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中学・高校受験:学びネット

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京北学園白山高等学校

 
  教えるから伸ばす教育へ
総合的学習の成功例「プロジェクトベース学習」が脚光
 
生徒自ら興味ある分野の研究企画を立て、遂行の過程で社会とのつながりを見出す。そして研究の成果を社会へ還元できた時、自信を持って夢や目標を語るようになっていた――それが白山高等学校の生徒たちだ。真の総合的学習ともいうべき「プロジェクトベース学習」を日本で初めて導入して以来、大学進学率を飛躍的に伸ばし、生徒数を倍増させ、全国から見学者が訪れるようになった。商業科単科の男子校の挑戦が脚光を浴びている。

校 長: 川合 正
住 所: 〒112-8607 東京都文京区白山5-28-25
電 話: 03-3941-3157
交 通: 都営三田線「白山」駅 徒歩3分 南北線「本駒込」駅 徒歩5分 都バス 東洋大学前・京北学園前 徒歩1分 向丘2丁目 徒歩5分
学生数: 319名 (2005.9.1現在)
ホームページ: http://www.keihoku.ac.jp/haku/haku-top.htm

 

逆転の教育が生んだ 自信と意欲

自主学習の一方法であるプロジェクトベース学習を実践して4年目の同校に、この夏、新たにうれしいニュースが舞い込んだ。毎日新聞社主催の「新世紀の挑戦」〜環境保護への提言〜で、3年生の當間達哉さんが賞を受賞、ドイツへ特派員として取材旅行に参加することになったのだ。21世紀の環境問題をテーマとする今回の募集に、「私が考える21世紀の環境 今、できる精一杯のこと」という提言で全国で8人の受賞者の1人に選ばれた。當間君は1年次のプロジェクトベース学習で、自ら飼育するクサガメの生態や飼育方法について解説、体験を元にまとめた「クサガメを100匹に増やそう」というプレゼンテーションをした。それ以後も調査活動を続けていた。同校ではこうした自主学習の成果、研究をまとめた論文やプレゼンテーションで様々な賞を受賞している。プロジェクトベース学習で興味あるテーマを深く追求する素地が築かれているためだ。

好きなことや、身近な問題からテーマと目的を定め、書物やインターネットで調べることはもちろん、社会へ飛び出し取材を行う。そんな一連のプロセスを通して問題解決能力をつけ、達成感を味わい、さらに知る欲求を満たそうと意欲的にさせるのがプロジェクトベース学習の“効用”といえる。

この学習法は米国のチャータースクール*であるミネソタ・ニューカントリー・スクールで取り組まれていたプログラムを千葉大学の上杉賢士教授が日本の高等学校用にアレンジしたもので、日本では同校の導入が初めて。

学習は1年生を対象に、自由に研究テーマを選ぶところから始まる。完成までに要する時間的計画を立て、企画書を作成するが、この際、一つのテーマを完成させるのに目安となるのは10時間。それ以上になると、プロジェクトの進行計画を立てにくいためだ。10時間では完成不可能な壮大なテーマを選んだ生徒には、プロジェクトを細分化、数回に分けて完成に導くようアドバイスをする。実際の調査で、パソコンを使うことと実在の人物に取材することを義務付けているのは、情報処理技術を身につけさせ、生徒の興味が社会とつながっていることを見出させるためだ。

企画書作成から調査実施、レポート作成やプレゼンテーションといった一連の流れの中で、生徒たちは国語科、社会科、商業科、情報処理の各教科を総合的に網羅した能力を身につけていく。

プロジェクトの内容は様々で、教員にとっても“専門外”のテーマが多い。そのため学年を超えたサポート体制をとり、校長、教頭もプロジェクトチームを受け持つ。生徒の挑戦をできる限り支えたいという教員の思いが、学校改革へと突き動かした。同校の杉原米和教頭は「一方的に教える教育から、生徒自ら伸びていく教育への転換です。教員は素人でいいのです。優秀なアドバイザーであれば」とプロジェクトベース学習を語る。それまで学習が苦手と思い込んでいた生徒も、好きなテーマに取り組むと思いもよらない力をつけていくという。

*チャータースクール:全米で驚異的な広がりを見せる、新しいタイプの公立学校。保護者、教師、地域の団体などが独自の教育計画を教育委員会に提出し、認められたことにより、州政府との契約のもと、公費によって学校を運営できる仕組み。

社会から得たものを 社会へ返すプレゼン

プロジェクトベース学習が育む3つの能力とは(1)自ら学びを創り出す自己学習能力(2)他者とのコミュニケーション能力(3)自分の考えを適切に表現するプレゼンテーション能力だという。同校ではこれらの能力を存分に発揮できる舞台づくりを進めてきた。研究結果を全チームがクラスの仲間にプレゼンテーションし、そのなかから選ばれた数組は、毎年、全校生徒や保護者、大学の先生、一般来校者、それに報道陣までが見守るなかでプレゼンテーションを行う。社会から学んだことを社会へ還元する時である。杉原教頭は「学習では自分が納得し満足するだけでなく、周りの人にどう役立つかを考えさせるため、常に学習に社会性を意識させる」と語る。

同校ではプロジェクトベース学習の導入に先駆け、2001年3月に日経新聞社主催の第1回・株式学習コンテスト・ストックリーグへ参加したが、この時、同校のドット・ビジネス部が大学生のチームを抑え、最優秀賞を受賞した。このことが評価され金融庁主催の「金融経済教育を考えるシンポジウム」に招待され、竹中平蔵大臣も参加する中、堂々と学習の成果をプレゼンテーションした。その後、第5回のストックリーグでも「『第三の波』的株式投資」で入選を果たすなど、生徒の意欲を高める新しい取り組みの効果は着実に現れている。

1年次にプロジェクトベース学習に取り組んだ生徒は、2〜3年次には得意分野をさらに深く研究する「課題研究」に取り組んでいく。この過程で作文、小論文の書き方を徹底して学習し、表現力に磨きをかける。2年生の鈴木邦弘さんは将来の夢を「僕は、豆腐屋になる」という作文に書き、東京都教育庁・東京都産業教育振興会主催作文コンクールに入選。祖父との豆腐づくりの体験を職業観や環境面への配慮、周囲の大人の考え方などを交え生き生きと表現している。プロジェクトベース学習が育む3つの能力が実を結んでいること感じさせる。

大学進学率71%、増える第一志望

これらの学習を通して白山の生徒はどう変わってきたか。一連の学習を導入する以前、4年制大学への進学率は15〜30%だったが、ここ3年、つまりプロジェクトベース学習導入の翌年から進学率は飛躍的に伸び、昨年度は71%に上った。杉原教頭は「自信を得たことがその後の目標設定を明確にさせた」と分析する。そう語る杉原教頭自身、生徒の成長を自身のことのように喜ぶ。真の総合学習は教員をも生き生きさせている。各大学側も同校の取り組みを評価しはじめ、指定校推薦枠の拡大にもつながっている。また、東京私立中学高等学校協会は同校を総合学習の研究指定校とするなど、各方面からの注目を集めている。

一昨年は65名だった入学者が、今年は133名に増えた。「白山を第一志望に」と単願受験する生徒も増えてきている。それにつれ、プロジェクトベース学習の発表の水準も徐々に高まっており、今後、ますます期待される。
単科商業科の男子校として、白山高等学校はこれからも新しい教育への挑戦を続け、資格取得と充実したキャリアガイダンスに力を注いでいく。 

 
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