特進にハイレベルな第3のコース誕生
同校のコースは大きく「進学総合」と「特進」に分かれている。
「進学総合」は女子のみのコースで、充実した学校生活を送りながら大学・短大・専門学校への進学を目指す。2年次より進路目標に応じて「進学選択」「教養選択」「情報選択」「福祉選択」に分かれる。
一方「特進」は大学進学を目標とする男女共学のコース。昨年度までは「特進文理」と「特進英語」の2コース制だった。「特進文理」は国公立や難関私大進学を目標とする。「特進英語」は文字通り英語に重点を置き、英語力を最大限に活用して外国語系・文系大学への進学や留学を目指す。
今年度新設された「特進文理S」は国公立大学に照準を絞ったコース。既存の「特進文理」のなかで国公立志望者が増えてきたため新設に至った。
同校の森功教頭は「ここ数年、入学者の成績が全体的に上昇し、『特進』コースの志願者が目だって増えてきました。『特進』の定員増を検討するなかで、従来の『特進文理』から発展した新コースが生まれました」と「特進文理S」開設の経緯を語る。
募集定員は「文理」が80名に対し、「文理S」は40名。入試科目も英数国に理社を加えた5教科となっている。1年次の間は「文理」と「文理S」は同じカリキュラムで学び、2年進級時に本人の希望と成績によりコース変更できる。
ライバルの存在が支え
「特進文理S」コース第1期生のクラス担任は武本真樹先生。昨年度まで「文理」のクラスを3年間持ち上がりで担任し、今年3月、卒業生を送り出した。その経験から、国公立大学志望者のみで構成されたコースの開設を待ち望んでいた。
「国公立を目指す生徒は受験科目数が多いため、私立志望者と比べて精神的な負担も大きくなります。そんなときクラスメートが頑張っている姿は、大きな支えになるはずです」。
実際に「文理S」第1期生のクラスは同じ目標を持つもの同士、入学当初から意欲的に勉学し、良き友人関係と同時に良きライバル関係を形成しつつあるという。
今後3年間で各科目をバランスよく伸ばし、目標大学の合格レベルまで力をつけさせるために、平日は5時まで授業を設定。さらに放課後の自主講座や長期休暇中の講習・勉強合宿など、十分な授業・学習時間を確保している。高校3年次の5月ごろまでにはセンター試験の内容を終え、その後は受験対策として演習に入る。
「どこまで伸びるか、3年後が楽しみです」と武本先生は生徒たちに期待を寄せる。
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夢にはしごを架ける
特色ある多彩なコースを設けている同校では、生徒の進路目標も難関大学進学から専門学校進学、就職と多岐にわたる。しかし、どのコースでも進路指導の基本姿勢は変わらない。
進路指導部長として長年進路指導に携わってきた森教頭は「今の適性に見合う進路選択ではなく、目標に向かって適性を獲得していく『攻めの進路選択』へと導きます」と話す。
成長段階にある高校生が自分の現状に目を奪われ、みずから可能性を狭めてしまわないようにという考えからだ。
「例えば、ピアノが今弾けないからといって、幼稚園の先生に向いていないとはいえません。足りない部分はこれから補っていけばよいのです」。
進路指導は入学と同時にスタートする。進路に関するアンケートを実施したり、社会の第一線で活躍する卒業生の講演なども行われるが、主に担任の先生が日常の機会をとらえてアドバイスする形で進路指導が進められる。
入学当初は漠然とした夢を抱いているだけの生徒が多い。なかには「テレビタレントになりたい」などと、あまり現実的でない夢を描く生徒もいる。
そんな場合でも「生徒の夢を否定せず、生徒と一緒に『今の自分』から夢の実現に向けてルートを引いてみます。タレントになるために事務所に所属する。あるいはオーディションを受ける。そのためにはどんな適性が必要か。今から何ができるかと、具体化していきます」。
面談の積み重ねによって生徒たちは自分自身を知り、目指すべき方向性を見出していく。
その際、注意すべき点は進路決定を急がせないこと。キーワードは「じっくり長く悩んで決める」。揺るぎのない「初心」をつくりあげるためだ。
「目標達成までに迷ったり、壁に当たったとき、初心に戻ることができれば乗り越えられます」。
それに、多くの情報を得てじっくり考えればミスマッチも防げる。
近年、短大や専門学校の退学者が増えているが、同校の場合はここ2年間で短大と専門学校に合わせて約300名が進学し、退学者はわずか2名に止まる。それも経済的理由など、やむをえない事情による。
また、進路決定は生徒だけの問題ではない。保護者の応援が不可欠だ。そのため同校では、生徒へのガイダンスの内容を、保護者にも伝え、家庭で進路について話し合うきっかけづくりとしている。
「最初は親子喧嘩になってしまうかもしれませんが、互いの思いのずれを知るだけでも意味があります。徐々に冷静な話し合いができるように生徒を指導しています」。
多彩な可能性を育てるコース制ときめ細かな進路指導により、生徒たちは夢を描くだけでなく、夢にはしごを架けることを学ぶ。
神戸龍谷高等学校では、目標をより高いレベルで実現しようとする生徒たちの、未来への確かな一歩を支えている。
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