自習支援プログラム「Sラボ」
進路を切り拓く主体性を養う
早慶上理ICU93名、国公立大学57名、うち東大に現役合格2名。華々しい進学実績は学校をアピールする材料だが、青稜中学校・高等学校はあくまでクールだ。
「第一志望なら東大でもどこでも合格の価値はみな同じ。それが『青稜スタイル』と、生徒もよく理解しています」と伊東充募集広報部部長。
東大に合格した一人は、塾に通わず学校のプログラムのみで、推薦入試を突破したもう一人も、教員が設定したディスカッションを実践する場で、それぞれ力を高めた。東京学芸大学に合格した生徒は「練習着姿しか印象にない」と伊東先生が笑うほど、中・高時代をバレーボール部活動に打ち込んだ。伊東先生は愛情を込めて「ウチの子らしい生徒たち」と呼ぶ。曰く「学校のいろいろなプログラムや経験の場を生かして、徐々に実力を高め、気負わず挑戦する」生徒たちだ。
プログラムの成果を尋ねると「特別なことは何もしていません」とあっさり返される。「学校生活のどの場面でも、教員と生徒が自然体で相談できる関係が構築できていて、多様なロールモデル=先輩の事例も数多く見ている。生徒が『主体的に』行動して勝ち獲った結果です」。
放課後講習に代わり、今年1月から導入した自習支援システム「Sラボ」は、進路選択の基盤となる学力と自己管理力、まさに「主体性」を中学生から養成しようという試みだ。まずは宿題を学校内で完結させる学習習慣を確立し、英検や定期試験対策など生徒自身がテーマを決め、学習予定を実行することを目指す。「中学生が自発的に学習するキッカケに」と導入して半年、130席あるSラボは20時閉室までほぼ満席だ。青稜にまた強力な「プログラム」が加わった。
英語研修プログラムが拡大
世界や異文化を「感じる」
「Sラボは続けてきたことをより具体化したもの。真に新しい取り組みは英語研修プログラム。今年は初めて海外留学生を受け入れます」と伊東先生の声も弾む。
オーストラリア提携校のほか、カナダに新たな3校と姉妹校提携を結び、短期留学(2ヵ月)に加えて中期留学(5ヵ月)もスタート。イギリス英語研修(16日間)・セブ島英語研修(3週間)の報告会・説明会には参加を希望する高校生が押し寄せるという。
中学生は校内で全員参加のEnglish Fun Program(2日間)、中1生(希望者)には3日間のEnglish Summer Campを設定。国際教育の狙いは「いろんな人種、生活習慣、考え方が生徒たちの前に提示されたときに臆さない、同時にブレない自分を持つこと。また異文化を受け入れられる柔軟性を養ってほしい」と伊東先生。セブ島研修では、マンツーマン授業6時間・グループレッスン2時間にわたる英会話の特訓を行うが、現地日本企業への訪問や貧しい子どもを支援するボランティア団体との交流などアクティビティも充実している。
「『学ぶ』より『感じて』ほしい。興味がある子には可能性がより広がるし、感じなくても後々きっと思い出す。自ら動く、自分で考えるキッカケや場所を提供するのが学校ですから」
一昨年から帰国生入試を中学・高校と順次開設、今年はシンガポール・バンコクの海外会場で帰国生入試(11月)を行う。受験科目は国内と同じく国・算・面接。外国語の力は問わない。
「今春入学した7名の帰国生もすっかり溶け込んでいます。自然と国際色豊かな環境になっていけばいいと思っています。海外入試でも、より多くの受験生家族の選択肢や意識に『青稜』が入ってくれたら嬉しいですね」
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フレキシブルで自由度が高い
青稜独自の教育フィールド
昨年度の中学入試で2月1日・2日の2日間4回だけに入試を絞る、と大きな決断をした。Web出願も開設したが「意外と試験前夜の駆け込み出願は少なく、試験日程に最初から青稜を組み込んだ方々に受験していただけたと思います」と伊東先生。それは我々にとって価値あること、と確かな手応えを得たようだ。高校受験のほうは一般・併願併せて1,051名が受験。「早慶レベルや学区トップ校の併願校として、意識の高い生徒が選んでくれるようになりました。入学した生徒たちは本当に優秀です」と顔をほころばせる。
「進化しない種は滅びる」と生物の教員らしい表現で、伊東先生は青稜という学校の成長過程をこう見ている。
「『面倒見がいい』『結果が出ます』と強調する段階から、その子なりの成長を見守りながら次のステージに送り出す『キッカケを与える、土台となる学力をつける場所』にシフトしてきました。でも、それって『昔ながらの学校』ですよね(笑)」
今の保護者は「これをやらなきゃいけない」と不安を煽られ続けている世代。学校説明会では「青稜には何の特徴もありません」とスタートし、「でもよく見ていただければ、多様なプログラム、選択肢があり、子どもは自分に合うものを選択できる」と伝える。それは教員の多様性にも現れている。
平野敏政校長は教員にも「まずは先生たちが各々に合うことをやりなさい。いろんな個性が開花したほうが面白いですから。ただ、いろんな方法や技術があるので、アンテナを張り、意識は高めましょう。教員が居心地が良くて、自由な発想を持たなければ、子どもたちも自由に発想できない」と伝えているという。
大人も子どもも共に「種まき」をして、自分だけの青い芽を勢いよく伸ばし続ける。それが青稜という学びのフィールドだ。
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