幅広く教育界の経験を持つ新校長が就任
「一人ひとりの生徒をしっかりと見つめること、一人ひとりと十分に関わること」を教育理念とする金蘭会中学校・高等学校は、昨年創立100周年を迎えた。今年4月に新しく就任した藤林富郎校長は、「女子教育100年の伝統と実績を活かしながら、二十一世紀にふさわしく、主体的に生き、内面を磨き、心の美しさが振る舞いにあふれ出る女性、社会の変化にしなやかに対応できる女性――金蘭レディを育てていきたいと思っています」と抱負を語った。
藤林校長は京都府立高校2校、教育大附属高校の3つの高校で15年にわたって教師生活を送った後、金蘭短期大学へ着任。同校で千里金蘭大学で12年間教鞭をとった。小学校を除き、中学校から大学まで幅広く教育界の経験を持つ新校長は、「その経験を今後この伝統校で活かしたい」と意欲的だ。
金蘭会中学校・高等学校では、今から30年以上も前の昭和48年から1クラス30人学級を実現。最近でこそ少人数制が一般的となったが、当時としてはかなり先進的だった。そんなところにも、一人ひとりを大切に育みたいという同校の教育方針が“形”として現れているといえよう。
新校舎の建設は、プロジェクトの大きな柱
金蘭会中学校・高等学校では、100周年を機に「新世紀プロジェクト」と題して、新校舎の建設と教育内容の改革に取り組んでいる。
同校は、JR大阪駅から一駅という交通至便なアクセス。西の文化と経済の中心・大阪のほぼ、ど真ん中に位置している。その地で行われている新校舎の建設は、新たな伝統を築くにふさわしい最高の教育環境を整備・提供していくためのもので、今年4月に着工。来年秋には竣工の予定で、プロジェクトの大きな柱となっている。
新校舎は、本館(教育棟)と別館(体育館棟)からなり、ともに地上8階建て。本館のメインとなっている普通教室はすべて南面採光で、光と風が交錯する明るくゆとりのある空間構成となっている。4階以上のすべてのフロアにはコミュニケーションホールを設け、生徒同士、また生徒と教員の“ふれあい”の場を提供する。一方、別館には600人の観客が入れる講堂(多目的ホール)や、5階から8階までが吹き抜けになっている天井高10数メートルに及ぶ体育館などが設けられている。講堂と体育館は、全国的にもレベルが高い演劇部や吹奏楽部、新体操部といったクラブの発表会や公式試合にも使用されるように造られている。
本館の正面部分は、しなやかな曲線を描くフォルム。モダンかつおしゃれな新校舎で、次世代を担う生徒たちが快適に学習に励む日も近い。
「教養講座」は、大阪府私学先導的モデル事業に採択
「新世紀プロジェクト」のもう一つの柱となる教育内容の改革も、すでに取り組みが始まっている。
高等部は「特進」と「総合」の2コース制。両コースとも昨年から新カリキュラムを導入し、コースの特徴を明確に打ち出した。
「特進」コースでは、関関同立を中心とする難関私立大学の文系学部や私立大学の薬学部合格を目指す。自主的な学習習慣を確立することで、より高い学習効果を得るための制度を設けている。例えば、月・水・金の7時間目に行っている英語と国語の「課題学習」。これは事前に授業等で配布したテキストに基づき、指定の範囲についての演習となる。英語では文法を意識させながら単語力を養成、国語では文章力を身につけさせることが狙いで、朝礼時の小テストで、学習の成果を確認する。また、月・水・金の8時間目には90分間の「練成学習」を実施。各自の学習状況に合わせた教材を使用し、自学自習の時間とする。生徒はこの2つの学習時間を通じて、次第に自分自身で学習する習慣を形成していくというわけでする。2年になると、受験の基礎演習を、3年からは応用演習を加えるなど、受験対策も万全。もちろん、学力を強化するために授業時間数も、英語は1年で9時間、2年で10時間、3年で12時間、国語は1年で6時間、2年で10時間、3年で12時間と従来より増やしている。他教科についても2年から選択教科を複数設け、難関大入試対策を強化。その甲斐あって、今春の関関同立の合格者は、昨春と比べると3倍に伸びた。
「総合」コースでは、生徒一人ひとりの個性や能力を活かした多様な進路選択に対応する。そのため、教科指導だけでなく、実践的な知識を身につける「教養講座」を平成17年度から設けた。これは、茶道、華道、礼法という日本の伝統文化を学ぶことにより、正しい言葉遣い、コミュニケーションのとり方、美しい振る舞いなどを自然に身につけることを目的としており、1年で茶道、2年では華道、3年では礼法を、週1時間学ぶ。この教養講座は、大阪府私学先導的モデル事業として採択されたという実績を持つ。「保護者にも好評で、『娘が今までと違う形で成長した気がする』というようなご意見をいただいています」と藤林校長。 |
次の100年へ向けて、様々な改革を実践
一方、中学部の教育の特色は、基礎学力の充実と情操教育にあるといえる。特に英語力育成を重視し、3年間のオーラルイングリッシュ授業を、1クラス15人という徹底した少人数制で行っている。また、情報教育の重要性を認識し、3年間を通じてパソコン操作はもちろん、情報リテラシーからコンピュータ社会のマナーまで広範囲の情報教育を実施。また、情操教育としては、篠笛や箏といった日本の伝統楽器の習得をめざす。なんと全員が親しめるだけの数の筝が備えられている。
ところで、昨今、中高一貫教育の良さがクローズアップされているが、本校には、中学校・高等学校だけでなく、大学までそろっているのが大きなメリット。千里金蘭大学には、生活科学部食物栄養学科、人間社会学部人間社会学科・情報社会学科、短期大学部生活文化学科があり、平成19年春には生活科学部児童学科(仮称)が開設になる。さらに、平成20年には看護学科も開設予定。将来の進路への選択肢が広がる。
それに伴い、同校では大学との連携を図り、生徒の進路に合わせたカリキュラムの改編も計画中。その内容は、高等部在学中に千里金蘭大学の講義を受けると、単位として認めるというもの。大学入学後にその単位が生かせるので、大学生活に余裕ができ、ほかの学業などに取り組むことも可能となる。
次の100年に向けて、様々な改革を実践する金蘭会中学校・高等学校。授業以外でも充実した学校生活を送り、「金蘭の思い出は一生の財産」と言ってもらえる学校づくりを日々進めている。
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