企業が求める社会人基礎力
教養科目群「コアユニット」
全国の短期大学が大学化するなど激減の時代に、豊橋創造大学短期大学部が「短大」の形態にこだわるのには理由がある。1983年に「豊橋短期大学」創立、後に豊橋創造大学創設に合わせ「豊橋創造大学短期大学部」と改称。短期大学として開学した歴史を持ち、「今の時代だからこそ存在意義、価値がある」と自信を見せるのは、キャリアプランニング科の今泉仁志科長だ。
「高校生と親御さんが求める『資格』や『学歴』の取得と、企業が望む『社会人基礎力』の獲得の両方に対応するとともに、教養を高める場として、短大は現代に生きています」
「キャリアプランニング科」の学修システムは、前身の「秘書科」も含め30年間、時代の要請に精錬されてきた。
「多様な生き方に『社会人基礎力』や『対応力』は必須です。いま4年制大学では、このジェネリックスキルの習得を、専門科目が占有するカリキュラムのどこに組み込むかで悩んでいる。私たちは『秘書科』時代から、ビジネス文書やマナー演習などのビジネススキル、コミュニケーションやプレゼンテーション能力を磨くセミナー、心理学・環境学など幅広い教養科目群『コアユニット』を必修として設置しています」
これらの「基礎教養」を充実していることが、卒業後にたびたび訪れる人生の岐路において指針となっていることを、今泉科長は見届けてきた。
「社会にアンテナをたくさん立てて、周囲とのかかわりで生じた仕事やチャンスに常に反応できる社会人であってほしい。コアユニットの教養知識が、振り返ったときにつながっていれば良い」
4コース・9履修モデルで
資格取得対策も万全
同科では来春から、新たに4コース制と9つの履修モデルが始動。きめ細かいカリキュラムで「強み」「得意分野」を作り、資格取得をバックアップする。伝統の「ビジネス・秘書コース」、「医療秘書技能検定準1級」の合格率(2012年度は82.9%)を誇る「医療事務コース」、調理師やフードコーディネーターを目指す「調理師・フードコース」など実績のある分野に加え、新しく生まれたのが「公務員コース」だ。法令遵守の就業体制、地域に貢献できて、異動も男女差もなく産休も確保できる。女性が長く勤められる安定感は魅力だ。公務員受験指導を担当する伊藤圭一講師は、短大生にとって公務員試験受験は理想的だと、と語る。
「大学と比較して短期大学は学ぶ期間が短く経済的な負担も軽いです。そればかりか、一部の試験を除き、大学生と同じ試験を受けられるばかりでなく、高校卒業程度の試験も受験が可能です。つまり、幅広い受験枠が多くのチャンスを生むことになります。それに、一般に言われているほど公務員試験は難しいものではなく、まじめに対策すれば合格ができる試験なのです。そういった勉強する環境が整っているばかりでなく、卒業すると与えられる『短期大学士』は国際的に通用する学術称号です」
小人数制で学生に目が行き届くことに加えて、2年間かけて筆記試験に備える「公務員総合ゼミナール」や、面接や小論文対策、「公務員試験対策スタディルーム」新設など、サポート体制は厚く、ダブルスクールに通う必要がない、と伊藤講師。また公務員試験の勉強は、民間企業の採用試験対策にもなる。今泉科長は短大ならではの多様性を挙げる。
「必修のコアユニットのおかげで、つぶしが利く。パワーポイントで発表用パネルを作り、人前でデモンストレーションするなど、スキルを積むことで、例えば調理師コースでも食以外の企業にもアピールできる力が身に付く。逆に専門的な学問を究めたくなったら大学へ3年次編入という道もあります」 |
綿密な就業講座と個別対応
短大ならではの密度の濃さ
今春の同科卒業生の就職希望者67人うち、65人が就職、決定率97%を達成。資格取得は強みだが、最終的には面接を突破する「人間的魅力」や「やる気」の勝負だ。この「人間力」を同科ではどのように育てていくのか。
「一般事務であれば、長く勤務かつ賃金を抑えたい、というのが企業の本音。大卒より短大生への需要が高いのは事実です。狭い学内で、教員と学生の関係の密度も濃い。時間割に空き時間があれば、『この講座を取るといいよ』とアドバイスします。面接訓練やエントリーシートの点検を個別に長時間かけて対応します。『社会人基礎力』は地道な作業で積み上げるものです」
就職支援講座も豊富だ。4月には、豊橋市役所企画課による地域活性プロジェクト学習「キックオフ講演会」を皮切りに、「キャリアポートフォリオ説明会」、地産地消を考える調理講習会、「PROG(社会で求められる汎用的な能力・態度・志向を、問題解決力(リテラシー)と行動特性(コンピテンシー)二観点でジェネリックスキルを測定する)解説会」や「メンタルタフネスベーシック講座」など、枚挙に暇がない。受講した学生の反応を、日々、ダイレクトに感じているのが伊藤講師だ。
「講座は土曜日に開催されることも多いのですが、学生たちは『自分たちのために企画してくれているのだから』、『自分が成長できる』と非常に素直に受け入れている。彼女たち自身が講座の意味を定着、再構成していることを、ゼミや授業での会話を通して確認できる機会が多い。ちゃんと伝わっていることが、こちらも嬉しいですね」
フレキシブルに、そして豊かに――。「短期大学」の真の可能性を、私たちはいまだ知らないだけなのかもしれない。
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