放課後講習と高大連携講座など
新たな教育プログラム導入
7年前の学校改革から、とどまること無くより良い教育を目指して邁進し、国公立大学や難関私立大学への進学実績を着々と伸ばしている啓光学園中学校・高等学校。今年度は、昨年度まで取り入れていた8時間授業から、7時間授業のカリキュラムに変更し、放課後に講習や補習の時間を設定。入試問題の演習を中心に、生徒個々の状況に合わせた柔軟な対応の授業を行っている。
「啓光学園の教育は、可能な限り一人ひとりの実力を引き出すことを基本としています。高い習熟度を持ち、次々と応用問題の解決を進めていきたい生徒もいれば、ゆとりを持った学び方で奥深く理解を深めていきたいという生徒もいます。そういった各々の進度や将来の志望校、志望学部に合った指導を進めるための一環として、放課後講習を導入したのです」
そう語るのは、高校2年学年主任の山田長正先生。進学実績を上げるためには、生徒の希望進路に沿った確実な指導と同時に、生徒のモチベーションの向上と持続であると、様々なイベントを企画・導入している。
その一つが、大学との高大連携プログラムの実践と、公開授業への参加である。年に二回、関西各地域の大学の教授が来校したり、大学の方へ生徒自身が訪問し、大学の講義で行う理科の実験などを行っており、理系志望の高2生と、既に理系を志望している1年を中心に大勢の生徒が参加している。また、勉強合宿も高1・2年で実施。予備校と提携したり、厳しい指導プログラムを組んだりと、『学習漬け』の数日間で実力をアップさせ、自信と自学自習の習慣づけを実践しているのだ。
進路選択とモチベーション向上に
サイエンスキャンプ参加を推進
高校時代、将来社会でどのような仕事をしたいかを考え、志望する大学や学部を決めることは、生徒たちの将来に大きく影響する選択である。特に理系技術は幅広く、研究職に進みたいと願ってはいるが、どの分野がよいのか分からない、興味ある分野の具体的な内容を知りたいという生徒は多い。こういった生徒たちに向け、文部科学省が科学技術関係人材総合プラン施策として立ち上げた『サイエンス・パートナーシップ・プロジェクト』のひとつ『サイエンスキャンプ』がある。最先端の研究や実験を行う各大学・公的研究機関・民間企業研究所が、様々な科学技術分野において、研究開発の第一線で活躍する技術者による直接指導や、本格的な実験や実習を主体とした科学技術指導を構成。高校の長期休暇期間を使った数日間の合宿プログラムとして、全国の高校生を募集しているものだ。啓光学園では、2003年より積極的に生徒に参加を促しており、現在までのべ15名の参加を実現した。
高校3年学年主任で、多くの教え子をキャンプに送ってきた笠松貴宏先生は「プログラム内容はどの研究所もレベルがかなり高く、人生に一度しか体験できない高校生での体験実習となっています。生徒の背中を押し、このキャンプへ参加させた結果、将来の希望進路を明確に決め、受験までのモチベーションを高く持ち続けた生徒もいますので、できるだけ多くの生徒が参加できればと考えています」と話す。
これらの校内外のイベントでモチベーションを高く保った状態の生徒に、タイミングを見て進学希望の相談に乗っていくのが、進路指導部長の森田崇弘先生たちである。昨年までよりも約半年早く相談を始め、2年の2学期末には具体的な志望校を調査。視野を広く持てるよう、複数のキャンパスの見学を行って、自分が本当に行きたい学校を絞っていくのである。
「教師の言葉による混乱が起きないように、学年全スタッフが進路指導に対する一貫した考えを確立した上で、生徒にとって最も必要と思われる時期を見定めて一番効率的なアドバイスをすることが、進路指導の根幹です」
こうして決めた希望進路への合格を、学校スタッフ全員が生徒一人ひとりに対してバックアップ。受験までの短い期間の間に、十分なフォローや悩みの解決を行い、確実に生徒の輝ける未来への道をつなぐのである。 |
経験を進路選択につなげてーー
キャンプ参加生徒の声
今年度サイエンスキャンプに参加した数名の中には、大阪を離れ、遠く関東の研究所まで足を伸ばした生徒がいる。特進U類2年の池本和樹くんがその一人。今年度の春期休暇に横須賀の海洋研究会開発機構、夏期休暇には筑波の防災科学研究所へと、連続で2回もキャンプに参加した。募集人数が年々増加しているため、参加にかける熱意や動機などを小論文にして書き、選考する方法が採られている状況で、この2回参加という実績は高い評価を受けている。
「理系、特に地震や海洋研究は以前から興味のある分野でした。実際に体験して、大学でもこの分野を専攻し、もっと深く学びたいと考えるようになっています」と池本くんは参加の感想をいきいきとした言葉で話した。進学希望大学は関西方面を中心に考えているが、今回のキャンプで全国各地から集まった高校生とは、地域の壁を越え、よい仲間意識を培うことができたそうだ。
一方、キャンプ直前まで、文系か理系かの進路選択で悩んでいたというのが、特進T類2年の土久岡高志くんだ。エネルギー技術に興味があったと語る土久岡くんは、奈良県の木津にある関西原子力開発機構でのキャンプに参加。光科学や放射線をはじめとするエネルギーの研究プログラムを研究職員と対面で指導してもらい、漠然としか持っていなかった知識を裏付けることができたそうだ。また、池本くんと同じように、全国の仲間と深夜まで語り合い、遠く離れた地域の生徒たちとの友情も深めることができたと喜びの言葉を聞かせてくれた。「キャンプのおかげで研究職に就けばどのような研究ができるのかを、具体的に知ることができました。この経験を活かし、将来は環境科学に進んで、興味のあった自然環境の勉強を深めていきたいです」と、はっきりした将来の目標を固めていた。
ともに、これから厳しくなる受験対策に向け、志望大学を決めていく時期に入っている2人。彼らの経験が、彼らだけでなく、周囲の級友たちのモチベーション向上にも役立っていくことは間違いないと思われる。
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