一つでも多くの成功体験を
大阪学芸高等学校のキャンパスは、大阪市内にあり、最寄りの駅から徒歩5分という非常に便利な場所に位置し、美しく近代的な校舎は、地域のシンボル的な存在になっている。通学路近くには、世界陸上会場になった緑豊かな長居公園もある。
創立以来、「知育・徳育・体育の調和のとれた人格形成」を目指す建学の精神を唱えながら、移り変わる社会のニーズに応え、変化を続ける時代に対応できる人材の育成に努めている。
二学期から校長に就任した橋峰和氏は、教育目標について次のように語る。
「生徒一人ひとりが目標を持って取り組み、達成するという“成功体験”を一つでも多く実現して欲しいと考えています。それが次の目標を生み、意欲を引き出し、学力や生きる力をつける道筋になるのです。目標は、“文化祭で劇を成功させる”でも、“部活の練習を頑張り、次の試合に出る”でも何でも良いのです。最初は小さな目標でかまいません」。
同校では、生徒には意図的に目標を設定させ、達成させるよう指導しており、それにより、生徒一人ひとりが充実した高校生活を送れるベースが培われていくのだ。
徹底したアンケート調査で「学校満足度」がアップ
今年、大阪学芸高等学校の受験者数は、定員400名に対し、2,562名。約6.4倍という驚異の数字であった。さらに驚くのは、入学者が299名も増え、699名が入学、12クラスの予定が16クラスになったことだ。
その理由について、橋校長は、「生徒の学校満足度が高く、保護者や生徒の口コミで、受験者が増えているのです」と説明する。
同校が他校と大きく異なる点は、生徒や保護者に徹底したアンケート調査を行い、それをフィードバックして、学校運営や指導に生かしている点だ。アンケートは、「生徒による授業評価」、「学校生活アンケート」、「クラス満足度調査」、「保護者による学園満足度アンケート」の4種類ある。
「生徒による授業評価」は7月と2月、5教科の各授業について実施される。内容は、「先生の授業を受けることで、あなたの学力や知識に変化を感じましたか?」、「先生の授業はわかりやすいですか?」など多くの項目がある。高橋校長は、アンケートの利用方法について説明する。「項目の中で、マイナスの回答になっている場合、はっきり改善点が見えるしくみになっています。例えば“理解度を定期的に確認してくれる”について、マイナス面の回答が多かった場合、高評価の教師の回答を見てみると、小テストをよくやっている、あるいはよく声をかけて確認してくれる、など参考になることが記入してあるのです」。教師が良いと思って行っていることが、実は生徒にとってはあまり良い結果につながっていないこともある。2回実施するのは、7月のアンケート結果を受けて、改善や理解の努力をしたその成果をみるためである。
「最後に自由記述欄があるのですが、“来年も先生に教えて欲しい”とか、“今までの中で、一番わかりやすい授業だった”など、ホロリとさせられることをよく書いてくれています」と高橋校長は微笑む。
また年1回実施する「学校生活アンケート」では、満足度の高いものとして、次の5つが上位に挙げられている。(1)良い友人が多い (2)共学校に入って良かった (3)いじめなどが少ない (4)海外への修学旅行、語学研修が楽しい (5)担任が自分のことをよく考えてくれる
「学校としてはうれしい項目ばかりです。良い友人が多く、共学で男女の仲が良く、いじめも少ない、というのは、学校が楽しい、毎日通いたい、という表れです。外部の方から、生徒の表情がいい、とおほめいただくのですが、皆学校が好きだからでしょう」。これら以外に今年度から「クラス満足度調査」や、「保護者による学園満足度アンケート」が導入される。
なお、満足度の高さに貢献しているのが、海外への修学旅行と語学研修である。修学旅行は、5月の1週間、語学研修は夏休みの3週間で、どちらかを選ぶ。修学旅行は、イタリア、フランス・オランダ、オーストラリア、イギリス、ハワイ、カナダの6コースから、語学研修はオーストラリア、カナダの3コースから選択する。
海外への修学旅行は18年前、オーストラリアからスタートした。当時は北海道の修学旅行もあり、選択するよう設定していたが、年々北海道は希望者が減り、オーストラリアだけになった。しかし、生徒の希望を聞くと、活発でアクティビティをしたい者、芸術肌で、本物の音楽や絵画に触れたい者などさまざまで、その結果このような6コースを設けることになった。しかし毎年、希望者の少ないコースは廃止したり、変更するなど、常に生徒の声に耳を傾け、決定している。
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一期生の大学合格実績に期待
「選抜特進コース」
国公立大学現役合格を目指す「選抜特進コース」は、今年全学年がそろい、来春はいよいよ一期生の実績が出る。
「選抜特進コース」は、1クラスで、2年次から理系と文系に分かれる。入学時よりも生徒たちの学力はかなり上がっている。橋校長は生徒たちについて、次のように話す。
「週3日は8時間授業で、ハードですが、クラブ活動も頑張っている生徒もいますし、クラスの雰囲気はストイックなものでなく、のんびりしています。模試での高得点者も多く、それぞれの志望の国公立大学に合格できるよう、集中して指導しています。全員が現役合格をすることが目標で、将来的には、最難関の国公立大学、いわゆる旧帝大クラスにも現役で合格できるよう育てていきたいです」。
このほか、同校では、目指す大学によって3コースを設定している。難関私立の理系を目指す「特進理数コース」、文系の「特進コース(国英・国際)」、有名文科系大学を目指す「進学コース」がある。
どのコースも3年次には受験に向けて多くの講習・補習を実施している。「アンケートの中から見えたことですが、“わかる”と“できる”は決して同じではないのです。教師はそのことに留意し、“できる”ための授業を工夫しています」と、常に前向きに、課題が見つかれば即、対処している。現在の最大の課題は「自学自習」であるという。そのために1年生から自習の時間を合宿や夏期講習で取ったり、「管理自習室」を夜9時まで開けるなどして、習慣づけを促している。「管理自習室」とは学校の授業と同じく、生徒は50分自習、10分休憩といったリズムで過ごさなければならない自習室であり、同校には、このような拘束のない自習室ももちろんある。
「最初は自学自習というのは難しいのですが、1年次で慣れれば、2年次で必ず力がついていきます」と橋校長は強調する。
アンケートで改善点や課題をみつけ、生徒の夢をサポートする大阪学芸高等学校。教育環境の整備にも力を注ぎ、2008年の春には、新校舎・新体育館を竣工する。今後のさらなる発展が大いに期待される。
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