高校の教育制度で、「総合制」・「単位制」という制度が注目を浴びている。この制度は、生徒個人が一つの枠にとらわれず、自由に興味ある科目を学べ、学年にかかわらず高校卒業に必要な単位取得が出来るという特徴がある。
長尾谷高等学校は、この制度の特徴を生かした学校だ。その上、通信制の特徴をも生かし、全日制のように毎日登校する必要もなく、余暇をスポーツや芸術活動に当てながら勉強が出来る。大学への進学率も7割を超え、京都大学をはじめ国公立や有名な私立大学に合格している。
自由・柔軟な教育課程
同校を卒業するには、3年以上在籍して必修科目を含め74単位以上を履修し、修得することが条件である。単位を修得するには、決められた回数以上のスクーリング、学校行事やホームルームなど特別活動への参加、レポート提出、単位認定試験に合格することが必要である。転・編入の場合は、前籍校での在籍期間や修得科目は引き継がれる。
時間割は自分の興味や関心、進路を考え、学習する科目を選んで作る。スクーリングは、例えば必修2時間に対して15時間の授業が用意されており、さらに同校は5校あるので、そのうちのいずれでも受講しても良いため、非常に履修しやすいシステムになっている。
「生徒の中にはいじめられて転校してくる子もいるんですが、うちではクラスを固定していないし、座席も自由なので、転校に伴うストレスを感じずに、新しい学校生活を始めることができます。それでみんな居心地良く過ごし、勉強ができ、友だちもたくさんできていますよ」と土屋和男副校長は話す。
また、クラブ活動も活発で、今年は女子硬式テニスは近畿大会で3位の実績をあげている。
進むマルチメディア教育
以前からレポートに関してはCD-ROM化し、生徒は必要な科目をプリントアウトし学習しているが、今年度「放送教育指定校」に委嘱され、eラーニングやDVD教材の活用に積極的に取り組んでいる。
オーストラリアの教師と1対1で英会話をする「eラーニング活用英会話」や、ESLと
いうアメリカの無料サイトを使って英語学習を行う「eラーニング活用英語」。インターネットを使い、中学1年生レベルから英語の基礎力を復習できる「eラーニング英語入門」もある。各教科で内容の理解を助ける放送教材や学習内容を視覚化したVTR、DVD、CD-ROMの利用を進めたり、「プロジェクトX」、「地球大紀行」などのNHK番組も学習教材として活用している。また、「ネット利用課題研究」という興味のあるテーマを選びインターネットを使って調べ、まとめ、発表する科目もある。もちろん同校のホームページでは連絡ボードやフリートークの掲示板もある。
「マルチメディア教育は今後もさらに進めていきたい。特にeラーニングは通信制にはぴったりの学習方法です。オーストラリア人の先生との英会話は一人ひとりのレベルに合わせて学べるように配慮してくれますから、楽しいですし、ESLはアメリカではポピュラーなサイトで、音声も出て、非常にわかりやすいんですよ。英語だけでなく、他の教科でもeラーニングをやってみようかと考えているところです」とメディア部長を兼ねる松林博明教頭は目を輝かす。
そして、「今後は何よりIT力が必要」と来春には生徒全員にパソコンを持たせ、IDとパスワードを与える計画である。
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海外語学研修も充実、専門的に学べる総合学習
通信制高校では珍しいが、同校ではニュージーランド、オーストラリア、イギリスへの語学研修を実施している。期間は2〜8週間、非常に好評で年々参加者が増えている。
「生徒たちは英語習得以上に大きなものを得て帰ってきます。ある不登校だった生徒は、この体験によって積極的になり、AO入試で立命館大学に合格、今は教育カウンセラーになりたいと夢を持ってがんばっているんですよ。親元を離れ、異文化の中でがんばることで、消極的な子どもや不登校だった子どものほとんどが前向きに変わって行きますね」と松林教頭は笑顔で語る。
また、総合学習には驚くほど多彩なメニューがある。IT関連、ビジネス、伝統文化、福祉、創作活動など64種類もあり、生徒たちは興味のあるものを選び、同校だけでなく、専門の学校や教室へ行って学ぶ。
「本校は各種専門学校・東洋学園グループのひとつですので、例えば創作活動の『きものスタイリング』なら東洋ファッション校へ行き、プロの講師から本格的に指導を受けます。進路を考える上でも参考になると好評なんですよ」。
このほか英検、簿記などの資格取得のためのメニューも総合学習に位置づけており、無理なく取得することができる。
なお、同校では「チューター」として担任が生徒をきめ細かくみていくしくみになっているので、先生とのコミュニケーションがないのでは、という不安もない。マルチメディアが進むことで、さらにコミュニケーションの点でも不安は解消され、今後はますます注目される学校になるだろう。
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