歴史都市京都を活かしたリサーチ実践教育
京都東山の緑豊かな地に幼稚園から大学までを擁する京都女子学園の広大なキャンパスが広がっている。周囲には歴史的に由緒ある寺社があり、古来日本の伝統文化が今に息づく街である。この恵まれた地の利を活かし、京都女子中学校ウィステリアコースでは、2年前から21世紀をリードする人材を育成するために、伝統文化を研究し、その成果を海外でも紹介できる取り組みを実践している。中学校から大学までの10年一貫教育であるウィステリアコースは順調な滑り出しを見せ、その第1期生が来春進学することに時期を合わせ、高等学校に専門学科・ウィステリア科が新設される。
高等学校では京大、阪大、神大をはじめとする国公立大学へ80名余の合格者を数える実績を持つが、一方で併設大学である京都女子大への進学ニーズも少なくない。ウィステリア科はそうしたニーズに応えながら、京都女子大との高大連携のメリットを最大限活かすための専門学科である。
親鸞聖人の仏教精神を建学の精神とする同校は、ウィステリア科においてもその宗教精神の具現化と京の伝統文化研究を通じ、国際理解教育を進めるという統一的視点を持っている。普通科とは異なり、カリキュラムを柔軟に運用できる専門学科の利点を活かし、ウィステリアリサーチと呼ばれるプロジェクト学習の実践にも重点を置く。
プロジェクト学習は、課題の設定、調査、分析、発表といった一連の学習を繰り返すことにより、特に優れた問題解決能力、研究意欲の向上、研究結果をまとめ発表する情報コミュニケーション能力の育成を目標としている。高1では「京都の伝統文化研究」、高2では「建学の精神の具現化」、高3では「国際理解研究」をそれぞれ設定している。
カリキュラムではリサーチに必要な科目として、統計、確率の基礎的知識と技能を習得する「特講数学」を2・3年次に履修するなど専門学科ならではの色合いも見せている。緒方正倫校長は「リサーチの成果を出版できるくらい、プロジェクト学習を充実させていきたい」と意気込みを語った。
また、ウィステリア科では課外授業として「京都文化論」を各学年で実施。茶道、華道、和装の体験学習や古典芸能鑑賞、在京の著名人による講演会の開催、京都フィールドワークといった独自の取り組みも行っていく。09年度外部募集は約40人で、内部進学生約40人とともに混合2クラスを編成する。
なお、ウィステリアとは、同校を象徴する藤の花を意味する。
国際教育を重視高大連携を充実
リサーチ学習に次ぐウィステリア科の特色として、国際教育の充実が挙げられる。英語教育ではネイティブスピーカーによる授業時間を増やし充実を計っている。加えて高2では第2外国語(ドイツ語、フランス語、中国語、コリア語)を開講し、高3では京都女子大学の初修外国語に接続するシステムを予定している。
これらのカリキュラムは、リサーチ学習とともに国際社会で活躍できる「京女人」の育成を謳ったウィステリア・ブランドを支える2本柱といえる。国際的な場での活躍には、自らのアイデンティティ確立が必要との考えから、自国の文化や京都女子学園の教育の拠り所である仏教精神をより深く理解するリサーチ学習が組まれている。
語学教育重視とリサーチ学習はつまるところ、ウィステリアでの学びのベクトルが国際人の育成という一点に向けられていることを示している。
第2外国語以外でも京都女子大学との高大連携協定により、大学で開講する多数の講座を高3次より先行受講する。これまでも希望する一部の生徒が受講してきたが、ウィステリア科では原則全員履修となる。隣接する大学で、大学生と共に同じ講義を受け、同じ評価を受ける。この高大連携講座の単位は、大学入学後大学の単位として認定される。ただし、高等学校の岩崎智教頭は「高大連携講座は、比較的受講しやすい入門的内容の講座を中心に大学側で設定される」と説明する。
高等学校在学時に大学の単位を先取りすることで、大学進学後はより積極的に学問研究を進めることができ、大学内でもリーダーシップを発揮してほしいという総合学園としてねらいがある。
このほか、ウィステリア科では積極的な資格取得を奨励しており、英語検定、TOEIC、京都検定などに必要な指導を随時行っていく。 |
学びの多様性の確保から充実へ
来春より従来のT類型の募集を停止し、U類型のみの募集となる。ただし、希望に応じ、高2進級時にT類型を選択するシステムは残るため、コースとしてのT類型は存続する。
なお、T類型とは京都女子大、関関同立大などの私立大(文系)を目指すコースであり、U類型とは国公立大、私立大(理系)の難関大学を目指すコースである。
さらに、医歯薬系、超難関国公立大を目指すV類型をはじめ、さまざまな進路志望に応えるために、きめ細やかなコースを設定し、学びの多様性を確保してきた同校は、今後、多様性の充実に向けた改革へ次の一歩を踏み出した。
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