JR「大崎駅」から徒歩8分。車の行きかう山手通りからそれて緩やかな坂道を上っていくと、喧騒が潮を引くように消え、静かな住宅街が広がる。立正中学校・高等学校は交通アクセスのよい都心に位置しながら、静かで落ち着いた環境にある。また、隣接する立正大学のキャンパスと一体となり、アカデミックな雰囲気を醸し出している。
豊かなコミュニケーション環境を創出
「環境とコミュニケーションを意識した設計です」。中原校長は新校舎のコンセプトを語る。
新校舎は6階建て。ブラウンを基調としたシンプルでモダンな外観だ。
温暖化に配慮し、外壁には「壁面緑化」が施されている。これは1年を通して60種類の花々が咲くように配置され、敷地内の桜並木や周辺の住宅地と調和し、潤いのある景観を創り出す。
校舎内部には木材がふんだんに使われ、その温かみのある木質感が柔らかな空間を演出している。また教室内部に自然の風や光を多く取り入れる設計が、明るく心地よい学習環境と環境負荷低減を実現した。
生徒の安全面にも配慮し、窓には強化ガラスおよび飛散防止フィルムを使用。家具や設備機器などの落下転倒防止にも万全の対策を施している。また登校時や教室移動時の混雑を緩和するために、廊下や階段には広いスペースを確保した。
各フロアにはテーブルと椅子を配置したラウンジを設け、生徒同士、先生と生徒との交流の場としている。
さらに廊下のところどころに、出窓のスペースを利用した「くつろぎコーナー」も設置。出窓の窪みに沿って取り付けられたベンチに、半透明のプロフィットガラスを通して柔らかな陽射しが降り注ぐ。
「明るく開放的な雰囲気が、コミュニケーションを豊かなものにしてくれるでしょう」。
さらに中原校長は、ラウンジのテーブルなどを学内で育てた花で飾り、生徒の心を和ませたいと考えている。
毎日を快適に過ごせる校舎は、生徒たちの学園生活をより充実させ、学習への集中力も高めていく。
内部進学生も高校進学適性テスト実施
今年4月に就任した中原校長は、同校で32年間、体育の教師として生徒たちを指導してきた。
「従来と同様、きめ細かな指導で進学実績を高めるとともに、心豊かな人間を育てていきたい」と抱負を語る。
中高一貫教育を基本とする同校では、6年間を三つのステージに分け、それぞれの段階に応じた教育指導を展開している。
中学1・2年次の目標は「基礎学力の徹底養成」。週6日制により、公立中学の1.7倍以上の授業時間数を確保。特に主要5教科の指導に力を入れている。なかでも英語と数学は習熟度別クラス編成で徹底理解を図る。
昨年までは2年次より「特進」と「進学」にクラスが分かれていたが、今年度からは3年次に「特進」を1クラス設定する。
その理由を中原校長は「入学後の2年間で、立正生としての基本的生活習慣をしっかり身に付けさせるため」と話す。
3・4年次は「基礎学力の充実と強化」。一貫教育で起こりがちな中だるみを避けるため、2年次の2月と3年次の7月の2回、高校進学適性テストを実施する。その準備として、3ヵ月前から毎日放課後に「中学課程修了補習」を設定。3年生全員が参加する。
そのほかにも同校では、全学年を通じて生徒一人ひとりの学習到達レベルに応じた補習・講習が充実。希望者は早朝や放課後、長期休暇中の補習などを受講できる。2年生と5年生の希望者に対しては、3月に3泊4日の勉強合宿も用意されている。1日14ないし15時間も勉強漬けというハードスケジュールで新学期からの成績アップを目指す。
なお、外部中学から高校に入学する生徒が毎年25名ほどいるため、4年次では内部進学生とは別に1クラスを設定している。
5年次になると、外部入学生も内部進学生と合流し、「特進」の文系2クラス(理系希望者含む)、「進学」の文系3クラスと理系1クラスを編成。大学入試に向けた指導が本格的にスタートする。
「特進」は国公立や難関私大を目指す。「進学」は主に指定校推薦を利用して東京理科大や成蹊・明治などに進学。また全卒業生のおよそ20%が立正大学に進む。
昨年まで同校は立正大学の併設校だったが、今年度より正式に付属校として位置づけられた。これを機に新たな高大連携が模索されている。
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バランスのとれた人間教育
建学の精神は、日蓮上人の説いた「行学二道」。「行」は教えを行動に移すこと。「学」は法華経の教えを意味する。同校では、自ら意欲的に学び、さらに学んだことを実際に行動で示せる生徒の育成を目指し、心の教育にも力を入れている。
そのスタートは入学前の新入生オリエンテーション合宿。4月1日から3日まで、身延山久遠寺で実施され、中学・高校の新入生が参加する。宿坊に泊まり、朝の勤行などを体験しながら学校生活の基本やルールを学ぶ。またこの合宿は、生徒同士が交流を深め、友だちをつくる最初の機会でもある。
そのほかにも花祭りや御会式参拝などの宗教的行事。さらに週に1時間の「宗教」の時間を通じ、仏教精神に基づく情操教育が行われる。
中原校長は「人の心の痛みがわかる人間になって欲しい」と願う。
そのため宗教的行事以外の学校行事も数多い。スポーツにも力を入れている。4年次には、2泊3日ないし3泊4日の日程で体育の集中授業が実施される。生徒はスキー・ゴルフ・ウィンドサーフィンの中からひとつを選び、校外合宿に参加する。
生徒会活動も活発だ。体育祭や学園祭は生徒たちの手で自主運営される。友だちと協力し合い、時には意見を戦わせながら人間的にも成長を遂げていく。
立正中学校・高等学校では豊かな人格形成に必要な「知・徳・体」のバランスのとれた教育が実践されている。
中原校長は最後に「教え子の子どもや兄弟が多く入学してくれています。安心して通っていただける学校です」と自信を語った。
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