味噌作りから広がる学び
地域に開かれた学校に
PGTプログラムが始まってから3年目に入った今年。富谷利光校長は「いろいろな活動を通して、生徒の成長がはっきり見えるようになってきました」と語る。
昨年は和食の基本とも言える「大豆」と「発酵」に着目。和食の科学プロジェクトとして、中1生が「味噌作り」にチャレンジした。作ったのは米味噌・麦味噌・豆味噌・玄米味噌の4種類。6月に仕込みをして、完成は10月。できあがった味噌は各家庭に配られ、できたての味噌を味わった。家庭からは「おいしい」「よく味噌汁を飲むようになった」という嬉しい声も多く寄せられた。
生徒は味噌作りと並行して、グループに分かれて、味噌についてさまざまな研究も行った。あるグループは味噌の歴史について調べ、別のグループは味噌が健康に良いとする研究結果を検証。中には糀作りから挑戦したグループもあったが、カビが生えてしまい失敗してしまった。しかし、「生徒から糀作りをやりたいと言ってくれたことが嬉しかった」と中1担任の鈴木仁宏先生はチャレンジ精神を讃える。
研究をまとめたポスター作りでは、写真はすべて生徒が撮影。撮影のためにもう1樽味噌を仕込むなどこだわりも見せた。また、わかりやすくするため、日本地図を使ったり、自分たちで試食をして、味覚を段階的に評価したグラフを入れたりと、創意工夫にあふれたポスターが完成した。
鈴木先生は「生徒同士で助け合ったりする様子も見られ、人間関係の築き方においても大きな成長を感じました」と話す。
この研究結果は、文化発表会(光風祭)でポスターセッションとして発表された。見学者からいろいろな質問が出る中、一所懸命答えていた生徒の姿に富谷校長は「対話力やプレゼンテーション能力が随分鍛えられたと思います」と語る。
また、これらのポスターは11月の6日間、京成勝田台駅地下コンコースの「勝田台ステーションギャラリー」での作品展で、2年生の「イギリス研究」と一緒に展示された。会場には地域の方々が延べ400人訪れた。近隣の公民館で味噌作りをしている人からは「協力したい」という申し出ももらった。
「味噌を通して、地域とのつながりがとても強くなりました。地域に開かれた学校づくりができて本当に嬉しいですね」と富谷校長はPGTプログラムに手応えを感じている。
鉄は熱いうちに打て
中2のイギリス英語研修
同校のもう1つの強みは「英語教育」だ。イギリス人教員による少人数制英会話の授業が週2回ある他、3学年合同で級別に行う英検対策授業も実施。毎学期に一度、系列校3校合同で英語スピーチコンテストも開催している。
中でも大きく生徒を成長させるのが、中2のイギリス英語研修だ。2週間のうち1週間はホストファミリー宅にホームステイ。英語圏での生きた英語に触れる。
「まさに『鉄は熱いうちに打て』。早い時期に海外経験をすることが、その後の学習意欲にも大きな影響を与えます」と富谷校長。
今回は研修に先駆け、1年生の3学期に朝のホームルームで日常会話のレッスンを実施した。生徒たちはイギリス人教員2人の会話を聞き、ネイティブの会話のスピード感とリズムをつかんだ。
「出発に当たり、不安そうな生徒はいませんでした。この2年生はPGTプログラムの2期生。失敗しても乗り越えていこうという前向きな気持ちが育っています」
来春からは英語好きの生徒に広く門戸を開こうと、専願入試に英語を導入する。英・数・国の3教科から2教科を選択できるようにするもので、出題内容は小学校の外国語活動の範囲。日常生活で使う英語を問い、小学校英語をしっかりやってきた生徒なら充分挑戦できる入試となる。
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「例えば算数は少し苦手だけれども、英語と国語で中学受験をしたいというような小学生に道を用意したいと考えています」と富谷校長。
昨年9月には英語への興味・関心、表現力向上を目的に第1回小学生英語暗唱コンテストを開催した。今年度からは文化発表会の中で規模を大きくして実施する予定である。
文章検定で記述力を高める
教科指導も手厚く
大学入試改革への対応も着々と進めている。年々論理的な記述力が問われるようになってきていることから「文章検(文章読解・作成能力検定)」を年1回、2学期に全員受験することを始める
富谷校長は「100字前後の文章を論理的にまとめる力を中学生のうちにつけさせたいと考えています。これは英検対策にもつながりますね。上位級の記述問題においては、社会問題について論理立てて考えをまとめられる力も求められています」と取り組む意義を語る。
今年の4月からは放課後の学習相談をスタート。5教科の教師がイングリッシュ・スタディ・センターをはじめとする教室に常駐し、生徒からの質問を受け付ける。また、昨年から始まった難関大学への合格力を培う特別補講「A(Academic)スキルレッスン」も引き続き実施していく予定だ。
PGTプログラムで豊かな「生きる力」を育みながら、着実に学力を向上させる。秀明八千代の一人ひとりに手厚い教育が、生徒を温かく導いている。
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