進学実績にも自信
長尾谷高等学校枚方本校の校長室は、何本もの優勝旗にかなりのスペースを占有されている。いずれもテニス部が勝ち取ったものだ。
昨年3月の第28回全国選抜高校テニス大会では、男子と女子が団体の部でそろって優勝を飾った。さらに個人戦においても男女ともに優勝し、大会を完全制覇。全国に長尾谷テニス部の圧倒的強さを見せつけた。
続く夏のインターハイでも、女子は団体とシングルスで優勝。男子は団体準優勝、シングルス準優勝、ダブルスでは優勝と準優勝を果たした。
何本もの優勝旗を前に土屋校長代理は「開校当時は想像もできませんでした」と感慨深げ。
同校の設立準備委員会立ち上げから関わってきた土屋校長代理は「最初は、高校中退者が将来への道を閉ざされないように、本校が受け皿になればという思いで出発しました」と振り返る。
しかし、時代の流れとともに社会の価値観が多様化し、学習ニーズも変化してきた。現在では、自分の将来の夢を叶えるために、あるいは興味あることに打ち込むために、マイペースで学べる同校を志望する生徒が増えてきている。
先のテニス部員たちも、同校のシステムに魅力を感じて集まってきた生徒たちだ。週3日登校し、勉学と練習をバランスよく両立させている。
その他にも、ある男子生徒は、インターナショナルスクールとのダブルスクールで英語力を磨き、AFS交換留学生としてアメリカ五大湖地域の高校に留学した。
また、在校生のなかには現在ドイツのバレエアカデミーに留学中の女子生徒もいる。ドイツからレポートを提出し、帰国時に集中的にスクーリングを受講している。
スポーツや芸術分野だけでなく、難関大学進学を目指して受験勉強に取り組む生徒も多い。同校からは4年連続して京大合格者が出ている。昨年は国公立大学に6名、関関同立に37名が合格。その他、慶応や中央大学などの難関私大にも多くの生徒が合格した。
土屋校長代理は「進学実績でも全日制高校に引けをとりません」と胸を張る。
相次ぐ転入希望者
同校の通学圏は主に大阪・京都・奈良・兵庫・滋賀の2府3県。入学時期は4月と10月の年2回だが、他の高校からの転入や高校中退者の編入は随時受け付けている。転入や編入希望者は多いときには1ヶ月に100名近くにも上り、生徒数が増え続けている。
その要因を土屋校長代理は「時代の追い風に加え、生徒のニーズに対応した学校努力」という。
同校のモットーは「生徒が生徒を呼んでくる学校」。教育内容の充実に力を注ぎ、生徒が学びやすいように体制を整えている。実際に在校生からの口コミや評判を聞いて学校見学に訪れる生徒も多い。
通信制・単位制の高校では、レポート作成とスクーリング受講、単位認定試験に合格することで卒業に必要な単位を取得する。
同校では、生徒が自分の都合に合わせてスクーリングを受講できるように、各科目の授業回数を多めに設定している。
総合学習の種類が多いのも魅力だ。教養・芸術・資格取得など全53講座を開講。そのなかには語学研修も含まれており、行き先はニュージーランド・イギリス・カナダなど。研修期間も3週間から3ヵ月・6ヵ月と多彩なコースが用意されている。
一方、自学自習を支援する「eラーニング」も充実。生徒はウェブ上のオリジナル教材を活用して学習したり、また、教科書会社と提携し各科目の副教材としてCDなども独自開発。レポート作成の強い味方となっている。 |
自分らしい未来をデザイン
マイペースで学べる。自由な時間が多い。こうした通信制高校のメリットは、マイナスに作用した場合、学業がおろそかになるという欠点につながる。生徒の約7割が大学・短大・専門学校等への進学を希望している同校においても、その可能性を完全には否定できない。
そこで入学と同時に一人のチューター(担任)がつき、スクーリング出席状況などを把握しながら、卒業まで責任をもってサポートする。学習面はもちろん、生活面や進路選択についてもアドバイス。保護者を交えた三者面談も定期的に行っている。生徒や保護者からメールで相談を受けることも多い。
同校の教員数は50名以上。非常勤講師を合わせると約140名にも上る。一人のチューターが担任する生徒数が比較的少人数であるため、一人ひとりにきめ細かく対応できる。
また、生徒の学習への動機付けを高めるために、授業内容のレベルアップを目指し、教科ごとに定期的に研修を実施。学外の研修会にも積極的に参加している。
一方、生徒に対しても高校生らしい通学・学習態度を求めている。
例えば、バイク・車での通学禁止。10分以上遅刻すると授業に出席できない。教科書を忘れた場合も、一度目は貸与するが、二度目以降は出席を認めないなどだ。
「自由な時間を自分の将来のために有効に使えるかどうかは、本人の心がけ次第」と土屋校長代理。
履修科目も登校日も行事参加も、自分で判断し決定しなければならない。さらに自己管理しながら学習を続けていく努力も必要だ。学校説明会で、ほとんどの保護者はその点を心配するという。
しかし実際には、多くの生徒が学校のサポート体制にも支えられ無事に卒業式を迎える。卒業文集には「自分で意志決定し自分で動く楽しさを知った」「自律することを覚えた」という感想が目立つ。
土屋校長代理は「ゆとりある学校生活のなかで、自律的に興味関心あることに挑戦し、自己発見に努めてもらいたい」と願う。
長尾谷高等学校は、自分らしい未来を描こうとする生徒を応援している。
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