プログラミングで受験?!
「STEM入試」に大注目
「楽しかった!」。これは駒込中学校
の新入試の体験会での小学生の感想だ。
パソコンで小学生でも簡単に扱えるビ
ジュアルプログラミング言語
「Scratch」を使い、自己紹介の作品を
制作した子どもたち。どれもカラフル
な色使いで、素晴らしい作品が生まれ
た。
駒込中学で来春新設される
「STEM入試」では、このように受
験生はパソコンを使って「プログラミ
ング」を行う。「プログラミングは近
い将来に専門家だけのものではなく、
万人が使うべきものになる」という考
えのもと、いち早く入試に導入した。
この他、出題されるのは四則計算
(同校の算数の過去問大問1に相当)
と、アルゴリズムの問題だ。アルゴリ
ズムの問題では、例えば「1回の作業
で隣にしか動かせない4枚の数字カー
ドを数の小さい順に並べる手順」を分
かりやすく伝える力(論理力)を問う。
試験時間は80分だが、最大1時間50
分まで延長可能。受験生が納得いくま
でプログラミングをやりきることがで
きる。
駒込中学校のSTEM入試担当者は
「ものづくりやロボットプログラミン
グが好き!という小学生にしっかりと
向き合った入試です」と話す。同校で
は昨年から埼玉大学と連携したSTE
M教育がスタート。他にも人型ロボッ
トのペッパーを動かすプログラミング
授業なども行われており、入学後も継
続的に学ぶことができる。
最も気になるのは採点のポイントだ
が、「基本的な計算力と同時に、アル
ゴリズム問題ではわかりやすく説明す
る力、プログラミングではアイデアを
形にする力など、従来の入試では測り
切れなかった力を評価したい」と話し
ている。
調べ学習好きな子集まれ!
「自己表現入試」
生徒たちに分かりやすく、
彼岸会について話をする
河合 孝允 校長
もう一つ新設される「自己表現入
試」は調べ学習が好きな子、文を書く
のが好きな子、社会科が得意な子が大
いに実力を発揮できる入試だ。
入試は資料を元にアイデアを考える
「クリエイティブ型」と、異なる意見
を持つ相手に自分の考えを伝える「デ
ィベート型」の2種類。受験当日どち
らか一方、取り組みやすいものを選ぶ。
クリエイティブ型では、ある企業の
HPを見て「自分がその企業に勤める
としたら、何ができるか」を考えて、
プレゼンテーション資料を作成する。
商品開発でもサービス改善でもテーマ
は自由。
もう一方の「ディベート型」は、あ
るテーマに対して「賛成派」「反対派」
の資料を読み、どちらか一方に自分の
意見を決める。そして、自分と異なる
意見を持つ人に向けてプレゼンテーシ
ョン資料を作成するというもの。
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2種類とも、受験生は方眼紙を使っ
て、文章や図やグラフなどを自由に描
く、とてもユニークな解答方法だ。ま
たこの自己表現入試では、受験生が自
由に調べられるよう図書館全てを開放
し、iPadやノートパソコンを借り
て検索することもできる。試験時間は
2時間だが、最大2時間50分まで延長
でき、途中で休憩してもOK。休憩中
リフレッシュできるよう、お茶とお菓
子も用意する予定だ。しっかりと最後
まで考える「思考体力」や、どれくら
い休憩すればよいのかという「判断
力」も評価の対象となる。
河合孝允校長は「入試改革を実施す
るのは、『未来型の学び』へと指導方
法をパラダイムシフトしていく必要が
あると考えたからです。子どもの成長
にとって一番大切なものは、掛け値な
しに打ち込める『大好きな自分目標の
発見』です。しかし、それは日本の子
どもにとって一番不得意で欠けている
能力でもあります。今こそ本校では、
多様な個性を認める入試に舵を切るべ
きだと考えました」と語る。
同校ではすでに多彩な才能を伸ばし、
世界に羽ばたいている生徒がいる。サ
ッカー部の高校3年生は、スペインリ
ーグのトライアウトを受け見事合格。
ユースチームと正式契約を結び、1月
からスペインでプレーすることが決ま
っている。国際教養コースでスペイン
語に近いフランス語の授業を受けてい
たことも現地で道を
切り開く手助けとな
った。
2つの新入試の他
にも、同校では多様
な入試方法を用意し
ている。2科・4科
に加え、小石川など
の最難関都立中高一
貫校を想定した適性
検査型入試(T・U・V)を増設。英検
の資格も生かせる英語入試(3科目)
も行う。
「新たな価値観を生み出せる若者で
なければ、未来を創造することはでき
ません。その価値観を自分のライフデ
ザイン能力に結びつけて行動できる。
そうした若者たちの受け皿になれるよ
う、学校改革を着実に成し遂げていき
たいと考えています」と河合校長は話
している。
人間性を磨く宗教行事
「彼岸会」
このように先進的な取り組みをして
いる同校。高校では推薦入試の受験倍
率が上がり、偏差値も上がっている。
この人気の理由を河合校長は「一言で
言えば、『時代が動いた』からだと受
け止めています。新時代に対応する先
取り改革に、意識の高い保護者が期待
したのだと思います」と語る。
一方で、人間性を磨く宗教行事にも
力を入れている。9月1
2日に行われた
中学彼岸会もその一つ。彼岸会とは日
本仏教独特の仏事で、先祖供養のため
に行う法要だ。代表生徒による献灯・
献花・献香に続き、座禅で瞑想する
「坐禅止観」で心を整えてから、生徒
たちは河合校長から彼岸や三途の川、
賽の河原の意味について教えてもらっ
た。この後には、生徒有志による学校
近隣のゴミを拾う奉仕活動も行われた。
AI時代だからこそ、心の教育をお
ろそかにしない。「一隅を照らす」と
いう最澄の言葉を建学の精神に掲げ、
330年以上もの歴史を持つ駒込中高。
伝統校が挑戦し続ける学校改革へ、ま
すます注目が集まりそうだ。
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