マナビネットオープンスクール2022 ●掲載:塾ジャーナル2022年5月号/取材:塾ジャーナル編集部

魅力ある「志共育・探究・ICT」で
男子教育に自信あり!

足立学園中学校・高等学校(東京都)

将来の夢が輝く! 世のため人のためになる「志」を発表する生徒たちの笑顔


世のため人のためになる志を引き出す「志共育」を展開している足立学園中学校・高等学校。思春期男子が決意する志は「国際弁護士になりたい」など、年々“熱さ”が増している。
教育現場でのICT活用方法について、企業と高校生が議論するなどICT先進校としても注目されている同校。毎年、素晴らしい論文が発表されている探究総合の授業では、その成果を生かして総合型選抜で大学合格を勝ち取る生徒が続出している。
足立学園の新しい魅力となった、この3つの教育(志共育・ICT・探究)について紹介する。


生徒を丸ごと受け止め
志の芽を伸ばす

志共育を導入して3年目を迎えた足立学園。
井上実校長は「志共育が本校の特色になりつつあると思います」と手応えを語る。

同校では道徳や総合的な学習の時間を使い、生徒が志(世のため人のためになる将来の夢)を考え、発表している。最近では「国際弁護士になりたい」「国連の仕事をしてみたい」と、より高度な専門性を必要とされる志も増えている。「どんな小さなことでもいいよと伝えているのですが、生徒の方が掘り下げていってくれていますね」と井上校長は目を細める。

志の実現のためには、勉強をはじめ様々な努力が必要だ。しかし、成績が振るわないなど、足踏みすることもある。そんな時、教師は生徒に注意するのではなく『一緒に頑張ろう』と、励ます姿勢で寄り添うようにしている。

「志共育で一番大事なのは、子どもたちを丸ごと認めてあげること。医師になりたいと言った子どもに、『今のままではなれるわけがない』と言ってしまうと、子どもの成長の芽が摘まれてしまいます。限界が見えるまで取り組ませ、『このままではまだ届かない』と生徒が自分で気づくことが大切なのです」

生徒の思いを大切にする「生徒第一主義」を掲げている同校。大学進学においても考え方を変えた。生徒が本当に進学したい大学を受験させることを徹底したのだ。その結果、進学先は海外大学や美大など、非常にバラエティに富んだものになった。

「難関大学にも合格できる偏差値が高い生徒が、そうではない進路先を選んでも、本校ではそれを尊重する。それが今の足立学園の在り方なんです」と井上校長。難関大学の合格者数を増やすのではなく、生徒の満足度を高める進路指導は、保護者にも高く支持されている。


(左)自衛少年消防隊がある同校。千住消防署の指導の下、中学生の隊員がパソコンを駆使し、オンライン合同訓練を行なった
(右)Microsoft Showcase School認定校として、授業にもパソコンを活用

高いICTスキルを
身につけて卒業

「自信を持って言えるのは、本校を卒業したら、一般の社会人に負けないくらいのICTスキルを身につけているということです」。情報科主任の杉山直輝先生はそう言って胸を張る。

一人一台パソコンを持ち、授業やコミュニケーションに活用しているのは、どの学校でも同じ。同校は、中高では日本で唯一「Microsoft Showcase School(Microsoft本社が認定する教育ICT先進校)」に認定されている。これまで、杉山先生が窓口となり、Microsoft社やメーカーなどと共同開発しながら、様々な活用方法を生み出してきた実績がある。

「生徒が自分のスキルに気づくのは大学進学後です。自分は簡単にできることでも、同級生ができないことを見て、足立学園で学んだことは当たり前ではなかったと気づくようです」と杉山先生。

2021年度には高2生の有志が集まり「Surfaceアンバサダー」を結成。月に1回、Microsoft社とミーティングを持ち、意見交換の機会を設けている。パソコンが得意な生徒ばかりではなく、「パソコンが苦手で詳しくなりたいから」という理由で参加している生徒もいる。

杉山先生は「ICTの方向性は生徒によってバラバラです。私の仕事は、デザインやプログラミングなどを学びたい生徒に環境を整えてあげること。適切な環境さえあれば、生徒たちは教科書の範囲を超え、自ら新しいことを吸収していきます」と話す。

同校にはMicrosoft認定教育イノベーター(MIEE)に認定された教職員が28名在籍。杉山先生は教育現場においてイノベーティブな活動が期待されるとして、日本に26名しかいない「Adobe Education Leader」にも認定されている。現代社会において、ICTスキルはもはや必須。足立学園には学校生活を送る中で、自然と身につけられる土壌がある。


(左)紙と凧糸など簡単な素材で、卵を割らずに落とす方法を考える探究学習「エッグドロップ®」。グループで取り組み、協働性も育む
(右)今年3月に行われた、高2生の探究発表会。個人で探究テーマを決め、研究に取り組んできた成果を発表した

探究学習の成果を元に
総合型選抜で大学合格

足立学園は、中学校は特別クラスと一般クラス、高校では「探究」「文理」「総合」の各コースに分かれる。

探究コースの狙いは「科学的思考を身につけ、考え方そのものを育てること」だ。高校1年の前期では、グループで「エッグドロップ®」に取り組む。これはコピー用紙と凧糸など最低限のものだけで、卵を割らずに落とせるかのチャレンジだ。

授業研究係主任の飯山泰介先生は「この実験は失敗してもいいんです。大切なのは他の人の意見を受け入れ、価値観の違いに気づくこと。また、この実験は、高校から入ってくる生徒と中入生との垣根を取り払う、アイスブレイク的な意味合いもあります」と話す。

ほかにも、「足立区の活性化」をテーマにした活動も行なっている。コロナ前の学園祭では、空き家対策や商店街の活性化についてのアイデアを発表。空き家問題の解決を探究テーマにして活動する生徒もいる。

高1の後期から高2の終わりにかけては、各自テーマを決めて、論文作成に取り組む。飯山先生は「生徒が選ぶテーマは結果的に世のため人のためになることが多く、志共育との相関性が高い」と言う。

ある生徒は「温度差を利用する発電〜ゼーベック効果と化学電池〜」という論文を発表。高校数学のレベルをはるかに超えた内容で、この生徒は東工大に総合型選抜で合格した。

ほかにも、学習に身が入らない自らの経験を元に、「主体的に勉強するには」をテーマにした生徒もいた。成長マインドセットを利用し、主体的に勉強する方法を考えた結果、この生徒は早稲田・慶應に合格している。

同校では、探究学習の実績を活用し、総合型選抜を受ける生徒が増えている。令和4年度の難関国公立大学の合格者の半数は総合型選抜によるものだ。

井上校長は「本校の探究学習は年々レベルが上がってきています。探究が大学進路にも通用する形になっていることは素晴らしいことですが、大学は志を達成するための通過点。志が一生学び続けるためのエネルギー源になっていることが嬉しいです」と語った。

足立学園中学校・高等学校 https://www.adachigakuen-jh.ed.jp/


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