本校の研修旅行の考え方です」と北岡先生。
牛窓では自分たちで筏を組み立て、皆でオールを漕いで無人島をめざす。食事は自炊。自分で釣った魚をバーベキューでいただく。その後のキャンプファイヤーも楽しみ。事前学習に取り組む生徒たちの心は、牛窓の海への期待でいっぱいに違いない。
生きる力に触れる「人物ドキュメンタリー」
2年生はパソコン教室で、総合学習の一環である「進路探求プログラム」。これは、日経新聞のコラム「私の履歴書」からロールモデルを選び、その人物の「ドキュメンタリー」作品をつくるというもの。
誰をモデルにするかは班ごとにすでに決めていたので、この日は、映像担当と脚本担当に分かれてそれぞれの作業を進めていた。生徒たちは慣れた様子でパソコンに自分のホルダーをつくり、必要に応じてパワーポイント等でファイルを作成し、保存していく。最終的には、音声や画像も入れて、ドキュメンタリー作品を完成させる。
完成作品は学内で発表した後、VTRを全国大会に送る。一次審査を通過すると、2月に東京で開催される全国大会に出場できる。昨年の2年生の1チームは、日清食品の創業者である安藤百福氏のドキュメンタリー作品で、他の中学や高校を圧倒し、見事グランプリを受賞した。作品のタイトルは「Life is Food 〜食と戦い続けた人生〜」。このチームは、大阪府池田市の「インスタントラーメン発明記念館」まで取材に出かけ、そこで安藤百福氏の人生に思いをはせて作品をつくったという。
なお、3年生は「企業探求プログラム」に取り組んでいる。これは、実在の企業のインターンシップを教室で体験できる学習プログラム。企業から提示されるミッションに挑戦する。昨年の3年生は12チームのうち2チームが全国大会に出場した。
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体験学習が育てるもの
グラウンドでは、そうめん流しの準備が進んでいた。調理室でお母さん方がそうめんをゆでてくれている。何メートルにも及ぶ竹のといや、竹の器、箸は理科の先生の手作りだ。手に持つと竹の香りがする。
3時限目になると、生徒が次々と姿を見せた。器と箸を手に取り、冷水とともに流れてくるそうめんをすくい上げては口に運ぶ。「おいしい」を連発する生徒たち。ある2年生の女子は「これが楽しみだった」とうれしそうに笑った。
SWワイドは、翌日以降もボウリング研修や華道、それに自分たちで育てたスイカやトウモロコシの収穫が予定されている。生徒たちにとって夏休み前の一番楽しい期間だ。夏休みに入ると午前中は夏期講習、午後からはクラブ活動という日が続く。
同校では、中高一貫の6年間を2年ごとに3つのステージに分け、段階ごとに目標を設定している。
北岡先生は「ステージ1では、勉強も体験学習も楽しんでもらいたい」と話す。
ステージが上がるにつれて少しずつ勉強の方に重点が移っていく。高校2年になると、1日7時間授業の他に、早朝50分、放課後90分の補習や演習があり、1日の授業時間数は10時間となる。
中学校の第1期生は今年、高校2年生。中学時代に楽しい体験を重ねてきた満足感があるからか、学習に集中して取り組めているという。また、体験学習を通じて社会と関わったり、人前でプレゼンテーションをしたりという経験から、ものおじしないとも。そして、何よりも愛校心にあふれている。来年度になると、中高一貫生が6学年揃い、学校全体の約半数を占めることになる。滝川第二中学校・高等学校の校風がどう変化していくか、楽しみだ。
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