志願者増で1クラス増設
大阪産業大学附属中学校は、今年の入試で一次・二次試験ともに前年を大幅に上回る志願者を集めた。歩留まり率もアップし、二次試験終了段階で、募集定員80名に対して90数名が入学手続きをすませている。
同中学は昨年、従来の「6年一貫」コースとは別に、私立公立難関高校や系列校の大阪桐蔭高校への進学を目指す「3年受験」コースを新設。募集定員を各コース40名ずつとした。
しかし、志願者が圧倒的に多かったのは、6年一貫コース。「予想以上でした」と牧本校長。中高一貫教育への期待がそれだけ高いと言える。
どちらのコースも学習進度は同じだが、3年受験コースの方が補習の回数が多い。また副教材の内容も濃いものとなっている。
両コースとも中学3年の1学期に中学課程を終了する。その時点で、入学時のコースに関わらず、進路希望調査を実施し、内部進学組と他高校受験組に分けてクラスを再編する。
「うちの高校の魅力が大きければ大きいほど、さらに一貫コースの生徒数が増えるはずです。そのために努力していきたい」と牧本校長。しかし同時に、他高校を受験する生徒を合格させるために、学校として真剣に取り組みたいという。
中学3年の2学期からは、内部進学組は高校課程の先取り学習を行うが、受験組は志望校への受験勉強に入る。中学1・2年次より週42時間授業で基礎学力を十分に養っているうえに、過去問や応用問題で実力をつけるため、難関高校受験には公立中学の生徒よりもはるかに有利だ。
そのうえ、大阪桐蔭高校進学を希望する生徒には、系列校推薦入学として10名の枠が用意されている。
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大学受験への支援を強化
高校は、普通科に4コース(特進T・特進U・進学・スポーツ)と国際科に2コース(特進・進学)の全6コースを開設している。
2004年度のコース改編以降、生徒の適性や進路希望に応じた多様なコース制が受験生の人気を集めている。
今年1月に発表された大阪府内の公立中学校の志望校調査によると、同校志望者は約1600名、専願率は26%だった。この時点での、募集定員に対する充足率は76%。府内の私立高校92校のなかで15位内に入る数値だ。実際に1月23日から始まった出願の出足も好調という。
牧本校長は「今年は府立高校が9学区制から4学区制に変更され、受験地図が大きく塗り替えられます。私立高校も見直される年になるのでは」と話す。
昨年12月に大阪市営地下鉄今里筋線が開通し、従来の今福鶴見駅とほぼ同距離の学校から徒歩7分のところに新駅ができたこともプラスに作用しているかもしれない。
しかし、同校の魅力は何と言っても近年の大学進学実績の向上と大阪産業大学の附属校という点にある。
今年の大学入試結果が明らかになるのはこれからだが、すでに実施された公募制推薦入試では、前年度を大きく上回る合格者を出している。
前年度の京都産大・近大・龍谷大の合格者数合計は年度最終の集計で特進コースで50名、全コース合わせて88名だったが、今年度は特進コースだけに限っても公募推薦入試ですでに114名が合格している。この後の国公立大学や難関私大の結果にも期待できそうだ。
牧本校長は「今の高3生の大多数は『大産大に進学できればよい』という考えで入学してきた生徒たちですから、ここまでよく頑張ってくれたというのが正直な気持ちです」と感慨深げ。
もちろん、学校側が取り組んできた受験対策の効果も大きい。一昨年、大阪桐蔭高校から受験のエキスパートである越智雅之教頭を迎え、大学受験への支援をさらに強化した。
特進コースの生徒には、週2〜5コマの進学講座で学力向上を図る。生徒の自学自習のために、教員常駐の自習室を平日は午後8時まで、土曜日には午後5時まで開放し、質問も受け付ける。その他、長期休暇中の特別授業やセンター入試対策・私大国立大対策など。どの時期にどのような勉強をすべきかを熟知した越智教頭が特進コースの担当者と共に受験対策をリードしている。
優遇措置で広がる選択肢
大阪産業大学の推薦入試を受験した生徒も大幅に増えた。すでに内部推薦で200名、公募推薦では230名が合格を手にしている。この数字は昨年の倍近い。特進コースの生徒の多くが公募推薦入試を受験したからだ。
大学の規定では、公募推薦合格者は12月中に手続きしなければ入学資格を失う。しかし、附属高校の優秀な生徒をより多く迎えたい考えの大学は、今年度より附属高校と大阪桐蔭高校の生徒に限り、3月31日まで入学手続きを待つという優遇措置を設けた。これにより、生徒たちは系列大学への入学資格を保持しながら、併願で他の難関大学にチャレンジできるようになった。
「だからといって、大学に魅力がなければ受験には至りません。従来から進めてきた高大連携が、大阪産大への理解を深めたといえます」。
高大連携は、大学教員の出張講義や高校生の大学訪問という形で行われている。
昨年4月、大阪産大でさらに魅力的なプロジェクトがスタートした。「てんぷら油でパリダカ参戦」である。使用済みの天ぷら油を再生したバイオディーゼル燃料で、ポルトガルからセネガルまでの約9千kmを半月かけて走る。同大客員教授である元F1ドライバーの片山右京氏が「環境問題を身近に考えてもらいたい」と提案した。
工学部の学生はメカニックとして参加し、文化系の学生は油の収集やスポンサー募集、現地からネットによる情報発信などを担当した。
今年1月6日にリスボンをスタートした車は、21日に無事ダカールまで完走。68位という好成績だった。
車好きの牧本校長はレース期間中、生徒たちと毎日のレース展開をわくわくしながら見守ったという。
このプロジェクトは3年計画で進められるため、現在の高校生も大学入学後に参加できるチャンスがある。
牧本校長は「本校では中高ともに、学力に応じた形で選択の幅を広げています。何のためにどのような進路を選ぶのか。明確なイメージを持てるよう、様々な情報や刺激を与えていきたい」と語る。
選択肢の広がりが、生徒の未来への夢も大きく広げる。同校が描く青写真への期待値は高い。
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