新校長就任
「論語」を教材に道徳授業に力
理中に訪れるのは今回で4回目。四季折々の季節が堪能でき、すがすがしい気持ちになる。岡山理科大学附属中学校(以下:理中)は、東京ディズニーランドの2倍近くある半田山の山頂にある。同敷地内には岡山理科大学や附属高校が隣接して立っている。
SSHに指定され、喜びにわいている理中の位田隆久新校長を尋ねると、道徳の授業中だという。就任早々ではあるが、一時も早く生徒と接したいという校長の気持ちがうかがえる。
中一生の授業を終えた校長は少し高揚した面持ちで、校長室に戻って来られた。
「楽しかったですね。さっそく、子どもたちに偉人伝を5冊は読みなさいと伝えました」と目を細める。これには続きがあり、将来自分にとって役立つ本だと思えば、担任のサイン、校長のサイン、最後は父母にもサインをしてもらい一生の宝にするというものだ。
理中では一昨年より、豊かな人間性の育成を目指し、建学の理念「道・自らの道を切りひらく」に基づいた独自の教育を行ってきた。その一環として岡山理科大出身で兵庫の報徳学園中高の元校長、位田氏に論語教育の講義をお願いしてきた。そして、今年度、位田氏を校長に招聘、新体制でのスタートとなった。
「道というのは創立者の願い、子どもたちには先人の道をしっかりと学んでほしい。論語などを通して人間学を伝えていくのが私の役目です」
テキストは論語だが、ポケット版にした論語が生徒全員に配布されており、通学時の車内などで手にとって読むことができる。
スケールメリットをいかした授業
オープンスクール理科実験教室に1200名
理中の強みは、加計学園全体としてのスケールメリットを生かした中高大連携の教育だ。中でも理科教育は充実している。頻繁に取り入れている理科実験では担当教員にチューター3人(大学生、大学院生)が助手として加わっている。そのため一人ひとりが安全性を確保した上で自ら取り組めることができるのだ。大学の指導による屋久島での自然体験教室、理科大教授による「先端科学の特別講義」など、生徒は知的好奇心に刺激を受け、さらに学習へのモチベーションを高めていく。
これらの取り組みも評価されて文部科学省より、平成24年度スーパーサイエンスハイスクール(SSH)に見事、指定された。全国で73校。岡山では6校目となる。採択に当たっての文科省への申請内容はこうだ。
“自然体験・ものづくりを基盤としながらそれぞれの個性に応じた、大学附属高校として教育課程の確立、新しい教育評価法の開発を通して科学教育の新しい切り口や活用法を研究する。”
「この指定により、昨年実施した芸術系科目のイマージョン教育(英語で指導)を今年度は理科実験でもすることにしました。中3のカリキュラムで準備中ですがわくわくしますね」
一方、同校が実施するオープンスクール・理科実験教室が評判を呼んでいる。毎年1200名以上が参加、開催の告知をするとすぐに埋まってしまうという人気の教室だ。リピータが多いため、一昨年よりひとり1回のみの参加にしたほどだ。
「昨年は、『レスキューロボットと二足歩行ロボットを動かしてみよう』や『電子オルゴールを作ってみよう』等、小中学校の教科書にはない、より専門的なものを小学生ようにやさしくして、開催しました」
今年のオープンスクールは7月28日(土)・8月24日(金)・25日(土)・9月1日(土)だ。興味ある方は参加してみてはいかがだろう。 |
スーパー選抜クラスと選抜クラスがスタート
中1生に英検1級の生徒が
昨年、現役で東大に合格した川端くんに引き継いで、さらに生徒一人ひとりの夢の実現をはかるために、昨年からスーパー選抜(以下:SS・定員20名)クラスと選抜クラス(定員60名)を新設した。SSは東大・京大・国立大医学部を目標に中学週36時間、高校週39時間の授業のほか、大学教授による発展数学やユニークな理科の授業がある。選抜クラスは国立大、私立大を目標にSSと同じ授業時間に自習教室や個別指導により授業内容の理解を深める。
今年SSに入学した生徒には、他校の特進を合格した者や英検1級保持者もいる。また、東大(文一)狙いの生徒もいるとのこと。“恐るべし理中”というところか。
「今後、この子どもたちをいかに伸ばしていくか、教師陣も責任重大です」
そのために、充実したサポートシステムが組まれている。
1、2年次の放課後18時までのチューターによる自習教室。6年次対象にトワイライトセミナーは放課後19時まで補習をおこなっている。
さらに校長はいう。
「生徒への指導はすべて本校の先生方です。チームを組んでの教科指導や、個々にスキルアップのための研修を受けています。国語のある先生は語彙検定というのが新しくスタートしたと聞くや、すぐに資格を取ったほどです」
森の中にある学校として、人的にも環境的にも恵まれたフィールドで新たな展開が期待できそうだ。
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